〈新刊紹介〉 山田篤美著『黄金郷伝説』(2009.01.16)

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著者の山田篤美さんは京都大学の卒業生で、歴史研究家。3年間ほどのベネズエラでの滞在経験を生かしてか、本書の中では日記・手紙や公文書などの豊富な資史料が引用されており、それらを有機的に結びつけ的確な分析を加え、さらに物語風に読みやすく仕上げている。

著者は、東インド諸島、ベネズエラ、ギニアなどの複雑な歴史模様を解説。コロンブスの新大陸到達からはじまって、各国の探検家たちが真珠と黄金郷(エルドラド)を追い求めた大航海時代、イギリスの探検家ローリーの生涯、オリノコ川、ギアナ高地などをめぐるイギリスとベネズエラ、あるいはイギリスとアメリカとの争い、エルドラド刑務所に収容されたパピヨンのエピソードまで、500年にわたる黄金、領土拡張をめぐる争いを、時には土地に、時には個人、あるいは国にと焦点を移しながらつぶさに観察していく。その過程で「探検」が帝国主義時代の列強(特にイギリス)により侵略の道具、口実とされていたことを明らかにし、西欧のその姿勢を副題にもあるとおり「探検帝国主義」という言葉で表す。

当時西欧諸国が採用していた暗黙のルールでは、新大陸の先住民にはそもそもその土地の所有権を認めておらず、はじめに踏破した国がその土地、あるいはその周辺の領有権を得るとなっていた。まずそもそも、コロンブスが最初に東インド諸島に降り立つやいなや、スペインの国旗を打ち立て、その土地が王のものだと宣言したというのだから驚く。また後年には地図をつくるという行為が自国の領有権を主張するのに好都合であるという認識から、イギリスでは王立地理学研究会を中心にどんどん制作されていく。ベネズエラとの国境紛争では正確な地図とその強引な手法であと一歩まで追い詰めたが、モンロー主義を持ち出してきた新興のアメリカ合衆国によって阻まれたという歴史も。イギリスがスペインの無敵艦隊を破った後、早期の産業革命でパックス・ブリタニカともよばれる最盛期をむかえていた19世紀、日本ではマイナーであるが、南米の局所ではこのような争いがあった。この地域の歴史には馴染みのない人がほとんだろうから、目を丸くすることしばしばであろう。

本書の根幹をなすのは、「未開の土地に勇敢にも旅立った」としてしばしば称賛される探検家らの裏に見え隠れする、個人、あるいは国家の、強欲で傲慢な態度の指摘と批判。その批判精神は本書の随所でみられる。新大陸でのヨーロッパ人と先住民との邂逅を記述するとき、イギリスとベネズエラとの国境紛争でのイギリスの対応を語るとき、そしてあとがきでは南米の歴史に「少々憤りを感じていただければ」と結んでいる。当時の西欧各国の侵略的要素に目をつぶり、探検から単にロマンや希望のみを連想しがちな人々への批判の書といえるだろう。(義)

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