苦学生、理想と現実 ~奨学金での生活~(2009.09.16)

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テレビで誰かが言っていた。「今の若者はいくつになっても親の脛をかじって、学費ぐらい自分で払ったらどうなんだ」

講義でいつだか教員が言っていた。「近頃の学生はバイトばっかりして遊んでいる」

どちらもいや、ごもっとも。20歳前後にもなって親から年間いったいいくらもらっているんだか。その割には勉強もせずバイトばっかりで稼いだお金は遊びに消える。学生の本分を何だと思っているんだ。

親の金に頼ることなく、また遊ぶ金欲しさにバイトにかまけたりもせず、ただひたすらに勉強に打ち込む。これこそが学生のあるべき姿だろう。

というわけで有利子貸与でもらえる第二種奨学金月額12万で、学費生活費を捻出できるかを考えてみた。これから大学を目指す人たちの参考になれば幸いである。

ヨーロッパでは原則学費もタダで奨学金も給付だとか、親の年収が一定以上あれば奨学金はもらえないだとか、そういうことは言ってはいけない。これは、これは、精神性の問題なのだ。(編集部)

住宅

一人暮らしを始めるにあたって、まず決めないといけないのが住むところだ。ここでは京大生の住宅事情と、設備の違いによる価格の変化を解説していく。

大学で一人暮らしを始めるまで、おそらくは多くの人は、家というものは風呂とトイレは別の空間にあるのが当然であり、キッチンはコンロが3口あり、洗濯機というものはあって当然の家具だと考えているのではないだろうか。

だが、それらは一億総中流や住宅神話のごとく全くの幻想に過ぎない。いざ、自分が住む部屋を探すにあたって、そのことを痛感することになるのだ。もっとも、お金さえあればその限りではなく、幻想の中で生き続けることが出来る。

あくまでざっとでしかないが、もしあなたが5万後半から6万円以上の家賃を支払うことが出来るなら、幻想の中で生き続けることは可能である。部屋はこぎれいで、トイレと風呂は別の空間にあり、キッチンはコンロ3口でうまくすればオーブンなんかもついているかもしれない、洗濯機も室内に設置できるだろう。1年の家賃だけで70万前後ということになるので、幻想の値段は安くない。

家賃が5万を切ると、幻想は少しずつ、しかし着実に崩れ始める。風呂とトイレはいわゆるユニットバスとなり、洗濯機は屋外に出ていきその後コインランドリーという名の下に自分の専有物ですらなくなる。キッチンはオーブンや魚焼きグリルなどはおろか、3口のコンロすらままならなくなる。「スパゲッティをゆでている間に、フライパンでニンニクを炒め・・・」なんてレシピは絵空事と化す。

しかし、それでもまだ、あなたが3〜4万前後の家賃を払っていけるならば、形の崩れた幻想が視界を遮り、現実を直視せずに済むだろう。そこから下にいけば現実そのものが見えてくる。トイレ・風呂・キッチンは自室になく、共同のトイレ、コインシャワー、銭湯、共同のキッチンなどを利用することになる。こういう部屋は業者の作る住宅パンフレットのモデル的な一人暮らし生活を見ても載っていない(そもそもそこには御菓子の家レベルの幻想しか載っていない)。そこでの生活を想像する際は、それらしい人に聞くか、京大卒の作家・森見登美彦氏の小説でも読むことを御勧めする。

だが、現実の値段は安い。何一つえり好みすることなく、部屋さえあればいいという態度を貫くことが出来れば、1万前後の家賃でも部屋は見つかる。年間で12万という値段を考えれば、決してない選択肢でもないだろう。(町)

食事


一人暮らしの家計で家賃に次いで大きな位置を占めるのが、食費である。節約するといっても生きていく以上極端に低くおさえることは難しい。が、一方で、自身で最もコントロールのきく部門でもある。ここでは各種の食事方法の特徴をおさえるとともに、出来る限り食費を低くするための一モデルを提示しよう。

○自炊

安くすませたいのならやはり自炊。重要となるのは広告とタイムサービス。どの野菜、あるいは肉が安いかで考えうるメニューもかわってくる。うちにある残りの野菜とも相談しつつメニューを決定しよう。安さを考えると何日にもわたって活用できる料理がおすすめ。「カレー→薄めたカレー→麺つゆとうどんをくわえてカレーうどん」のパターンや、特に冬、おかずとして食した後、麺、うどん、ごはんを入れるなど、第2、第3の楽しみ方が可能な一人鍋は基本としておさえておきたい。一食200~400円相当でおさめることができる。

○学内食堂etc

京大生協では所属学部によって南部、吉田、中央、北部、桂などで昼食をとるのが一般的。東大路通りをはさんで西部構内にあるルネは19時以降、各部・サークルなどで賑わう。メニュー・値段は大体において同じでおおむね300~500円で十分楽しめるが、北へ行くほどおいしいという評判も。特にルネではオムライスフェア、七大戦フェアなどで、期間限定の特別メニューが現われる。正門横のカンフォーラはちょっと高めのレストラン、総長カレーなどが有名。時計台のラ・トゥールはほぼ外部からくる人向けでなかなか学生身分では手はだせない。同志社、他大学の生協の食堂をのぞいてみてもいいかも。

○炊き出し

一人で食べるより、大人数でシェアした方が大体の場合安くあがるし、料理・食事の時間も楽しめるというもの。クラス、サークルなどの仲間とともに食卓をかこもう。基本はやはり鍋もので、ほか、カレー、シチューなどの定番ものが作りやすく、衝突も少ない。テーマを設定しても面白く、言わずと知れた餃子パーティー(いわゆるギョザパ)のほか、季節によっては、夏のバーベキュー大会、秋のさんまパーティー、冬の芋煮会なども考えられる。人数にもよるが、一人あたり200〜300円でおさえることもでき、その割に満足感は大きいものとなろう。


○外食

百万遍周辺なら600~700円で十分満足いく食事ができる。ラーメン、ハンバーグ、各種定食なんでもござれ。ごはんおかわり自由のところも多い。学生街の強みを生かして、たまには贅沢もいいかも。飲み会になると予算は大体2500~3500円。クーポンを活用しよう。

◆一つの「苦学生」モデル

ひもじくとも栄養をそれなりにとり、大学生活をも満喫する一方法。

毎月1日、もやしを大量にかいこみ、肉をグレース田中で買い込み冷凍庫へ。以後、夕食はごはんともやし野菜炒めでしのぐ。醤油、塩、塩コショウ、みりん、砂糖などの組み合わせをかえて、せめて味付けにはバリエーションを。気分と場合によってはカップ麺など200~300円で済ませられるものを併用する。飲み物は麦茶のパックで詰め替えを。一つにつき容器2回分いける。夏はむやみに飲料水を買わず、氷をフル活用しよう。朝は夕食ののこりか、食パンを大量に保管。もちろんチーズ、ジャム等は最低限必要。昼はごはんを炊いておにぎりに。具は梅干し、ひじき、しゃけフレークなどがお得、あるいは具なし。週に一度食堂や炊き出しで野菜・魚を摂取し、月に一度はご褒美がわりにサークルやバイト、あるいはゼミの飲み会に顔をだすなりしてアルコールを摂取しよう。

一か月総計食費例(調味料代など含まず)
 白米35合: (実家から送付につき無料)
 もやし10袋: 1200円
 豚肉細切れ800g: 700円
 カップ麺5個: 1200円
 食パン24(6×4)切れ: 1000円
 チーズ2袋: 300円
 バター1/4箱: 120円
 ジャム1/2瓶: 300円
 食堂4食: 2000円
 炊き出し代金: 800円
 飲み会: 3000円
計: 10620円(1日あたり約350円!)

これで一人暮らしの食生活はばっちりですね。(義)

もやしっこの豆知識

私たちの支出の多くを占める食費。これを切り詰めるのは並大抵のことではない。しかし、真の貧乏生活を極めるには、生物としての生存本能という大きな壁を乗り越えなければならないのだ。そこで登場するのが『もやし』、別名『学生の友』である。

もやしは非常に安価で、しかもミネラル、ビタミン、食物繊維を多く含み、高栄養価な食材と言える。さらに、たいして味がないので様々な料理に使えるのも魅力だ。ラーメン、豚汁、焼きそば等々、もやしが活躍する場面は枚挙にいとまがない。昨今では、手の込んだ料理も多い。

しかし、サークルやバイトなど、大学生は世間の人々が思うよりもけっこう忙しい。料理をする時間がないことも多々ある。そこで、簡単でそれなりに美味な一品を紹介しよう。

題して、『麻婆もやし』である。といっても、スーパーのもやしコーナーの端っこにチョコンと添えられた、『麻婆もやしの素』を使ってはいけない。中華料理コーナーにある、『お徳用麻婆豆腐の素』を使うのだ。同じ麻婆なのだから、大きな違いはない。ひき肉入りを買えば、ちょっと贅沢な気分も味わえる。しかし、当然のことながらもやしだけではボリュームに大きな不安が残る。健全な大学生なら、深夜に空腹でのたうちまわること必須だ。そのせいでコンビニに夜食を買いに走る羽目になっては本末転倒だ。そこでもう一人の学生の友、『豆腐』が登場する。「もはや麻婆豆腐」とか言わないように。豆腐はもやしにはない栄養素、タンパク質を補ってくれるのだ。

さて、実際に作る段であるが、もやしを洗い、豆腐を切って、鍋で10分ほど煮れば完成である。しかもこの麻婆もやし、麻婆豆腐の素の分量上、一度に3人前作ることになるので、1食75円程度でできる。料理ができない時のために、残った分は冷凍保存しておくべし。この麻婆もやし、値段、調理時間、保存と、考え抜かれた料理なのである。(書)

勉強

学生の本分は勉強。勉強をするには書物が必要なわけだが、学術書も一様ではない。必須アイテム「教科書」をはじめとして、「参考書」「辞書」「六法全書」等々、学究生活を戦い抜くには、様々な装備が必要だ。

まず「教科書」。RPGゲームなら武器といったところか。講義で教科書が指定されれば、それに沿って講義が進められる。ただし、学部や回生によってその意味合いは異なる。基本的に、教養課程の人文・社会系科目で「教科書」と称するものは、大概、「教科書」という名の皮を被った「参考書」なので注意しよう。参考として読む分には面白いが、5千円分買わされて教員を逆恨みするという悲劇も例年のこと。理系科目では、大学受験で言うところの「問題集」を買うことになる。これは必須だろう。

学部を基準にすると、文・経済など、文系学部では、教科書はレポートのネタぐらいにしかならない。普段から読むにしても、1回読めば後は本棚の「誇り」に化する、という意味では、図書館の利用をお勧めする。対して、理・工などの理系学部では、スキル習得の意味から、割とメジャーな体系書の所持を迫られる。数学や物理・化学では、一定のレベルまで共通の素養習得が目指されるので、基本書はそろえておきたいところ。法・医は別格。法はまともに買って、半期2万円。判例集、六法は必携アイテム。ある法学部教授いわく、「六法は武士の刀。講義に六法をもってこないのは論外。講義が始まって六法が開いていないのは、武士が刀を抜かないようなもので、バッサバッサ斬られるのであります」とのこと。他学部と違うのは、難解な基本書を制覇しないことには単位に結びつかないところ。半期5冊ほどの教科書と格闘することになります。古本で済ませて、後で見たら法令改正されていたなどという悲劇に注意。医学部は洋書中心で、1冊1万円レベル。先輩から受け継ぐのが上策だが、教科書を集めるのに脱落して、単位もドロップアウトしていく学生も少なからずいるとか。総じて資格への道のりは遠い。

「参考書」。下宿の本棚を飾るためのもの。知識を補充する回復アイテムではあるが、ピンキリあるので、貧乏学生には奢侈品であることは認識しておこう。またある法学部教授によれば、「判例六法はきちんと上下巻揃えないとだめです。なぜなら、2冊ないと枕にできませんから」。

問題は、各アイテムをどう手に入れるかだが、特に教科書を図書館頼みにすると、同じことを考える輩に向こう1か月予約を入れられる恐れがある。なるべく教科書は手元に置いて、参考書を読みあさるのが望ましいが、裏ワザとして各学部図書館を頻繁に利用すると、メジャーな教科書は複数置いてあるところもある。京大には教養書を中心とした人環・総人図書館と附属図書館だけでなく、専門書を中心とした学部図書館がある。またある教授によれば、「人環・付属はハコ。眠るのにでも使ってください」ということなので、複数ある図書館の活用法は学生生活を深く規定する。ちなみに、京大内だけでなく、左京・府立図書館など、学外の公民図書館も活用できることも知っておきたい。空調がエコなのが玉に瑕だが、他では見れない史料がポンと置いてあったりする。

とはいっても、教科書ぐらいは手元に置いておきたいところ。専門課程の基礎情報が詰まった基本書は、拡張された頭脳であり、何度も繰って頁を黒くしていくのが勉強の指標にもなる。大学の教科書のような学術書は、なかなか手に入らないところ、生協では確実に割引で手に入る。生協関係者の言では、「近頃の学生はコスト節約に力を入れているよう。必要ページのコピーなどで済ましているのでは」とのこと。確かに、必要経費を減らすには適した方法であるが、読みこんで黒くした分厚い本を枕に、鴨川で寝そべってみるのも一つの気の持ちようというもの。(麒)

総括!

というわけで大学生の一人暮らし生活を概観してきた。

現在年間の学費は53万5800円、1か月単位にすれば4万4650円。

食費は上のモデルケースに従えば1万前後だが、どうにも怪しいところが多い。実際には米も買わなければいけないだろうし、野菜がもやしだけというのはいくらなんでもあんまりだ。1ヶ月2万は必要だろう。

家賃は安いもので1万前後となっているが、都合良く見つかるとは限らない。これも2万と見積もっておく。

そうすると学費食費家賃を差し引いた月の奨学金の残りは3万5千円程度となる。書籍代もばかにならないしPC環境も多少は整えたい事を考えればギリギリのラインだろう。ここに理想的苦学生の生活が完成した。

安い下宿の薄暗い部屋で食費を切り詰め、酒も飲まず、友の誘いも断り、1人ひたすら図書館で借りてきた本に向かう。卒業後は奨学金という名の500万近い借金を誰に頼ることなく立派に返済する。

きっとその先には輝かしい未来が待っているに違いない。例え現実はそうとは限らないとしても、そうなると信じなければやってはいけない。卒業後の救済を信じ、何の潤いもない苦しい生活を送るのだ。苦学生の生活とは死後の救済を信じる敬虔なピューリタンの信仰生活に近い。


《本紙に写真掲載》

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