〈Topic ’26〉澄みわたる京の夜明け 将軍塚大舞台にて
2026.06.16
夜明け間もない幻想的な京都の街
まさか、六月病か。数日前から梅雨前線と共に、その影はひっそりと忍び寄っていた。新生活への疲れか、何事にもやる気が湧かない状態だった。そういう時には、心が洗われるような純粋で美しい景色をなんとなく欲するものだ。
あわや、雨天か。前日の夜の天気予報では危ぶまれたが、実際には爽やかな梅雨晴れ。とはいえ、空気はしっとりと重みをもって潤んでいた。京都の街は四方を囲む山の影に抱かれて、透明な夜に沈み込んでいる。将軍塚に到着した時には、既に夜明けの兆しが東の空に現れていた。徐々にほの白く光りだす稜線の上では、薄紫と曙色が織り交ざり、オーロラのごとく空が滲んでいる。爪でひっかいたような月が細く空に浮かんでいた。時間がたつにつれ、ほっそりとした紫雲は体を伸び縮みさせ、こちらに手を延ばすかのように空を泳ぐ。東の山をじっと見つめること数十分。ついに黄色く丸い大きな光が、山の頂点に乗りあがった。柔らかい控えめな朝日が京都の街の隅に達する。よもや、夜明けか。黄金にも勝る一瞬一瞬、空の刻一刻の変化を見届け終えると、胸がすくような心持ちになった。
帰りの道中、数日前まではみずみずしくふんわり咲いていた紫陽花の花弁の端が、茶色くしおれているのを目撃した。京都の季節がまた巡りくる。(燈)
