深化するイスラム社会の課題・可能性を探る 「イスラーム地域研究」公開講演(2009.08.01)

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7月11日、京都大学百周年記念ホールにて公開講演会「グローバル・イスラームーその拡大と深化を追う」(主催:人間文化研究機構(NIHU)プログラム「イスラーム地域研究」)が開催された。京都、早稲田、東京、上智の各大学と東洋文庫の5拠点によるネットワーク研究の同プログラムでは、各拠点の持ち回りで毎年合同集会を行っている。今年度は京都大学の担当で、成果を広く一般にも公開しようと、この日の講演会が行われた。

小杉泰アジア・アフリカ地域研究研究科教授による京都大学イスラーム地域研究センターの紹介の後、4名によるリレー形式の講演会が行なわれた。

東長靖・京都大学准教授 が「スーフィズムについて」と題し、世界(外面)と自己(内面)との合一を求めるスーフィズムの潮流について話し、中央アジアや東南アジアなど地域を超えたスーフィズム教団のネットワークが存在しているとした。次に各地のイスラーム教徒の行事の映像を流しながら、土着の風習と共存する多様なイスラームのあり方について述べた。

次に坂井信三・南山大学教授が「現代西アフリカの社会とイスラーム」と題して、セネガルとナイジェリアを比較。前者はイスラームが政治と分離しつつも、グローバルな資本主義の支配に対して貧困国の国民がとる独自の抵抗手段となり大きな力を持っている社会であるとし、スーフィズム教団が所有する土地の中に数十万人単位の都市が存在し教育など社会保障機能を担っている実態を解説。一方後者は北部のイスラームと南部のキリスト教という異なる地域を植民地化の過程で一つの国家にしたことから、独立後も宗教間対立がナーバスな問題であるとし、2000年以降、北部州へのイスラーム法導入をめぐっての紛争で死者が多数出た他、婚外子を出産した女性に対し石打ちの刑が下された一件を例に取り、イスラーム的な政治文化とグローバルな潮流としての人権、女性の権利とを如何に調和させるかが課題であると述べた。

続いて武藤幸治・立命館アジア太平洋大学教授は「なぜイスラーム金融は成長するか」と題し、イスラーム金融について概説した後、金融バブルに強いといわれてきたイスラーム金融の経営が、昨年以降の実体経済の世界的な冷え込みの中で悪化している現状を報告。イスラーム金融の今後について、コストや価格競争力では通常金融商品に太刀打ちできないが、預金者が求めているのは金銭的リターンだけではないので、通常の金融と相互補完的関係になるだろうと述べた。

最後に保坂修二・近畿大学国際人文科学研究所教授が、「自爆か殉教か―現代の聖戦」を発表。まず自爆攻撃についてはイスラーム世界でも様々な解釈が存在することを強調した。そして貧困・社会に絶望しての自爆死という一般的なイメージとは裏腹に、わざわざ外国から「志願者」の若者をリクルートし、アフガニスタンやイラクなどで自爆をさせる極めて組織的な「自爆攻撃システム」が構築されていると論じた。また、自爆志願者のメッセージが映画ばりの演出でなされるウェブサイトがインターネット上に溢れる現状を紹介し、今や自爆攻撃は「劇場化」していると語った。 

いずれの発表も白熱し予定時刻を40分もオーバー。今回の講演会は、我々が普段知ることの無いイスラームの多様性・奥深さを知る貴重な機会となった事は間違いないだろう。

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