ただいま交渉継続中 吉田寮「新A棟」(2009.10.16)

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10月2日の昼休み、小雨がぱらつく中、京大のシンボルとも言えるクスノキ前にテントが出現。吉田寮生ら学生有志がアピール活動を行なった。目的はこの日行われる予定の西村副学長との吉田寮新A棟をめぐる折衝にひとりでも多くの学生を呼ぶためだ。「西村副学長はいい加減なこと言うな!」などシュプレヒコールを飛ばした。

この春から既に半年が経過した吉田寮をめぐる話し合いだが、今何が起こっているのだろうか。(魚)

● 吉田寮新A棟とは

話しの発端は4月20日、京大当局が「吉田南構内最南部再整備方針(案)」を吉田寮自治会に提示したことから始まる。計画はメディアセンター南館に隣接する現テニスコートに国際交流拠点施設を建設する他、「焼け跡」と現吉田寮食堂の場所に吉田寮新A棟、現在の吉田寮の位置には吉田寮新B棟を建設する、といった現吉田寮の将来に大きく関わるもの。その後24日に大学当局は説明会を開き、その場で整備案はあくまでも素案であることを確認。吉田寮新棟については寮自治会と大学当局の間で話し合いを続けることが決まった。寮自治会にとっても、築97年目を迎える現吉田寮建物の老朽化対策、および旧西寮(※)のキャパシティ回復は長年の懸案事項だった。5月18日に開かれた折衝の場では吉田寮新A棟の建設と現吉田寮の老朽化対策は分けて考える。等の確認がなされた。

● 予算をめぐるドタバタ

西村副学長は当初、新A棟の建設予算を国の予算で確保するために、6月までの合意を寮自治会に求めていた。自治会側も連日の協議を重ねこれに対応していたが、結局文部科学省と西村副学長の協議の中で、概算請求をしても認められる可能性がほぼ無いことが分かり、改めて年内の合意を目指して話し合いを続けることになった。

そうした矢先の7月29日、吉田寮自治会との折衝で西村副学長は新A棟の学内予算申請をしたいと発言。つづく9月7日の折衝では、寮自治会側から何と言われようとも9月8日、つまり翌日の部局長会議に予算申請をするとした。ここで注目すべきことは7月の折衝では「予算は一度通るとひっくり返すのが大変」と言いながら「予算はいつでも撤回可能である」と180度異なる発言をした点である。更にこの場で西村副学長は「新A棟は吉田寮とは別の施設なのだから必ずしも寮自治会の同意は必要ない」と、これまでの前提をひっくり返す発言をした。同席していた川添第三小委員長(※)からは「自治と命どっちが大事なんだ」と恫喝まがいの発言まで飛び出した。

9月30日の情報公開連絡会(※)では、既に8月31日の役員会で吉田寮建て替え予算について議題にしており、9月8日の部局長会議では単に「報告」事項として扱ったことを明らかになった。つまり折衝の場で西村副学長は虚偽の説明をしていたのだ。

予算は学内アクションプランとして吉田寮建て替えに用途を定めた上でなら、次期以降に繰り越しができる。だから暫定的に建て替え予算と決めておきたい、というのが西村副学長の説明である。しかし撤回は出来ると言っても、一度予算を確保して「建て替え」を既成事実化することで寮生との合意が無いまま当局が建設を進める可能性は十分にある。しかも部局長会議での検討を回避し、役員会で何らかの決定が既に行われたのではないか。こうした懸念が寮自治会に生じた。こうしたゴタゴタにより新寮についての具体的な話し合いがほとんど出来ない状態が続いた。

● アンケートをめぐる騒動

8月13日、吉田寮自治会に学生センターから「学生生活実態調査に新寮についての項目を入れたい」との連絡があった。この実態調査は学生センターが2年に一度京大に在籍する全学生を対象に取られるものだが、突然寮に関する項目が入ることに。寮自治会はアンケートに基づく「世論」によって寮自治会の主張を圧殺する道具にするのではないかと懸念。西村副学長に抗議をし、結局これは撤回された。

● 松本総長の発言

9月25日、松本総長は報道陣向けの懇談会で、建設をめぐって話し合いが続けられている吉田寮新A棟について「青写真も出来上がり、正式な決定ではないがほぼ決定している」と発言した。実際の交渉状況を無視した発言は、建設の既成事実化になりかねない。

● 大荒れとなった折衝

10月2日、新吉田寮A棟を巡る折衝が文学部東館学生センター小会議室で行われた。当初は10月1日に持たれる予定だったが、当日学生センターから寮自治会に西村副学長は「体調不良」で話し合いができないという連絡が来たのだ。その日のうちに寮自治会は一時間に渡る追及行動に出て、副学長とのコンタクトを取った結果開催が決まったのがこの日の折衝である。寮自治会がここまでの行動に出たのは、2日の金曜日に折衝の場を持たなければ、週明けの5日に開かれる役員会でまた西村副学長が自治会への説明なしに吉田寮関連の議題を出す可能性があると判断したからである。当日に折衝をPRするアピールが開かれたのは前述したとおり。

折衝では建て替えについての具体的な話はほとんどなされず、もっぱらこの間の西村副学長による「予算」問題の追及に終わった。学内手続きの不透明さ等で西村副学長が糾弾される場面が多々あった。副学長にとって予算を確保するだけでここまで寮生らから反発を受けるのは予想外のことだった。結局年内で寮自治会と一定の合意が見られない場合は予算を撤回すること、松本総長の発言についてはあくまで「希望的観測」を語ったものらしいこと、そして5日の役員会には吉田寮関連議題は出さないことが確認された。

● 14時間を超えた団体交渉

10月8日、文学部新館第三講義室にて吉田寮自治会と西村副学長との団体交渉が行われた。この交渉の目的は、寮自治会と大学当局の関係を規定する文書である「確約」を締結するためのもの。確約をめぐる交渉自体は西村副学長が就任した昨年11月より続けられていたが難航しこの日まで至っていた。この日も改めて問題になったのは「大学当局は吉田寮の運営について一方的な決定を行わず、吉田寮自治会と話し合い、合意の上決定する。また、吉田寮が団体交渉を希望した場合はそれに応じる」という条項1。西村副学長側はこれまでの交渉の中で「やはり京大全体のことに責任を持って考える部署として、(大学当局の側が)最終的に決定権を持っていたという形ではないと困る」と拒否してきた。建て替え問題が浮上している今この条項が無ければ大学当局が寮自治会の意に沿わなくとも新寮建設を強行する可能性があると寮自治会は考え、確約が締結されるまでは新A棟についての具体的な交渉には進めないというスタンスをとった。

両者の交渉は夜を跨いで長引き、結局条項1は一般条項として残した上で「吉田寮自治会と副学長西村周三は新寮・新規寮(※)の建設と現吉田寮の老朽化対策について誠意を持って合意を形成する努力を行う」との条項を追加することで翌朝8時40分に合意を見た。交渉は18時すぎから始まり、実に14時間半のすえ帰結した。

● 今後はいかに

今後は年内の合意を目指し、新A棟の具体的な形態について話し合いがなされるものとみられるが、今まで以上に難航が予想される主なネックとして、現在月400円の寄宿料が維持されるのか否か、寮生だけではなく多様な学生の課外活動スペースとして利用されてきた寮食堂の存廃がある。食堂問題については使用者団体が食堂を取り壊さなくとも新A棟の建設は可能とする意見書を提出しており、当局側の回答が待たれるところ。また大学当局が原則として2年間の在寮期限を提示してきたのは「あくまでも原則であり、空キャパシティが出た際や経済状態を考慮した上での例外を設けることで柔軟に対応できる」と西村副学長は説明するが、吉田寮自治会にとは長年行ってきた入退寮選考権に対する介入であると考えている。これも紛糾するだろう。 
 いずれにせよ8日のような夜を徹した交渉が連続することは間違いない。



旧西寮 現薬学部構内にあった寮建物。1988年に解体・撤去され、その分のキャパシティが失われた。 

第三小委員会 学生部委員会の下に設けられた、学寮について検討する委員会。教員で構成される。寮自治会は通常副学長との団体交渉をする前に、第三小委員会の委員長と細かな点に着いて折衝を行う慣例になっている。今回は新寮建設という重大な問題も絡んでいるため、折衝の場から副学長が出席している。

情報公開連絡会 副学長が学生に対して、部局長会議の議題等、学内の情報を報告する場。

新寮・新規寮 吉田寮自治会は、吉田寮の新棟を「新寮」、京大に存在する4寮(吉田、熊野、女子、室町)以外に建設される寮を「新規寮」と呼び区別している。

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