夏の読み物 作家・多和田葉子(2009.08.01)

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夏休みを迎える皆に多和田葉子(1960―)の作品を紹介したい。なぜならば彼女の作品は不思議な旅であるから。

早稲田大学を卒業してからドイツで勉強した多和田は日本語とドイツ語で書かれた詩集『Nur wa du bist da ist nichts/ あなたのいるところだけ何もない』(1987・ konkursbuchverslag)でデビューした。1991年に群像新人文学賞、1993年の小説『犬婿入り』(講談社)で芥川賞を受賞した。作品はヨーロッパ、特に今住んでいるドイツでも、多くの賞を受け、多数の言語に翻訳されている。

多和田の小説を旅として感じるのにはいくつかの理由がある。まず第一に、主人公がよく旅行をしている。『容疑者の夜行列車』(2001、青土社)はアジアとヨーロッパの不思議な電車旅行記のような感じがする。または留学中か移民した主人公が多和田の作品によく出て来る。第二に、主人公には親しい所が存在しない。主人公は自分の住んでいる所さえあまり知らないようだ。第三に、主人公は自分の存在についてあまり詳しくない。『Das Bad』の主人公は自分の顔を忘れないために鏡に自分の顔の写真を付ける。この主人公が鱗が体に生えてくると写真の必要性をちょっと分かるようになる。体だけではなく主人公のアイデンティティも曖昧だ。在外にいるから他の文化を経験して自分のアイデンティティに迷っている主人公、または自分の名前を思い出せない主人公(『海に落とした名前』2006、新潮社)。主人公はよくしらない所でシュールな経験をする。

多和田自身は彼女がドイツ語で書いた作品も旅として見る、「母語の外へ出る旅」。この「旅」について多数のエッセーを書いて本にした『エクソフォニー、母語の外へ出る旅』(2003、岩波書店)。外国で住んでいるから日本によく知られてない多和田の小説は、ドイツに興味のある方と言語学者以外の方にとっても面白いと思う。 (々)


《本紙に写真掲載》

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