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植物細胞の 「原形質流動」を解明 理学研究科 西村教授・上田研究員

2010.04.08

3月23日、西村いくこ・理学研究科教授と上田晴子・研究員らの研究グループが、植物細胞の「原形質流動」のしくみを始めて明らかにしたと発表した。

「原形質流動」とは、生きている細胞のなかで「葉緑体(光合成を行う)」や「ミトコンドリア(エネルギーを発生させる)」などの構造体(「原形質」)が非常に高速なスピードで動き回る現象のこと(1秒間に最大で1つの構造体の約50倍の長さ分移動)。1774年にイタリアの学者・コルティによって初めて発見され、長らく植物細胞生物学の謎とされてきた。

今回、西村教授らは、1956年に植物学者・神谷宣郎によって提唱された「原形質流動の滑り説」をもとにし、細胞内で最大表面積をもつ構造物「小胞体」に注目した「小胞体・ミオシン・アクチン三者相互作用モデル」を実証した(説・モデルについては図表参照)。

研究ではナズナの細胞を用いて、「遺伝子欠損」の技術で「ミオシン」を取り除いた実験を行ったり、「蛍光標識」をはじめとした「イメージング」の技術や、速度分布を調べる独自のプログラムを駆使して、直線状に高速に動く「小胞体」を観察した。 「ミオシン」を取り除いた実験では、「小胞体」は動かなくなり、「アクチン」も正常にレールを形成しなかったという。

「原形質流動の滑り説」 繊維状のタンパク質「アクチン」のレールの上を、モータータンパク質「ミオシン」が滑ることによって流動が引き起こされるという説。

「小胞体・ミオシン・アクチン三者相互作用モデル」 「小胞体」のネットワークと「ミオシンモーター」が結合し、「小胞体」・「ミオシン」・「アクチン」が相互作用するため、「小胞体」がさらに太い高速のレールの役割を果たし、他の構造体を巻き込んで流動するとしたモデル。

成果は、論文『ミオシン依存的な小胞体運動とアクチン繊維の構築(Myosin-dependent endoplasmic reticulum motility and F-actin organization in plant cells』として『米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Science of the United States of America)』でオンライン公開されている。

本紙に図掲載

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