文化

重永瞬さん 『新しい日本地理』刊行イベント 地域区分再考の舞台裏語る

2026.07.01

重永瞬さん 『新しい日本地理』刊行イベント 地域区分再考の舞台裏語る

『新しい日本地理』の内容について語る重永さん

6月22日、新書『新しい日本地理』の刊行を記念したイベントが京大生協ショップルネにて開催され、著者で文学研究科地理学専修の重永瞬さん(博士後期3回)が登壇した。『Y字路はなぜ生まれるのか?』などに続き、3冊目の著作となる『新しい日本地理』では、統計や先行研究をベースに、「東日本」「中部地方」など既存の地域区分を解体したうえで、「南海日本」「中央日本」といった新たな地域区分を提示し、日本各地の意外なつながりを浮かび上がらせている。イベントでは自著の解題とともに、執筆時の苦労話を語った。

イベントの前半では、重永さんが本書の執筆背景について語った。地誌を書く際には「地域区分をどう設定するか」が最も重要であるにもかかわらず、重永さんは従来の日本地誌の本が「過去の地域区分を当たり前に採用していた」と語る。そのため本書では、「東日本─西日本」といった二項対立や、既存の地方ブロックの解体に努めたという。また本書では、地域区分ごとの地域性が生み出された背景として、気候以外の側面にも注目する。例えば書籍では、日本海側が「裏日本」という開発の遅れた地域とのレッテルを貼られるようになった理由を、雪などの気象条件だけでなく、交通・産業体系の再編からも説明している。気候によって地域性を説明する「環境決定論」が差別的な言説を生み出してきた経緯から、地理学界ではタブー視されていることにも触れ、「気候だけが地域区分をつくったわけではないと強調したかった」と語った。

一方で、執筆時に苦労したこととして、重永さんは分析に使用する地区の単位を挙げた。最初の書籍『統計から読み解く色分け日本地図』では市区町村単位で地図を作成した一方、本書では書籍の大きさの都合上、おおむね都道府県を分析時の最小単位地区としている。しかしこの場合、例えば小笠原諸島も人口密集地である東京都心の地域性にしたがって塗りつぶされてしまい、ミクロな地域性が隠れてしまう。また、書籍中ではいくつかの部分で既存の地域区分を集計単位として使用しており、「新しく提示した地域区分で分析を行うべきだった」と執筆当時の葛藤を振り返った。

質疑応答で「もっと掘り下げてみたい地域はどこか」と問われた重永さんは、千葉県から福岡県にかけての「太平洋ベルト」を挙げ、「太平洋に面しているのは東側だけ。『東海道ベルト』と『瀬戸内ベルト』に分けて見ると、新しい発見があるかもしれない」と展望を語った。また「地図が持つ力とは」という質問に対しては、複数の地域を面的に表せるという特徴を挙げ、「行ったことのない場所でも表せてしまうために、間違って地域を理解してしまうこともある。気を付けながら向き合っていきたい」と語った。

ラブホテルの地理学、街歩きガイド、Y字路の調査など、多彩な活動を続けてきた重永さんだが、ひとまず今後は博士論文の執筆に専念するという。会場には30名ほどが集まり、気鋭の地理学徒の語りに聞き入っていた。(晴)

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