ニュース

次期総長に立川康人氏 「卓越大構想実現に取り組む」決意 意向調査3位 選考プロセスに学内から疑問の声も

2026.06.16

次期総長に立川康人氏 「卓越大構想実現に取り組む」決意 意向調査3位 選考プロセスに学内から疑問の声も

記者会見で記者からの質問に応じる立川氏

総長選考・監察会議(選考会議)は6月16日、京大の次期総長に立川康人氏(副学長)を選出した。湊長博・現総長の任期終了後、文科相の任命を受けて10月1日に就任する。任期は6年間となっている。

15日に行われた教職員への意向調査において、立川氏は3位で、1位の候補者とは179票の差があり、得票率は約21%だった。再意向調査は実施されていない。16日の記者会見で平野俊夫・選考会議長は、あくまで意向調査を尊重したうえで、卓越大認定に向けて「対話を重ねて現場で努力している点を評価した」と強調した。

学内からは、意向調査の結果を直接反映しない選考プロセスを問題視する声も上がっている。

立川氏は、京大工学部出身の62歳で、工学研究科長や副理事などを経て今年度から京大将来ビジョン担当副学長を務めている。

立川氏は4月23日の学内予備投票で4位となり、5月25日の選考会議で第一次候補者6名に選出された。6月15日に行われた教職員への意向調査で3位となり、翌日、選考会議による面接を経て次期総長に決定した。選考理由について平野・選考会議長は、立川氏が今年度から京大将来ビジョン担当副学長として、デパートメント制導入のために「現場で尽力している」と述べ、「国際卓越研究大学(卓越大)構想を現場でいかに進めるべきかを熟知している」と説明した。また、「対話を重視したリーダーシップ」が見られた点も評価したという。

選考プロセス 透明性は


15日の意向調査では、椹木哲夫氏(理事・副学長)が478票、田尾龍太郎氏(農学研究科長)が301票を獲得し、立川氏は2氏に続いて299票を得て3位だった。立川氏の得票率は約21%にとどまったが、再意向調査は行われなかった。規程では、選考会議が面接と意向調査の結果などを勘案したうえで、合議により総長を選出すると定められており、再意向調査の実施の有無も選考会議が判断する。選考プロセスをめぐっては、2019年に、「意向調査で得票が過半数を満たす者がない場合は、上位2名で決選投票(*)を行う」という条項が削除されている。

意向調査で1位でない候補が総長に選ばれるのは京大では初めて。会見で平野氏は、面接と議論を重ねたうえで選考会議で責任をもって判断したと説明し、「全会一致で決定した」と強調した。立川氏は、意向調査3位で総長に選出されたことについて「大変なことだと思う」と述べたうえで、「様々な意見の対立はあるが誠意をもって対話をし、問題を解決する意志はある」と決意を語った。

学内からは選考プロセスを問題視する声も上がっている。職組中央執行部は本紙の取材に対し、意向調査3位の候補を選出するのは「有権者たる教職員、さらに学内構成員すべてに対する冒とく」だとして「満腔の怒りをもって批判したい」とコメントした。職組学生部は、声明で、「非民主的で、全学の構成員の意向を蹂躙するような結論が出されたことは、断じて許し難い」として、選考プロセスの公開と再意向調査を求めた。第一次候補者に公開質問状を提出していた京大中東問題有志学習会は、「今回の総長選考のプロセスはあまりに問題含み」だとして「民主的なプロセスによる選考が行われるべきことを、強く訴えたい」と述べた。

(*)注
「再意向調査」は選考会議の評価が上位の2名について行われるのに対し、2019年まで規定されていた「決選投票」は、意向調査での上位2名について行う。

卓越大構想の実現掲げる


立川氏は選考時の所信表明で、工学研究科長として組織運営を行い、卓越大構想をどのように進めるべきかを現場で考えてきた経験を述べた。デパートメント制への移行については、方向性を合わせるために各デパートメントと執行部が情報共有し、合意形成する場を構築するとした。また、博士後期課程進学者を増やす仕組みとして、9年一貫教育システムを導入することも提案した。このほか、高度な研究設備を整え、学内外に開放することで研究大学としての魅力を発信するという。

選考会議は、所信の内容について、デパートメント制への円滑な移行にむけ、学部教育を含め具体的な方策を構想していると評価した。

会見で立川氏は、研究成果が社会的評価を受けることで人材・資金が集まり、さらに新たな知が生み出される好循環の場をつくりたいと述べ、「重責を担うこととなる」と語った。また、湊総長の任期の評価と反省点を問われると、「現執行部の改革の成果は大きく、反省点は見いだせない」とし、中でも卓越大認定に向けた取り組みを高く評価した。今後の京大の課題については「人口が減っていく中で研究の活力をどう維持するか」だといい、卓越大構想は課題克服への一つのきっかけになると語った。

立川氏 2団体にのみ回答


第一次候補者6名に対し、職組など5団体が提出していた公開質問状は、6月9日までにそれぞれ回答期日を迎えた。各候補の対応は分かれたが(=表)、立川氏は実質、職組中央執行部・職組学生部の2団体のみに回答した。立川氏は、会見で公開質問状について、「いい加減な回答で混乱を生まないため、自分の現在の立場で真摯に答えられるものにのみ回答した」と説明した。一方、吉田寮自治会は公開質問状について、「浅野候補を除き回答がなかったことを深く憂慮している」とコメントした。

立川氏はデパートメント制移行については、半年をめどに実施計画を策定し、全学的合意を得たうえで2年で実現したいと回答した。学生との対話については、広く学内の意見を聞くのは重要だとした一方、その方法については学生意見箱の利用にふれるにとどまった。また吉田寮現棟の建て替え方針をめぐっては、慎重に検討を続ける必要があるとしながらも回答を避けた。

(表)公開質問状の回答状況