〈寄稿〉 田中雅一・人文科学研究所教授「人類学者、クロード・レヴィ=ストロースを読む」
2009.12.06
クロード・レヴィ=ストロースが亡くなった。すでに本紙(11月16日付)で取り上げられているように、20世紀後半の思想的潮流を作った構造主義理論の提唱者であり、その影響は、レヴィ=ストロースの専門である文化人類学を超えて、人文科学と社会科学全般、さらに科学理論へと及んでいた。かれの書物の多くが翻訳されているし、主著で、長い間未訳であった『神話論理』全4巻もみすず書房より公刊中である。
ここでは、主として文化人類学の領域で、レヴィ=ストロースがはたした役割を位置づけ、いま再びかれの考えに接することの意義を文献の紹介を兼ねながら考えてみたい。
世代的に考えると、レヴィ=ストロースが研究上重要な意味を持つのは、たぶんわたしより1世代上の年代であろう。しかし、日本の文化人類学界で構造主義3羽ガラスと称される渡辺公三(立命館大学)、小田亮(成城大学)、出口顕(島根大学)の3氏は、それぞれ1949年、1954年、1957年生まれで、わたしと世代的にはそれほど差はない。3氏には『現代思想の冒険者たち20・レヴィ=ストロース』(渡辺公三、講談社)、『闘うレヴィ=ストロース』(渡辺公三、平凡社新書)『レヴィ=ストロース入門』(小田亮 ちくま新書)、『レヴィ=ストロース斜め読み』(出口顕、青弓社)といった著作がある。どれも読みやすい本なのでこの機会にぜひ手にとってほしい。
レヴィ=ストロースが構造主義との関係で日本に紹介されるときに、頻繁に引用されたのがオイディプス神話についての彼の解釈であった。『構造人類学』に収められている短い文章で、構造言語学との関係もわかりやすい。また、この神話をめぐる解釈については、内外でも多くの議論を生みだしている。しかし、こと人類学に限って言うと、最初の震源は『親族の基本構造』(以下『基本構造』)であった。
ここでは、主として文化人類学の領域で、レヴィ=ストロースがはたした役割を位置づけ、いま再びかれの考えに接することの意義を文献の紹介を兼ねながら考えてみたい。
世代的に考えると、レヴィ=ストロースが研究上重要な意味を持つのは、たぶんわたしより1世代上の年代であろう。しかし、日本の文化人類学界で構造主義3羽ガラスと称される渡辺公三(立命館大学)、小田亮(成城大学)、出口顕(島根大学)の3氏は、それぞれ1949年、1954年、1957年生まれで、わたしと世代的にはそれほど差はない。3氏には『現代思想の冒険者たち20・レヴィ=ストロース』(渡辺公三、講談社)、『闘うレヴィ=ストロース』(渡辺公三、平凡社新書)『レヴィ=ストロース入門』(小田亮 ちくま新書)、『レヴィ=ストロース斜め読み』(出口顕、青弓社)といった著作がある。どれも読みやすい本なのでこの機会にぜひ手にとってほしい。
レヴィ=ストロースが構造主義との関係で日本に紹介されるときに、頻繁に引用されたのがオイディプス神話についての彼の解釈であった。『構造人類学』に収められている短い文章で、構造言語学との関係もわかりやすい。また、この神話をめぐる解釈については、内外でも多くの議論を生みだしている。しかし、こと人類学に限って言うと、最初の震源は『親族の基本構造』(以下『基本構造』)であった。