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「アフリカのフィールドに学ぶこと」 地球環境フォーラム

2010.02.23

1月30日、地球環境学堂が主催となって市民向け講演・討論会、第6回京都大学地球環境フォーラム「アフリカのフィールドに学ぶこと―食、暮らし、そして地球環境―」が開かれた(会場:時計台記念館2階国際交流ホールⅢ)。目的は「コミュニティや人々の目線からアフリカを眺め行動したときに見えてくるものから、私たちとアフリカあるいは地球環境との関わりを探る」というもの。講演と総合討論の2部構成で行われ、地球環境学堂から北畠直文・教授、水野啓・助教、田中樹・准教授、産官学連携センターから木村亮・教授が出演。主にアフリカの人びとの農業と支援のやり方について話された。

北畠教授は「アフリカに“食”の原点から見る」と題し、食料科学の研究について紹介。タンザニアの地域在来食品である「ウガリ」や「トグワ」、地酒の製造方法や栄養について説明した。「ウガリ」はキャッサバ(イモ)などを粉にして固粥とした主食。「トグワ」はトウモロコシを発芽シコクビエ粉末によって糖化させたもので残り汁(甘酒)となった飲料のこと。発酵させて地酒もつくるという。北畠教授は「ウガリ」の製造法について無駄に水を消費しないことなどから「究極のエコクッキング」で、非常に合理的であり、また「トグワ」に関してはいろいろな糖が含まれていて体にやさしいと述べた。国際化の中で、アフリカの人びとから学ぶことがあることを念頭に置いて、アフリカの貧困問題を考えていかなくてはならないという。

水野助教が行った講演の題は「在来農業と環境~バニラとバナナの甘い関係~」。タンザニアにおけるバニラやバナナなどの栽培の様子やその農園を、それが在来農業であるという視座から説明。伝統的な「キバンジャ」(集落中心部のバナナ園)での高い人口扶養力や生産性、集約性についてや「ルウェヤ」(集落をかこむ草地・放牧地)がその持続的な生産を可能としていることを述べる。加えて、それらを換金作物として栽培する農家が主体性を持つこと(フェアトレード)を目指すため、農家自身で加工や流通ができるようにならなくてはいけないと訴えた。

木村教授からは「土のうでアフリカ道普請~地域住民と道を直す~」の題で、ウガンダにおける、現地の人自身が土のうで道路を直すようにさせる支援について述べた。道路が未舗装であることは、雨期になると道が泥でぬかるみ、市場に作物を運ぶのに便利なトラックが入れないことから貧困の一因になるという。そこでこの問題を現地の人自身が解決できるよう、機械を使わない土のうによる道の改修方法を広めたいと抱負を語った。土木工学の実験から土のうで閉め固めた道路の強度について示す一方、自分たちの道は自分たちがボランティアで直すという「普請の精神」の必要性を訴えた。

田中准教授は「砂漠化対処と暮らしの向上~サヘルの風に吹かれて~」と題して、サヘル地域における、砂漠化の原因となる風食(風による浸食)を防ぎながら、作物生産量を増やそうとする「耕地内休閑システム」について紹介。「耕地内休閑システム」とは、耕地の中に一定間隔を開けて「休閑帯」という雨季の間、播種も除草もしない場所を設置し、乾季に吹きつける風を逆に利用して土壌や有機物の吹き寄せを行い、養分をためるというもの。さらに次の年には「休閑帯」をずらすことで「耕地内休閑システム」を続けていく。すると前の年に「休閑帯」だった耕地では作物の増収効果があり、風食の抑制にもつながったという。JICA(国際協力機構)の草の根パートナーとして、研究しながら現地で実践し、普及させたいと語った。

総合討論は小林広英・地球環境学堂准教授の司会で進められ、現地の人の豊かさや幸せから見た視線についてや、現地の人の必要性に合わせた支援のありかたについて質問・議論された。


【付記】

受験生の皆さんへ

皆さんは、社会や文化、生態などが異なる地域へ実際に行き、現地の人たちと一緒に生活したり、その環境にふれたりして、地域ごとの実態を調査するというフィールドワークの意義について分かるだろうか。本記事で扱ったアフリカ研究のように、現地の人びとの感じ方や考え方を知ることはそう簡単なものでなく、長い時間をかけないと分からないものなのだ。京大は、社会や文化、環境、生態をはじめとする多くの分野で国内外へのフィールドワークが盛んで、優れた方法をあみだし、すばらしい成果をあげている。もしこのようなフィールドワークに興味がわいたなら、それに関連した京大での講義や講演会などを受けてみたらどうであろうか。本やウェブページなども充実している。(春)

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