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自家フィーダー細胞による培養に成功 iPS細胞、安全性向上へ前進

2009.12.20

高橋和利・物質―細胞統合システム拠点iPS細胞研究センタ―講師と山中伸弥・同センタ―長(再生医科学研究所教授)らの研究グループは、様々な臓器の細胞を形成する元になると言われる人工多能性幹細胞(iPS細胞)について、ヒトの皮膚にある繊維芽細胞という体細胞を使うと、それがヒトiPS細胞になるだけでなく、ヒトiPS細胞の培地(培養する溶液や寒天のこと)を構成する細胞(フィーダー細胞)としても使えることを確認した。

フィーダー細胞は、iPS細胞の増殖や様々な細胞に分かれることを支える機能を果たさねばならないが、これまでヒトiPS細胞に対しては、ヒトの体細胞がフィーダー細胞となる事例が無く、胎児マウスの繊維芽細胞をフィーダー細胞として用いざるを得なかった。しかし他の動物からのフィーダー細胞は未知の病原体などを含んでいる可能性があり、またヒトiPS細胞とフィーダー細胞はともに同一人物由来のものが安全と指摘されていた。

研究グループは、新生児から73歳までの4人から採取した皮膚繊維芽細胞をフィーダー細胞として用いて実験。それで培養したヒトiPS細胞の増殖に成功し、その細胞にはあらゆる細胞に分化する能力があることが確認されたという。最近、新生児の皮膚繊維芽細胞に限って、培地としてうまく機能できることが分かっていたが、成人の皮膚繊維芽細胞では初めて。すべての人でより安全なiPS細胞ができると言える。

この成果は論文「自家フィーダー細胞によるヒトiPS細胞」として12月2日に米科学誌プロスワンの電子版で発表された。iPS細胞の腫瘍化を抑える研究とともに、細胞治療などの臨床応用に向け一歩ずつ前進することになる。

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