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動物実験供養之碑

2006.05.16

しんと静まりかえった空気が肌に沁みた。医学部構内の、幾分奥まった場所に、一つの碑が立っている。「動物実験供養之碑」(昭和四七年設置)、と刻まれているのが読み取れる。  医学部・医学研究科で研究実験のために命を奪われた、動物たちを供養しているのだろう。供えられた花はまだ色あせておらず、訪れる人のあるのが見受けられた。背後にそびえる巨木の周りには、何体ものお地蔵さまが肩を寄せ合って並んでいる。
一人の女性と出会った。ある日の散歩中にこの場所を見つけ、それから毎日のようにお参りに来ているのだという。しめ縄の巻かれた巨木にむかって、静かに 手を合わせていた。近隣の方や、京大病院の患者さんの中にも、ここへお参りに来る人は少なくないという。この場所は、実験動物供養以上の意味合いを持った 信仰の地であるようだ。
ボランティアの人々の手によって、いつも美しく整えられたこの場所に、現在の医学生や研究者が訪れることはあるのだろうか。動物実験に関して、反対の声 はいまだ絶えないが、少なくとも医療の進展のためと命を奪った動物たちに対して、感謝と供養の念だけは忘れずにいたいものだ。

動物実験供養之碑