戦時下新聞通して現代見直す 『京都戦時新聞』出版シンポ
2026.07.01
登壇する4氏(=文学部第3講義室)
『京都戦時新聞』は、太平洋戦争開戦から敗戦後までの4年弱の『京都新聞』を、現代仮名や新字体、現代風レイアウトによって再構成したもの。戦時下の情勢や銃後の世相をリアルに伝えることと、市民を戦争遂行に扇動した京都新聞の戦争責任に向き合うことが狙いだという。今回出版された『京都戦時新聞』は2024年12月から連載された企画紙面、オンライン限定で配信されたもの、同企画に関連した特集記事をまとめたもので、その紙面は60面に及ぶ。
シンポジウムで西山教授は、「戦時下の京都新聞は対戦国の強大さをそれなりに指摘している」とした。従来、戦時下のメディアは対戦国を過小評価して国民の戦意を維持し、その結果、国民は勝利を確信していたとされてきた。一方で京都新聞の場合、対戦国の戦力や戦局の悪化を「伝えていないわけではない」といい、西山教授は「地方紙だからこそ国家からの監視が緩かったのかもしれない」と指摘した。
いしい氏は『京都戦時新聞』の連載を家族で愛読していたと語ったうえで、戦時下の厳しい生活を工夫してしつらえる市民の記事に言及。「市民のしたたかさは今も変わらない京都人らしさ」とし、本企画を「戦争が暮らしに直結していることが味わえる」と評価した。
企画チームで最年少だという京都新聞の上田真里奈記者は、戦時下の記事を読み込む作業の困難さと、戦時下に4歳で取材を受けた男性への再取材を紹介。男性は取材の数年前から認知症を発症し、取材後に亡くなってしまったといい、「80年という時間の重み」を強調した。
質疑応答で「新聞記事のどのような点に注意することで、戦争への危機を察知できるか」という質問に対して、京都新聞の辻󠄀智也記者は「安全や平和の名の下でなされる情報の統制や自由の制限に注意したい」とした。そのうえで、「ヘイトスピーチのような憎しみが連鎖する記事が増えたとき、社会の方向性に危機感を抱くことが大切だ」と述べた。これに対し西山教授も賛同し、「時代範囲を拡大して戦前・戦後の新聞を見ることで、戦争を挟んだ価値観の変化を捉えられるだろう」と展望を語った。(燕)
【本紙6月16日号では『京都戦時新聞』の書評を掲載しております。あわせてご覧ください】
