文化

不変の美 あざやかに 押し花アート展2026

2026.05.16

不変の美 あざやかに 押し花アート展2026

《万華鏡の祈り》(右)

京の桜はすっかり葉桜になった。「散ればこそいとど桜はめでたけれ うき世になにか久しかるべき」。伊勢物語で詠まれる本歌のように、やはり花は散るからこそ美しい、と感じる人が多いのではないだろうか。しかし、色褪せない花で人々を魅了し続ける技がある。それが、押し花アートだ。日本を代表する押し花作家・杉野宣雄氏が手がける「押し花アート展2026」が5月10日まで京都佛立ミュージアム(上京区)にて開催された。杉野氏の押し花人生を象徴する代表作のほか、今回の展示のために新たに手がけた、祈りをテーマとする作品など、約90点の作品を展示した。

杉野氏の押し花アートは、草花の天然の色彩を長く保つ独自の技法による、鮮やかさが一番の特徴だ。若々しい美しさをそのままに留める作品たちは、生きているようにも見えるが、生命の枠を超えているようにも思える。ミュージアムの主任の松本現薫さんは、ミュージアムが仏教を紹介するものであることに触れ、押し花が仏教の無常の教えとつながっていると言う。仏教における無常は、万物は変化していくがその中に不変の真理があるとする。花は儚いものの象徴でもあるが、変色しない押し花はその中で変わらない美しさを示しているため、花の不変の真理に触れたような心地になるのだ。

本展の目玉は、「祈りとスリランカ」と題したコーナーだ。杉野さんが仏教の国・スリランカを訪れた際、難病の人々が、入院中に押し花をしていることを知り、縁を感じたという。そこで、仏陀がそのもとで悟りを開いた菩提樹のDNAをもつ、スリランカの菩提樹の葉を祈りの対象として押し花で残すプロジェクトが始まった。このほか、スリランカの草花を使用した作品や、スリランカの風景をイメージした作品が飾られている。松本さんは、「手を合わせて祈るという機会が減っている中で、もう一度『祈り』を思い起こすきっかけになれば」と話した。ひときわ目を惹いたのは、青を基調として少女の横顔が描かれた《万華鏡の祈り》である。少女が大きな瞳でまっすぐ見つめる先には青い花々が散りばめられている。夜空の満天の星がこぼれるようにも見えて、神秘的な雰囲気をもつ作品だ。

作品を見ていくと、細かな点が作品の見え方に大きく影響していることがわかる。花の向きや配置のバランス、花弁の開き具合を見極めて作られた作品を近くで見つめて、遠ざかって見ると思わず息が漏れる。下地となる紙の材質によっても、作品が与える重厚感が変わるのが面白い。

額縁の中に収められた変わらない美しさを前にして、儚いこの生をどうしようかと大袈裟なことを考えてしまうほどに、押し花に圧倒され魅了される展示だった。(悠)

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