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iPS細胞新発表―山中教授、ほぼすべての体細胞がⅰPSになる仮説を支持

2009.08.12

山中教授は、英科学誌『ネイチャー』の7月2日号に総説「ⅰPS細胞樹立を考察するエリートモデルと確率モデル」を発表した。

この総説でⅰPS細胞の樹立に「ほぼすべての細胞が初期化(分化前のⅰPS細胞になる)される能力をもち、一部の細胞のみが完全な核初期化を起こす」とした「確率モデル」という仮説を支持。現在の技術では、ⅰPS細胞の樹立効率は低く、また多能性の程度の低い細胞が見られるが、「確率モデル」はその説明として矛盾が生じないという。

総説では「確率モデル」の他に「特殊な細胞だけがⅰPS細胞になる」とする「エリートモデル」の仮説を対立させて考察。国内外のこれまでの研究成果から「エリートモデル」には矛盾点があると指摘した。

山中教授の支持する「確率モデル」によると、細胞核の完全な初期化を行うには、導入した遺伝子の制御という技術的に難しい条件が必要。しかし「確率モデル」は初期化の確率を向上させる上で必要となる仮説である。

山中教授は、新薬開発や難病メカニズムの解明といったそれぞれの用途に適したⅰPS細胞の樹立のために、体細胞の由来や樹立方法の多角的評価や、ベストな組合せの検討をして、どの細胞から作ったⅰPS細胞が最も安全であるかを突き止めることが重要だという。

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