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京大 吉田寮現棟の建替を発表 14日HPで 教授会の審議経ずに決定 和解・確約との整合性に論点

2026.04.16

京大 吉田寮現棟の建替を発表 14日HPで 教授会の審議経ずに決定 和解・確約との整合性に論点

建替方針発表までの京大内の意思決定過程 (取材に基づいて作成)

京大は4月14日、吉田寮現棟を建て替える方針を発表した。京大は本紙の取材に「14日の部局長会議で可決後に役員会で決定した」と回答。関係者への取材で、教授会や寮問題を担当する学生生活委員会などの審議を経ず、部局長会議での可決後にホームページで即日公表されたことが分かった(=図)。また、執行部が今回の方針は「法的には問題ない」と説明したことや、湊長博総長が寮問題について全学生向けアンケートを検討していることが分かった。

一方で学内からは、和解の趣旨や訴訟以前の確約書との整合性を疑問視する声が挙がっている。寮自治会は発表に対し「一切の話し合いもなく一方的に発出されたもので、受け入れられない」と反発。本紙の取材に対し大河内泰樹教授(文学研)は「今回の発表は確約書に反している」と批判したほか、駒込武教授(教育学研)は、「寮生と相談せずに建て替えを発表するのは、高裁の判断を蔑ろにするものだ」と述べた。

目次

概要
①和解条項や確約書との整合性は
②学内の意思決定過程の妥当性は
8日までにフェンス設置


現棟をめぐっては、昨年8月に成立した寮自治会と京大との和解で、京大が現棟の耐震工事(建替工事を含む)をすることが決められている。3月末には寮生が現棟を明け渡し、4月8日までに京大は現棟周囲にフェンスを設置した。寮自治会は継続して、対話の再開と「現棟の価値を尊重した耐震工事」を京大に求めていた。

14日、京大はホームページで、現棟の耐震工事については▼公平な学習・居住環境の整備▼キャンパスの利便性▼教育・研究環境の向上、を主眼に検討してきたと説明。その上で、「建築物としての歴史的経緯に配慮しつつ建て替える」と発表した。さらに現棟の建て替えによって生じるとする敷地は「全学生の共有財産」とし、「福利厚生や教育環境の質的向上が図られるように活用する」との方針を示した。詳細は、学内の意見を広く聞きつつ検討を続けるという。

吉田寮自治会は16日、京大の方針発表に抗議する声明を発表した。その中で、これまでに実地調査や対話の機会がなかったことを踏まえて「唐突かつ一方的に発出されたもので、受け入れられない」と反発。「対話に基づいて問題を解決する姿勢が全くうかがえない」と指摘した。また、全学的な意見聴取を掲げる京大の方針に対しては、「まずは当事者である寮自治会との対話を再開することが最重要」とし、現棟の構造を最大限残す耐震工事を再度要求した。

本紙の取材に対し京大は、2019年に発表した「吉田寮の今後のあり方について」にある条件を満たす寮生については「話し合いを行おうとしてきたところ」と説明。一方で、条件を満たさない寮生については「寮生として対話をすることは考えていない」と回答した。

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①和解条項や確約書との整合性は


昨年8月に大阪高裁で成立した京大と寮自治会との和解では、▼京大が5年以内に耐震工事(建替工事を含む)を終わらせること▼寮生は工事のために一時的に現棟から退去すること▼京大は工事計画を可能な範囲でホームページに公表すること、などが決められており、3月31日には寮生が現棟を明け渡した。寮自治会は本紙の取材に「和解の際に大阪高裁が、話し合いで方針を決める旨の勧告を出した」とし、「京大が勧告を履行していない」と指摘した。

伊勢田哲治教授(文学研)は本紙の取材に、「和解の文章を文言通りに読めば、京大が一方的に建て替えを決めて公表することも排除されていない」としながらも、「和解の趣旨は『今後の方針は話し合って調停する』というものであるはず」と指摘した。その上で、建て替え後の敷地の創出を前提とした京大の発表は「和解の趣旨を無視したものだ」と批判した。

大河内泰樹教授(文学研)は「建物を残す耐震工事を検討したとは思えない。最初から、建て替えて寮以外にも活用するつもりだったのでは」と推測する。さらに一審判決で有効性が確認された確約書に言及し、「今回の発表は一方的な決定で、確約書に反する」と述べた。寮自治会は訴訟前から京大執行部の学生担当との間で確約書を作成しており、一審判決でも確約書の有効性が認められた。確約書では、①寮に関する事項は話し合って解決し、京大が一方的に決定しないこと②現棟の補修が有効な手段だと双方が認めること③現棟の建築的意義をできるだけ損なわない補修に向けて協議すること④大学組織やキャンパスの改組・再編については、副学長が各種会議の内容も含めて知りうる情報を決定以前に公開すること、が約束されている(*)。

髙山佳奈子教授(法学研)は本紙の取材に対し、「高裁での和解は一審判決を踏まえたもの。その内容を破る措置は犯罪の可能性がある」とし、京大を刑事告発することも視野に入れていることを明かした。

なお執行部は部局長会議で、今回の決定は「法的には問題ない」と説明したという。

(*)編集部注
①は2015年2月12日の確約書、②・③は12年9月18日の確約書、④は11年3月8日の確約書に記されている。

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②学内の意思決定過程の妥当性は


京大によると現棟建て替え方針は、総長と理事から成る役員会で最終決定されたという。今回の方針の決定・発表過程を明らかにするため、本紙は部局長(研究科長など)の教員と部局長でない教授職の教員の合計9名に取材を実施した。その中で、14日に総長や理事、部局長が出席する「部局長会議」で審議・可決された後に役員会で最終決定され、教授会などを経ずにホームページで即日発表されたことがわかった。また、翌日以降に開かれた教授会や委員会では、部局長会議で既に可決された議題として報告されたことも明らかになった(=図)。

■部局長会議

14日に開かれた部局長会議では、「審議事項」として湊総長が議題を紹介し國府寛司・学生担当理事が内容を説明した。執行部が既に取りまとめた方針を部局長会議に提案した形だ。通常の部局長会議では質問がほとんど挙がらないというが、今回の方針については数人の出席者が質問。「建て替えは和解条項にも含意されているが、行き過ぎた方針では」との質問に執行部は「法的には問題ない」と答えたという。その上で執行部は▼福利厚生施設・国際共修を目的とした宿舎の建設▼緊急車両の入構路の確保▼近衛通に面した出入口の整備、を検討していると明かしたという。また、「建築物としての歴史的経緯への配慮」について問う声に、國府理事は個人的見解として「現棟の玄関などの特徴的な部分を移築することも考えられるかもしれない」と答えたという。教授会や委員会を経ずにホームページで発表することへの意見は出なかったといい、最終的には異論が出ずに可決された。京大によると、部局長会議での可決後、役員会で最終決定されたといい、即日ホームページで公開された。ある出席者は、多くの部局長は特に異論を唱える意思を持っていないのでは、と本紙に明かした。また関係者への取材から、部局長会議で総長が、寮問題について全学生向けのアンケートの実施を検討していると発言したことが明らかになった。

■️教授会

部局長でない教員はいずれも建て替え方針について、発表時には「知らなかった」「事前に説明はなかった」と答えた。複数の部局ではホームページ発表後の教授会で、「審議事項」ではなく「報告事項」として扱われ、部局長会議での可決事項として部局長が説明したという。文学研究科の教授会では複数の参加者が疑念を示し「比較的時間を割いて議論された」という。なお、法学研究科や人間・環境学研究科など一部の部局では、発表以降にまだ教授会が開かれていない。発表内容とそれに至る手続きについて、安部浩教授(人間・環境学研)は本紙の取材に対し、「何れも納得しかねる」と批判した。

■学生生活委員会

学生寮に関する問題を管轄する学生生活委員会でも、発表翌日に、部局長会議での可決事項として報告された。委員の一人は本紙の取材に対し、委員から▼決定経緯が説明不足ではないか▼寮生の反発を招くのではないか、との疑義が出されたと明かした。これらの意見に対して委員長の國府理事は、「寮生という一部の学生と対話するよりも、大学全体の利益を優先する」と述べた一方、説明不足を認めたという。委員の一人は本紙に「事前に学生生活委員会で審議し、熟議を経て練り上げた案を部局長会議に諮るべき」「誰がどのような手続きで建て替え方針を決めたのかブラックボックスだ」と説明した。また、別の教員によると3月までの同委員会で吉田寮についての審議はなかったという。同教員は本紙の取材に、「ほぼ全ての部局の代表者が出席する学生生活委員会で意見をきかないことは理解に苦しむ」と述べた。

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8日までにフェンス設置


寮自治会は和解に則り3月31日に現棟を明け渡した。4月1日には学生支援課(旧:厚生課)職員らが現棟を訪れ▼居住者がいないこと▼大量の残置物があること、を確認。テープによって現棟周囲に規制線を設置した後、2日から8日にかけてフェンス設置作業を行った。京大はフェンスの目的を防犯・防火としている。1日の明け渡し確認の際に寮生は、工事方針を明らかにしない京大の姿勢に抗議。寮自治会によると、職員がその場で「次の窓口交渉の際に、可能な限りの情報を共有できるよう努める」と約束したが、8日の交渉では「建設的な回答は得られなかった」という。本紙の取材に対し京大は、「対応内容については答えかねる」とし、フェンスの設置経緯・撤去予定についても回答を避けた。

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