〈生協ベストセラー〉 サイモン・シン著『宇宙創成』(上・下)ー科学者のたちの「ビックバン」ー(2009.06.16)

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ルネでは、5月の終わりに村上春樹の新作『1Q84』が発売されるやいなやすぐに完売・入荷待ちになるなど、依然として小説ブームではあるが、今回は対照的にスペクタクルな科学ノンフィクションの本を紹介する。

この『宇宙創成』は、『フェルマーの最終定理』『暗号解読』といった世界的傑作を書きあげた科学ジャーナリスト、サイモン・シンの第3作目『ビックバン宇宙論』が文庫化・改題されたものである。科学を愛する多くの読者からこのシリーズは好んで読まれている。

京大に入学した1回生の中には、2か月も経つと勉学に価値を見いだせず、いわゆる「五月・六月病」にさいなまれる者が少なからずいるようである。もちろん、他のことに価値を見出すのもいいことではあるけれども、もしあなたが京大で何を目標としてよいのか悩んでいたり、ここでの学問を志したにも関わらずやる気が起こらないというのであれば、この本はおそらく「特効薬」となるであろう。『宇宙創成』に限らずサイモン・シン書き下ろしの本はいずれも、科学ファンだけでなく、多くの人々が共感できる夢やロマンで埋めつくされている。

第3作目『宇宙創成』では、古代の神話的宇宙観の崩壊から、科学的宇宙論の成立や変化、そして宇宙がいつ、どのようにして始まったのか解明しようとするまさに現在に至るまでの、人類が宇宙の謎や法則を追い求めてきた過程を、有名無名な天才たちの肉迫するドラマにのせて、こと細かに描写してくれる。そして発見につながった科学的手法や観測器具の発達、天才が持った科学観について、分かりやすい例や図表を用いて具体的に説明する。とりわけ、例えばあらゆる天体が地球を中心として回るとする天動説から、地球が宇宙を旅しているという地動説が代わって信じられるようになるような、古い理論から新しい理論へ移るという「パラダイム・シフト」に関する記述や図表が素晴らしい。古い理論を信じ続ける科学者と、新しい理論を作り上げる科学者との熱いバトルにあなたもきっととりつかれるであろう。さらにこの本には有名なアインシュタインやハッブルをはじめ50人は超えると思われる科学者が登場するので、好きな科学者が必ず見つかるはずだ。

さて、もとのタイトルが『ビックバン宇宙論』であり、この本の上巻では宇宙の誕生「ビックバン」の存在に気付くまでの二千年の歴史について述べられ、下巻では「ビックバン」が一般に信じられるようになるまでの20世紀の大論争について取りあげられている。さらに各章の初めや、下巻の付録「科学とは何か」で天文学者や宇宙物理学者をはじめ哲学者や数学者、動物学者や経済学者、SF作家といった人々が科学についてどう考えたかを述べた簡潔な名言が並べられている。  あなたもこの本を読み通してみて、科学者が観測や実験の結果に基づいてより正確な理論の創造をすることに夢みる熱い開拓者であることを感じ取り、学問の「特効薬」ないしは「栄養ドリンク剤」とするはいかがであろうか。(春)

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