インタビュー

猫好きが国境を越えて集う場所 保護猫カフェギャラリー Cat’s EYE 永岡和子さん

2026.06.16

猫好きが国境を越えて集う場所 保護猫カフェギャラリー Cat’s EYE 永岡和子さん

店主の永岡さんと白猫の雪之丞(永岡さん提供)

河原町丸太町の北西角、吉成ビルの3階に小さな「猫カフェギャラリー Cat’s EYE」はある。南向きの窓から日が差し込む中、陽だまりのような色をした座椅子の上で、白猫がグーっと伸びをして身体を輝かせている。それを笑顔で見守る女性に、店主が「Where are you from?」と優しい声で問いかける。アメリカから日本旅行にやってきたという。店内を見渡すと、壁には猫に関する様々な絵が飾られていて、その近くを6匹の猫が気ままに行き来している。異色な風景だが、何だか綺麗に調和している。

店主の永岡和子さんは、通訳ガイドを目標に学んで培った英語力と画廊経営の経験を活かし、海外からのお客さまが半数を超えるというこの店を営む。保護猫活動の普及、癒しの場作り、そして猫好き同士の国際交流。その3つを目指す店づくりへの思いを伺った。(雲)

目次

保護猫活動の日々
画廊と通訳、2つの夢
猫に国境はない

保護猫活動の日々


──保護猫カフェ兼ギャラリーを始めたきっかけは。

元々は1991年から画廊を営んでいました。その頃、生まれたばかりの子猫を保護して店で世話していたことがあります。私の手の中で必死にミルクを飲む子猫を見て、疲れた様子の若い女性のお客さまが「この子も頑張って生きているんだな」と涙を流したことがありました。その時、現代には癒しの場所が必要だと強く感じたのが開業のきっかけです。2016年に当店をオープンしました。猫の歩くアートギャラリーも素敵だと思い、両者を併設しています。猫が絵を引っかくなどはなく、偶然倒してしまうことが稀にあるだけなので並存できました。

当店では、野良として大人になった保護猫も人間と親しい家族になれるという理解を広げるとともに、精神的に疲れた方に癒しの時間を提供することを目標にしています。

──保護猫活動のきっかけは。

画廊を始めて1年の頃に、先斗町の公園で衰弱している子猫を見つけました。周囲に親猫はおらず、危ないと思ってその子を抱えてタクシーで帰ったのが、大人になって初めて保護した子です(*)。画廊1周年だったこともあり、「神様からの贈り物」だと思いました。それから色々な機会で猫を保護してきました。

現在は、行き場のない保護猫を店で預かったり、お客さまが一時的に保護した猫を他のお客さまに紹介する活動をしています。大々的な里親募集はせず、来店される中で猫に対する愛情や人柄を確認できた方に保護猫を紹介します。一般の譲渡会では独身の方に条件が厳しい場合も多いですが、当店では緊急時に預かれる友人が近くにいる方には年齢も考慮しつつ紹介します。

(*)このような場合、猫のけがの程度や親猫が周囲にいないか、地域猫ではないかなどの確認を十分に行う必要がある。また保護した猫は必ず病院につれていき、病気、特に伝染病の検査を受けさせる必要がある。

──店で暮らす猫の様子は。

店には現在6匹の猫がいます。例えば黒猫の店長「黒豆(くーちゃん)」や白猫の「雪之丞(ゆきちゃん)」は高知県の保健所で殺処分直前だったところを高知でボランティアしている友人が救い、当店で保護しました。来たばかりの頃は人間不信だった子も、怖がらせないために目を凝視せずご飯をあげたり、安全なケージの中に猫じゃらしだけを入れて遊んだりと、安心してもらえるように努力して、徐々に人懐っこくなっていきました。ゆきちゃんや茶白の「茶々丸」は尻尾の付け根をトントンと叩いてもらうのが好きです。お客さまに叩いてもらいにやってくることもあります(笑)。

また、いつも褒めるようにしています。例えばくーちゃんが偶然お客さまの膝に乗ったときに褒めたら、それ以来1日の初めに来店したお客さまの膝に毎回乗るようになりました。どの子にも毎日「いい子だねぇ、愛しているよ、元気でありがとう」と伝えて、それぞれのパーソナリティならぬ「キャッツナリティ」を大切にしています。

店の子の他に、緊急で保護された猫を一時的に預かることもあります。店の子は皆優しく、尻尾で遊んであげるなど、面倒を見てくれます。子猫を臨時で保護した時は、子猫の方が店の子より威張って店内を闊歩していたくらいです(笑)。

先斗町で保護した白黒猫のぽんちゃん(永岡さん提供)



膝に乗るくーちゃん(永岡さん提供)



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画廊と通訳、2つの夢


──現在の店を開く前に、なぜ画廊を営んでいたのか。

小さい頃に2つの夢がありました。1つは絵画に関する仕事をすることです。小学生のころ絵のコンクールで賞をもらって以来、絵が大好きでした。年を経るにつれ、描くのではなく観る方に興味が増していき、絵に関する仕事をしたいとずっと考えていました。

もう1つは、通訳になることです。小学生のころビートルズに熱中して「通訳になってビートルズのメンバーと話す」という夢を持ちました(笑)。

高校卒業後は東京の通訳養成所で学び、アメリカの音響メーカーの極東支社に就職して受付兼タイピストをしていました。けれど極東支社が東京から台湾に移される過程で一斉解雇されてしまって。

それで、観光通訳ガイドの国家試験に向けて勉強しつつ働こうと京都に移住して、知人の紹介で貿易会社に勤めることになりました。海外の顧客との手紙や電話のやり取り、アメリカでの商品展示の紹介などを行いました。4年ほどで退職し、貯まったお金でもう1つの夢だった画廊を開きました。

──画廊の運営は。

当時京都には、若手の日本画家が結成した研究グループ「横の会」があり、その方々の絵を販売することが多かったです。「何必館・京都現代美術館」で開かれていた展示に通ううちに、何必館のオーナーに横の会を紹介してもらったのが彼らとの出会いです。横の会の畠中光亨先生や竹内浩一先生には大変お世話になりました。

画廊を開いたころにはバブルが弾けていたので、近くの証券会社で営業の仕事をしながら、初めの3年は二足のわらじでなんとか生活していました。

窓際でくつろぐ茶白猫の茶々丸と雪之丞(永岡さん提供)



雉猫のナナちゃんが何かを見つめている。そばには猫の写真や絵画(永岡さん提供)



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猫に国境はない


──どのような人が訪れるのか。

海外からのお客さまが半分ほどです。京大の学生や教職員もよく来られますね。海外の方とは、画廊以前に勤めていた音響メーカーや貿易会社の話で盛り上がることもあります。観光通訳ガイドの夢はまだ国家試験を受けていないので実現していませんが、今までの経験が海外のお客さまとの交流に活きています。

また、世界地図帳を会話の補助としてよく使います。ポーランドのカップルが実際に旅した国の地理と文化を記したもので、他国の人と仲良くなるのに優れたツールです。仲良くなって、帰国後に手紙をくださる方や、リピーターになってくださる方もいます。

──どのような国から来るのか。

米国、フランス、オーストラリアが圧倒的に多く、あとは様々な国から来られます。地図帳で探さないと分からないような国からも。ウクライナから来た方がドイツから来た京大の留学生と話が盛り上がり一緒に写真を撮ったり、中国本土の留学生と台湾の留学生が猫をきっかけに意気投合することがあったりしました。ロシアから来られた方もいましたよ。国際情勢の影響で、自分の出身国をためらいつつ口にする方もいますが、そんな時にこそ「ようこそ!」と全身で歓迎すると嬉しそうにしてくださいます。

──保護猫活動について私達ができることは。

地域猫に対して暖かい目を向けてほしいです。そして本当のことを言うと、ご飯をあげるだけでなく、捕獲し、避妊去勢手術をした後に元の居場所へ戻すTNR活動なども行ってほしいです。また個人的な意見なのですが、猫を飼いたい方は保護猫の譲渡会や、動物愛護センターでの譲渡会にも目を向けていただけると嬉しいです。

──最後に、この店をどのような場所にしていきたいか。

精神的に疲れている方に癒しを提供していきたいです。また、猫が好きという共通点で人と人をつなぐ、国際交流の場として役立てていきたいです。国や政府と関係なしに、猫好きという個人のレベルで仲良くなるのは本当に嬉しいことですね。

──ありがとうございました。

動物画家・竹内浩一の《兎》。瞳が綺麗(永岡さん提供)



猫作家・山村祥、巍夫妻の合作《猫が猫を描きました》(永岡さん提供)



カメラに興味を示すナナちゃん



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