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iPS細胞新発表―iPS細胞株の安全性、採取部位で異なる 山中教授らの研究グループ

2009.08.12

山中教授と岡野栄之教授(慶応大医学部)をはじめとする共同研究グループは、マウスⅰPS細胞の株(元になる体細胞)の種類によって、それを移植したマウスの脳に腫瘍(しゅよう)が発生する確率やメカニズムに違いがあることを突き止めた。

これにより、移植後の細胞に腫瘍のできる可能性を減らし、ⅰPS細胞の応用を実現させるためには、ⅰPS細胞株の安全性を一つずつ厳格に評価する方法が必要であるということが示された。現在世界中の研究者が様々な種類の導入遺伝子や体細胞を用いてⅰPS細胞の樹立に成功しているが、その中から移植安全性の高いものを選抜しなくてはならないという。

この共同研究は世界的にも大規模な研究。マウスの胎児の皮膚や大人のしっぽ、胃、肝臓にある細胞にそれぞれ「4転写因子(山中4因子)」と呼ばれる遺伝子のうち、4つまたは、活性化により腫瘍の原因になると思われる遺伝子を除いた3つの遺伝子を導入したりして、計36種類のⅰPS細胞をつくった。そのⅰPS細胞を分化誘導させて神経細胞のかたまり(ニューロスフィア)としたものを免疫不全マウスの脳へ移植。その結果、マウスの胃や胎児の皮膚を材料とするニューロスフィアを移植されたマウスには腫瘍がほとんどできなかったが、肝臓からでは一部のマウスに、しっぽからでは多くのマウスに腫瘍が発生した。また腫瘍の原因と思われる遺伝子は、今回活性化しなかったので、この移植試験では腫瘍のできる確率に関与していないことも分かった。

この共同研究は、7月9日に科学誌『ネイチャーバイオテクノロジー』で論文「安全性におけるⅰPS細胞株の多様性」として発表された。また山中教授はCⅰRA(サイラ)のメンバーとともに7月8日から11日までスペインのバルセロナで開かれた国際幹細胞学会(ISSCR)に参加し、この成果などを報告。論文の発表についての会見もこの会場で行われた。

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