京大新聞PRESENTS スーツ探偵団 知られざる秘密が今・・・!!

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大学の入学式や卒業式と言えば、大部分の人がスーツを着るだろう(もっとも京大にはコスプレで卒業式に出る人もいるが)。不思議なことに、今や日本においてはフォーマルな場では男女問わずスーツを着ることが常識になっている。一生スーツを買わずに生きていこうという人は、おそらく少ない。そんな誰もが一度は袖を通すスーツであるが、いざ購入するとなるとその種類の豊富さに圧倒される。大手の量販店で1万~2万円で入手できる格安スーツがある一方で、1着20万円するスーツもある。型や小道具も豊富で一体何をどういう組み合わせで着るべきなのか、と思う方も多いだろう。そこで本紙編集員でスーツ探偵団を結成し、興味の赴くままに、「値段の高いスーツと安いスーツでは何が違うのか」「ネクタイはどう結べばよいのか」「そもそも人間はいつからスーツを着ているのか」という3つの疑問を追究した。スーツ購入の参考になるかは保証できないが、一読してもらえれば幸いである。(ちなみに団員は全員男性で、女性スーツの調査は断念した)(書)

※本紙に写真掲載

【Mission1】 スーツの違いを体感せよ!


取材の日、我々は車に乗り込み、3人で四条通りへとくり出した。車から降りたところでおじさんが我々の方に来てしゃべりかけてくる。「ここらはもう入ってないよ」としきりに主張していたが、何がどう「入ってない」のかが分からず、発言の意図は全く不明であった。我々は「そうですね」などと適当に相槌をうちつつ、逃げるようにおじさんから離れた。だいぶやる気がそがれた。

まず向かったのは四条烏丸付近のエンポリオ・アルマーニ京都店。店の外観からしてすでに高級店としての香りを存分に漂わせており、その「高級店っぽさ」は軽い気持ちで訪れた我々を萎縮させるのに十分であった。

緊張しながら入店し、店員さんにわけを話したところ、写真撮影はNGだが試着はしていいという。団員を代表して私が試着することになり、背丈や体格に合ったものを選んでもらって袖を通した。ふと値札を見るとなんと値段は15万7500円であった。破いたりしたら大変だと思って怖くなったが、高校の卒業式と京大の入学式でしかスーツを着たことのない私には値段に見合う着心地かどうかはよくわからなかった。

店員さんの話によると、高級なスーツの一番の特徴は生地の細さにあるのだという。細い繊維を編みあげることで着心地の良さを生み出しているらしい。ただ、生地がうすい分強度が落ちるので毎日着るには適さないという話であった。なるほど、毎日忙しく走りまわっているような人間は15万円もするスーツなど着ないだろう。実用性以外の所に価値を持っているのが高級スーツなのだなと合点がいった。

店員さんに礼を言ってアルマーニを後にする。次に入ったのは洋服の青山四条河原町店。2万円~8万円くらいの値段でサラリーマン用のスーツを販売している店である。

やはりというか、店構えからしてアルマーニなどよりずっと敷居が低く、店員さんの対応もフレンドリーであった。試着させてもらいたいと話すと、どうぞどんどん着てくださいという具合に快くOKをもらった。しかし、店長が不在だったため、写真撮影の可否を確認できず、またも写真撮影はできなかった。

またも私が試着する運びとなり、フレッシュマン用の最もポピュラーなスーツを着てみた。心なしかアルマーニで着たスーツよりも生地が強くて丈夫そうである。値段は1着5万1450円であった。店員さんに話を聞いたところ、やはりメインの客層は毎日スーツを着て働くサラリーマンであり、青山のスーツは実用性重視であるらしい。1着買うと+1000円でもう1着同じスーツがついてくるサービスや1着の値段でズボンだけは2つついてくるサービス(ズボンの破けやすさを考慮したサービスらしい)など、色々と工夫していることもわかった。全国展開している強みで大量に、かつ安価で仕入れを行うことができることが安さの大きな理由の一つであるという。

店員さんに頭を下げつつ店を出た。それぞれに個性的で魅力ある2店であった。(47)

【Mission2】 ネクタイの結び方を修得せよ!


本紙に詳細な写真を掲載

いざスーツを着るに至って多くの方が悩むのが、ネクタイである。中学・高校で制服がブレザーだったという方はそんなことはないかもしれないが、制服はそれこそ学生服だった、またはそもそも制服がなかった、という方にとっては大きな問題である。「あんな布切れをわざわざ首に巻くなんて、面倒でいやだ!」などど言っていても、大学の入学式では大部分の方がスーツを着るであろう。ましてや就職活動ともなると、着ないわけにはいかない。そこでこのコーナーではネクタイの結び方を紹介しようというのだが、一言にネクタイといっても様々な結び方がある。本来ならばネクタイの太さやシャツの襟の形、スーツを着る場面に合わせて結び方を変えるべきなのだが、ここでは最もシンプルで大抵のシャツやネクタイに合う、「シングル・ノット」という結び方を紹介したい。ちなみに、ネクタイの幅広になっている側の端を大剣、反対側の端を小剣と呼ぶ。(書)

①大剣が上になるように小剣と交差させる
②大剣に小剣の下をくぐらせる
③大剣が小剣の周りを1周するように巻く
④大剣をV型になっている襟もとに下からくぐら せて通す
⑤大剣の先を下の結び目の袋に通す
⑥小剣を押さえ、大剣の先を下へ引いて結び目を締める
⑦形を整えて完成

【Mission3】 スーツの歴史を解明せよ!


襟とカフスボタンのついた長袖上着、同色の長ズボン、そして上着のVゾーンからのぞく襟つきシャツとネクタイ。ときにはシャツの上にベストを着ることもある。私たちが「スーツ」あるいは「背広」と呼ぶ服装である。ビジネスマンの戦闘服とも呼ばれる(もっとも、最近では女性用のスーツもメジャーになったが)。「背広」という呼び方がロンドンの仕立屋街Savile Rowが訛ったという説など諸説あるが、スーツが現在のようなスタイルになったのは、今から150年ほど昔に「ラウンジ・スーツ」が誕生したときである。それ以来スーツは、個々のディティールにおいては変化するものの、全体としては大きく変わることなく現在に至っている。しかし、このラウンジ・スーツ登場までの歴史は、イギリスにおける「理想の男性像(ジェントルマン像)」の変化と複雑に絡み合う。

シャツの上にベスト、さらにその上にコートを着るというシステムが始まったのは、チャールズ2世による1666年の衣服改革以降である。ちなみに、この段階ではベストは現在のそれよりも丈が長く、むしろ「体にぴったり合ったコート」だった。それまでは、ダブレット(各所に詰め物をして体を大きく見せる上衣)に、ホウズ(半ズボン。ブリーチズとも呼ばれる)、そしてマントを着用するのが男性の正装で、大きなリボンやレースであちこち飾り付けるなど、今から考えると装飾過多である。衣服改革後もホウズやたくさんの装飾は残るものの、こうしてスーツの原型が生まれたのである。

この原型が約100年ほど受け継がれ、その間にスーツはジェントルマンシップを表現するための衣服として定着した。1780年にはそれまでのスーツの着方を茶化す「マカロニ・ファッション」が生まれたが、スーツはそれすら取り入れた。内ポケットや装飾ボタン、短いベストはマカロニ・ファッションに由来する。

次は19世紀始めの長ズボンの登場である。これはサンキュロットに代表されるフランス革命よりも、18世紀後半のイギリス国内における新古典主義の影響が強い。洋梨体型と脚線美から、均整のとれた筋肉質な体へと男性美の基準がシフトしたのである。ズボンに関しても、すらっとした長い足を演出するには半ズボンより長ズボンの方が都合がよかった。さらに同時期、スーツはカントリー・ジェントルマン的な要素も取り入れた。フロックコートの始まりだ。カントリー・ジェントルマンとは、簡単に述べると土地を貸してその賃代を収入とする有閑階級である。

19世紀前半になり、イギリスが近代市民社会に移行する中、スーツは大きな理念的影響を受ける。ブランメルが体現するダンディズムである。ブランメルは当時のイギリスにおけるファッション・リーダーの一人で、常に完璧な服装を心がけ、誰に対しても媚びることなく冷徹であることをよしとした人物。彼はその毒舌と他人を見下す態度で貴公子たちの人気を勝ち取り、彼の振る舞いを真似る人々はダンディと呼ばれた。徹底的に簡素化を図り、体のラインやシルエットを重視するスーツの着方は、ダンディたちの感情の抑制と有閑意識を表した。一方で、この洒落者のダンディに対抗してジェントルマンに憧れる勤勉な中産階級の勢力が現れるが、彼らが求めたのも簡素で機能的なスーツだった。そして1840年代には安価なスーツが出回り、中産階級もスーツを着るようになった。

それでも上流階級においては、いまだにスーツには厳格なドレスコードが存在した。日中はフロック・コートで夜は燕尾服が絶対である。しかし、燕尾服ではソファでくつろぐことができない。そこで考案されたのが、ウェストのくびれのないラウンジ・ジャケットである。そして1860年ごろ、上下の色を合わせたラウンジ・スーツが登場する。それまではスーツの上下は違う色の方が好まれていたのだ。上流階級ではこれをカジュアル・ウェアとして着ていたが、一般的な市民にとっては晴れ着だった。その後ラウンジ・スーツは上流階級でも正装として認められていくが、2度の大戦を経て階級に関係なくあらゆる用途に活躍する衣服として洗練されていく。

このように、スーツは古いものが新しいものを吸収するという形で変化してきた。ちなみに、現在のスーツは、シングルはモーニング・コートの、ダブルはフロック・コートの名残を残している。スーツに袖を通すときに、その歴史も感じてもらえれば幸いである。(書)

参考文献:
 菅原珠子・佐々井啓著 『西洋服飾史』
 中野香織著 『スーツの神話』
 アン・ホランダ―著 中野香織訳 『性とスーツ』

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