企画

〈「5年条項」私の視点〉 宇仁宏幸 経済学研究科教授

2009.06.10

制度(時間雇用職員就業規則)と現実(行き過ぎた定員削減)との間にズレがあるので、制度の見直しが必要と考えます。京都大学の就業規則では、時間雇用職員は補助的業務に従事するものであり、5年を越えて雇用することはできないとされています。この規則を敷衍すれば、5年以上の長期の経験や知識の蓄積が必要な非補助的業務には常勤職員を充てるということになります。したがって、この京都大学の就業規則だけをみると、雇用の非正規化を無節操に進めている多くの企業と比べて、まっとうな考え方に基づいているとわたしは評価します。

しかし、この制度は京都大学の現実に適合していません。常勤職員の定員は法人化前から持続的に削減され、法人化後も病院の看護士を除けば減り続けています。常勤職員が過度に削減された職場では、時間雇用職員を非補助的業務に充てざるをえないという現実があります。今回の教員対象の署名を通じて、このようなケースがかなり多く存在することが明らかになりました。長期の経験や知識の蓄積が求められる業務に就いている時間雇用職員を5年で雇い止めにすることは、業務運営に支障をもたらします。今回の署名では、このような事態を避けるために早く何とかしてほしいという教員の切実な声が多く寄せられました。このようなケースについて、5年雇い止めの例外として扱うことができるように就業規則を見直すことが必要です。

職員組合との団体交渉でのやりとりでは、大西理事は、制度と現実の間にズレがあるならば現実の方を正すべきという立場を表明されました。それも解決策のひとつですが、現実の方を正すためには、常勤職員の数を増やすことが必要となるでしょう。それができるものなら早くやっていただきたいとも考えます。

(うに・ひろゆき氏は経済学研究科教授)

京都大学新聞では、5年条項に対する学内の意見を今後連載していきます。5年条項がひきおこす個別的な問題や、専門的見地からのものなどなんでも構いませんので5年条項に対する意見をお持ちの方は、お問い合わせ下さい。(編集部)

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