伝え語るパレスチナ 広河隆一氏講演会開かれる(2009.06.01)

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5月14日、文学部新館第3講義室にて「広河隆一講演会」(主催/人間環境学研究科 岡真理研究室)が開催された。昨年12月に起こったイスラエルによるガザ空爆に関して、パレスチナ問題の根底にあるものは何かを考えるために行なわれたものである。広河氏は40年近くに渡りパレスチナ問題を追ってきたフォトジャーナリスト。まず広河氏のこれまで記録してきた映像の集大成とも言える作品「NAKBAアーカイブス版」のうち「序章」にあたる部分の上映が行なわれた。

続いて第3次中東戦争のあと占領下のエルサレムで自分にむかって引きつった笑顔で白旗を振るパレスチナ人の少年を見て、この問題に自分は無関係ではないと感じさせられた話や、ある老人に「今ではなくなぜ一ヶ月前に来なかったんだ!」と詰め寄られた経験(老人の息子は一ヶ月前イスラエル兵に射殺されたのだった。しかし兵士も外国人ジャーナリストがいる前では、体面を気にしてそこまで残虐なことはしない)によって「起こった事実を伝えるだけではなく、あってはならないことを阻止するのもジャーナリストの役割なのだ」と気付いたエピソードなどを語った。またパレスチナ人の「自爆攻撃」を「テロ」という語に置き換えることを例に挙げ、日本のメディアのパレスチナ問題に関する報道のあり方を、問題の構造を意図的に見えづらくしているとして批判した。

会場は200名を超える学生、市民が来場し超満員。質問も多く出され盛り上がりを見せた。

広河隆一氏と来場者との一問一答

―イスラエルから入国を拒否される事は無いのですか?

国境を越える、という行為自体が1つの作戦でして。実際77年から90年までは入国出来ませんでした。その間は難民キャンプを中心に取材をしていました。90年頃から現地の空気が変わってきた、「和平」の方へ若干動き出してきた、というのを肌で感じるようになりました。それで一度試してみたらヨルダンから入国する事が出来ました。ただ、いつもこれで入国出来るのは最後かも、とは思っています。

―取材をしている現場でヒトが死ぬ、という見慣れた風景が消える、という事に対して、どうやったら耐えられるのですか?

そんな方法は無いです。1982年に虐殺の現場を見た後は、しばらく火を通したものは何も食べられない。夜は外で光る照明弾が人魂に見える。夢にも現場の映像が出てきました。これを忘れるための解決法は無いです。でもこの現場を多くの人に伝えるのが仕事だということでシャッターを切る度胸はつきましたね。

―昨年12月のガザ空爆で強く感じたことは。

今回の作戦は、占領地における軍事行動では史上最大のものでした。いよいよナクバの一つの段階が動いたのかな、という気がします。彼らはもはやパレスチナ人が存在すること事態が問題であり、彼らを追い出さなくてはならないと考えているのでしょう。これは突然起こった事件ではなく、60年間綿々と続く追放と破壊の一環なのです。

ただ、これはイスラエルの方がこの場にいるかもしれない、というのを承知の上で話させてもらうのですが、イスラエル政府はガザへの空爆に際して「ハマスが政権を取ってからわが国は7000発ものロケット弾の攻撃を受けたのだ」と盛んに宣伝し、自国の行動をそれに対する自衛行為であるかのように正当化しました。日本のメディアもこの発表を垂れ流しにしました。

しかし、このロケット弾攻撃によって実際には何人が死んだのでしょうか。これを知るのは非常に容易です。イスラエル政府が自らウェブサイトで発表していて、5人が犠牲になったとある。同じ期間にガザではイスラエルからのロケット弾攻撃で450人が犠牲になっているのです。    5と450を比べて、だから5のほうはどうでも良いとは言いませんが、なぜメディアは一方的にイスラエル側の被害だけを伝えるのでしょうか。あの時メディアが行ったのは、イスラエル側の言い分だけを伝えて日本人に「植え付け」をするという犯罪的な行為だったのです。

―日本の活字メディアと欧米の活字メディアの違いはあるのでしょうか。

私がやっているDays Japanという雑誌の賞に世界中から沢山の写真が応募されて来ます。同じ写真がピュ―リツァー賞やピースフォトにも応募されます。しかし、欧米の写真賞というのは審査員が殆ど欧米出身者で占められています。だから「白い手が黒い手を助ける」趣旨の写真が高評価を得る傾向にあります。

やはり、欧米のメディアにはイスラエルに不利な報道はやめておこうという意識があります。Days Japanの大賞でパレスチナ人難民キャンプに今まさにイスラエル軍のロケット弾が落下する瞬間の写真が選ばれたことがあります。同じ年、ある欧州の写真賞を受賞したのはハマスがロケット弾の発射準備をしている図でした。

―イスラエルの人に「日本にも沢山の問題はあるだろうに、なぜお前はここまできて人のことに口を出すのか」と言われたらどう答えますか。

「だからあなたの行なっていることにも口を出して、自分の所にも口を出すのだ」と答えるだけです。Aという犯罪はBという犯罪を無かったことにはできません。他でもやっているから私もやって良い、というのは詭弁です。我々もナクバをしたのか、と言われるとそうなのです。我々の国が60数年前にアジアで何をしたのか、ということ。その時にムラが消えて人が消える。そういうものを記録しなければ、取り組まなければ、というのが次の仕事です。

―村上春樹氏のエルサレム賞受賞時の対応をどう思われますか。

政治を避けているつもりで、結局そこに絡め取られてしまっているということが良くあります。しかし私たちはみな政治から逃れられないと思います。文学者であれ世の中の問題を表現する以上、そこから純粋に独立した芸術などはあり得ないのです。我々の背景には全て歴史を負っているものがあるのですから。

―ありがとうございました。

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