辞職理由は「不適切な関係」 制度・情報公開のあり方に疑念(2009.10.01)

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総務部広報課は9月16日、「学生との不適切な関係」に起因して京大の教員が辞職したと発表した。大学は当該教員の所属部局や性別、辞職した時期などを一切公表していない。一連の対応に一般紙からも「甘い姿勢が浮き彫りになった」と批判が出ている。(義・魚・ぞ)

今回の発表は「京都大学の教員が学生と不適切な関係があったとの学生からの申し出により、当該部局で調査し、大学として懲戒手続きに関する審議を進めていたところ、この教員が大学教員として問題があったことを認めて反省し、退職金を放棄したうえ、辞職した」という、報道各社へのFAX1枚で、記者会見などはなかった。

「懲戒処分の手続きに関する審議が進められていようとしているなか、なぜ辞職を認めたのか」という本紙の問い合せに対し、広報課は「辞職通告が出された後2週間で辞職の効力が発生するという民法の規程による」と回答。また、当該教員が反省したと判断した理由について「(当該教員は)辞職通知書の中で当該部局で議決された内容、経緯について、その全てに納得している訳ではないが、大学教員としては、問題があったことについて、これを真摯に受けとめて反省している旨述べている」と回答した。

しかし大学は、把握している事実関係はおろか当該教員の所属部局、申し出があった時期、審議の経過等についてこれまで一切明らかにしておらず、学生の申し出が唯一担保されうる対応体系、すなわち「申し出から調査、上申、懲戒審査にいたる手続きの仕組み」が機能したのかについては、依然として不透明なままだ。これらの情報公開を求める本紙からの質問に対し、大学は「被害者を特定される恐れがあるので回答できない」としている。しかし、過去に懲戒処分に至った場合には、同様の理由で当該教員の実名は伏せるものの、所属部局や調査の経過は公表している。こうした前例に照らしてみても、ここまで情報を伏せる大学の対応には疑問が残る。

一般論として、京大でハラスメント被害などの申し立てが学生から相談窓口に寄せられ、当該部局の人権委員会が調査に当たる場合、当事者双方への事情聴取を含めた事実関係の調査ののち、部局長および人権担当理事に報告がされる。調査結果を受けて当該部局の部局長又は人権担当理事は「必要な措置を講じる」とされている。この段階で、懲戒処分が適当と考えられる場合には懲戒手続きが始められることになる。懲戒が適当とされた教職員に関して、所属部局の部局長は総長に対して、懲戒根拠資料と処分の量定に関する意見を添えて総長に審議申し立てをする。この上申を受けて総長は、懲戒相当の対象が教員の場合は教育研究評議会において審議に附し、最終的に懲戒処分を下すことになる。

今回の場合、京大はハラスメントとは明言していないが、同様の手続きがとられたことは総長懇談会での総長の発言などから明らかになっている。9月8日の部局長会議で懲戒処分の上申に関する報告がされていることから、遅くともこれ以前に当該部局レベルでは処分根拠資料、および処分の量定に関する意見を固め、総長に上申していたことが推測される。本案件が部局において調査をし、これを受けての懲戒手続きを進めようとするに至っていることから、少なくとも問題となった事案自体が懲戒理由に相当する事態であったと当該部局が裁定したことは確かだ。大学はこうした事態を「不適切な関係」とまとめて表現している。

今回の事件がハラスメントであったかどうかは不明である。しかしハラスメントに対する制度に欠陥があることを浮き彫りにしたことは間違いない。仮に今後学内でハラスメントと認定される問題が起こった際でも、加害者側が懲戒処分を受けることを回避する「抜け道」として自ら大学を辞することが続発する恐れがあることを露呈した。ハラスメント事件を起こしたとしても、加害者は何ら経歴に傷を付けないで転学・転職が可能である、ということだ。

たとえ今回の「不適切な関係」がハラスメントではなかったとしても、そして当該教員がもはや大学にいないとはいっても、今後のためにこの問題について事後の検証が行われるべきであろう。

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