〈「5年条項」私の視点〉 松久寛 工学研究科教授(2009.10.16)

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昨年末は派遣切りが世間の注目を集めた。必死で労働者を守ろうと努力している中小企業もあったが、多くの大企業は派遣社員にたいして解雇するか再契約の中止をした。そこには、不景気で仕事が無いという現実もあったが、企業の身勝手さが非難された。しかし、京大の雇い止めは、仕事と金があっても、5年で切られるのである。単に、長期間雇用を続けると、解雇できなくなる可能性があるので、早めに解雇しようという論理である。どちらが、より悪質か。

そもそも、だれでも安定した生活を送りたいものである。日本では、最大の安定が正社員である.労働法は弱い立場の労働者を守るためにできたものであり,派遣労働が制限されるのは、より多くの人を正社員化するためではないか。京大では、これまで多くの雇い止めの問題点が指摘されてきた。ここで、ある有期非常勤職員から別の視点が出された。すなわち、彼女は『離婚後の子供の親権争いになりそうである。しかし、裁判では、後2年で解雇されるとなると、収入が不安定とされ、親権は得られないかもしれない』と心配している。このように、日本社会が正社員だけが親権を与えられるにふさわしい人間であるとしているのなら、全労働者を正社員にする努力を、全ての職場がするべきである.仮に、有期雇用契約を認めるとしても、それは臨時的・季節的業務だけに限定するべきであり、その時間当たりの賃金は同じ業務を行う正社員と同等にすべきである。世界的にも、『同一労働同一賃金、有期雇用契約は臨時的・季節的業務に限定』が求められている。

また、ある人は、「採用時に契約書にサインしたのだから、仕方がないでしょう」という。しかし、採用されたいという人の弱みにつけ込んでの契約であり,これが雇い止の錦の御旗になるのか、疑問である。個人の契約であっても,高利貸しの違法金利と同じように、法律に違反した物は無効である。法律であっても、上位概念の憲法に違反した物は無効である。さらに、その上に倫理があるのではないか。大学こそ倫理を基準に行動してもらいたいものである。従業員の生活を守るというのは、倫理以前の当たり前のことかもしれない。日本のみならず世界の規範となる雇用制度を示してもらいたいものである。

(まつひさ・ひろし氏は、工学研究科教授)

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