〈生協ベストセラー〉 渡部泰明・著『和歌とは何か』(岩波新書)―演技する和歌―(2009.10.01)

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本書は「和歌は、取っ付きにくい、縁遠い」と感じる人々の立場に立ち、和歌を縁遠いと感じさせるレトリックを「演技」という視点で読み解いていくものである。

第一部では、和歌を縁遠いと感じさせるレトリックから、第二部では、和歌が詠まれる「場」から和歌を解説。最後に和歌を生きるということはどういうことであるかを述べる。

第一部は、5つのレトリックを解説し、「宿命的な関係を表す言葉」の機能を果たす「縁語」というレトリックについては、伊勢物語の中で有名な「かきつばた」の歌を例にあげ、歌がどのように作られていったかという例を見せてくれる。手法としてまず、五七五七七の頭に「かきつばた」の文字を1文字ずつ配置し、縁語を手がかりにしてクロスワードのように言葉を埋めていくというもの。言葉がぴたりと三十一文字におさまるという偶然性、そしてこの和歌はこうなるべくして成ったという運命性をも感じることができるという。

結果、5つのレトリックのいずれかを使うことによって運命性、必然性などの関係性が生まれ、さらに和歌を詠みあげる際の「声」によって、和歌自体に儀礼的な空間が発生。その儀礼性から筆者は、演技性を感じることが出来ないかと提示する。

第二部では、屏風絵などの祝いの場で和歌が読まれたことから和歌自体が儀礼性をもっており、第一部とは逆に和歌がどのような関係性を生み出すのかということを解説する。

和歌を詠む「場」では、和歌に詠み込んだ気持ちを人々に理解してもらうため、気持ちを「社会化」することが必要だったという。そのため和歌の工夫とは、自分を「社会化」するという努力であり、歌を読む事自体が精神修養になっていったと語る。

最後に、俵万智氏の短歌制作エピソード、「この味がいいね」と実際に褒められたのはカレー味の唐揚げであったが、あのとき自分が感じた思いを正しく伝えるため、推敲して今のように変えたという出来事を取りあげる。そこから、現実の世界の「現実の作者」、言葉で描かれた世界の「歌の中での作者」、そしてその両者の世界が重なり合う部分に「歌を作る作者」の存在を提示する。その「歌を作る作者」こそが、現実と虚構(理想)が重なり合うところに存在し、演技をしている存在であるとした。そして、レトリックは「歌を作る作者」を「歌の中の作者」に変える役割を果たすと語った。和歌を読み解く際に、演技する視点を持ち込むことによって、その和歌の演じ方、制作過程にまで目を向けることでより和歌を楽しめるということに気付かせてくれた本であった。(碧)

《本紙に写真掲載》

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