〈生協ベストセラー〉 京阪神エルマガジン社『京阪神珈琲の本』 コーヒーと作る、京大自分物語(2009.04.16)

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今回のルネベストは、さすがに春のテーストだ。3位に『学生のための一人前!レシピ』、4位には『京都本』、5位には『大学時代しなければならない500のこと』と、京都に乗り込んできたばかりの新入生の、初々しい意気込みが伝わってくる実用書(?)が並ぶ。1位の『鴨川ホルモー』にしても、在学生が今更読む内容というよりは、入学した大学が映画の舞台になるというのでどんなもんか、とのぞいてみる新入生の顔のほうが思い浮かぶ。引っ越しがやっと終わったと思いきや、大学も始まってなかなか大変だ、という新入生の皆さんに私が薦め得るのは、そういった「実用書」の類いではなく、忙しい毎日に一息入れるべく注ぐ一杯のコーヒーのみだ。

東京にいた時分は、コーヒーを飲むと言っても、落ち着くようで落ち着かないスタバの喧騒の中でか、寂しい受験勉強に打ちひしがれながら自室で飲むといったものだった。今、大学生と身分を変えて一年。増えていくのは年齢と単位ぐらいのものだと思っていたが、覚えたことの一つに、「正しいコーヒーの飲み方」がある。それは、自宅でコーヒーを飲む時は、窓を開けること。閉め切った部屋でコーヒーを飲むと、コーヒーを飲んでホッとついた一息の逃げ道がなくなってしまう。「ホッと一息」を媒介にして、人は外界とつながる。窓の外から聞こえてくる近所の学生の笑い声、原付の情けない滑走音、そんな街の音がコーヒー飲んだ大口から体の中に入ってくる。ふと見た時計は18時。西日を見ている自分はまさに色即是空、幽玄の境地、間柄の存在。周囲と一体化した自分は即自かつ対自存在。太陽とともに沈み、月とともに昇る。コーヒー一杯で人は自分自身を超えることができるのだ。

回りくどい話をしたが、はっきり言ってしまえば、自宅でコーヒーを飲もうというのが邪道なのである。コーヒーはコーヒー屋で飲むのが良い。今回の紹介本、知っている店は5店あった。そのうちの一つ、jazz spot YAMATOYA。知っている人しか知らない小路の奥に在するこの喫茶店を知ったのは、散歩していて発見した編集員の紹介によってだった。「一杯で夕飯2回食えるね」と言いながらすすり飲んだのは半年前か。時代がかった喫茶店でコーヒーを飲んだ記憶は、それ自体時空を超えて人を時間の流れに埋没させる。

こんな話を偉ぶって、浪人して同志社に来た友人に話したら、「お前は甘い」と一蹴された。彼の浪人時代に蓄えたコーヒー技術はたいそうなものらしい。豆から挽いて、泡立つ粒子の美しさを眺めてから飲む一杯はひとしおとのこと。今ではエクスプレッソまでお手の物だとか。私は彼にお茶を提供する代わりに、そのコーヒーを貰い受ける。東洋のお茶と西洋の珈琲の交流。コーヒーを語るに時間は尽きない。

京大新聞ではコーヒーメーカーを所有しています。新入生の方、我が社で落ち着く一杯をいかが?(麒)


《本紙に写真掲載》

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