金が写した在りし日の京都 「黄金に宿る 祈りと秀吉の夢」展
2026.06.01
「金天目および金天目台」
霊宝館を訪れると、まず目に飛び込んでくるのは眩いばかりの「金天目および金天目台」だ。一見すると金箔を貼り合わせたようにも見えるが、実は金の高い展性を利用して、極限まで薄く伸ばした金板を成形して作られたものだという。企画を担当した醍醐寺の飯田竣海さんは、昨今の世界情勢による金価格の高騰や、大河ドラマの影響で秀吉への関心が高まっていることを受け、「金」をメインテーマに据えたと語る。また、重要文化財の「醍醐花見短籍」や、秀吉が花見のためにあつらえたとされる「桐文蒔絵」の工芸品、さらには喜多川歌麿筆の「太閤五妻洛東遊観之図」といった絵画が並ぶ。これらは、秀吉が死の間際まで追い求めた華やかな夢の跡を今に伝えている。
黄金の華やかさとは対照的に、平成館では重厚な密教美術が来訪者を圧倒する。国宝の「薬師如来坐像」をはじめ、鎌倉から江戸時代にかけて制作された2組の「五大明王像」が並び立つ様は圧巻だ。金銅の両界曼荼羅や、水晶の宝龕に収められた阿弥陀如来立像からは、当時の人々が黄金や水晶といった不変の輝きの中に、いかに切実な「祈り」を込めたかが窺える。歴史の荒波を越えてきた仏像たちの前では、思わず背筋が伸びるような静謐な時間が流れていた。
5月初旬、新緑の香りが漂う中で境内を歩いた。醍醐の春を象徴する桜は、残念ながらすでに時期を過ぎていたが、霊宝館内に展示された現代日本画の「醍醐櫻曼荼羅」(鶴田一郎筆)や、江戸時代の「桜図」の中では、今も満開の美しさを保ち続けている。花は散れど、その記憶は黄金の装飾や絵画の中に「永遠の春」として刻まれているのだ。黄金という素材が持つ普遍的な価値と、そこに宿る精神性。本展は、歴史の重みを伝えるだけでなく、混迷する現代において「変わらぬ価値とは何か」を問いかけてくる。会期は5月6日まで。(熊)
