文化

日々の暮らし方 第2回 正しいサークルのやめ方 〜嘘偽りのない人生を生きるために〜

2008.10.23

昨年度の卒業生へのアンケート調査によると、サークルを中途でやめたことのある学生は82%、その一人当たり平均数は2・8であったという (※1)。この数字を少ないとみるか多いと見るかは人それぞれだろうが、30年前の同調査によると、その平均数は7・4であり、中には卒業までに62のサークルを辞めたという記録もあるので、近年の学生はサークルをやめることに対して積極的ではないのは確かだろう。

このことはひとえに正しいサークルのやめ方が学生の間で伝わらなくなった (※2)ことに起因している。正しい方法がわからないが故に踏ん切りがつかなかったり、やめても後悔が残り次のサークルをやめようとする意欲がわかなくなってしまうのである。正しい方法を理解することによって、個人はより正しい学生生活を送れるようになり、冒頭の調査に示された悲惨な状況も改善されていくことだろう。

最近よく見られるのが、ある時からパタッと姿を見せなくなる、もしくは徐々に関わりを減らし、その自然の成り行きであるように去っていくというやめ方だが、これはよろしくない。爪切りで耳の掃除をするような行為である。まず周りの人間にとって彼もしくは彼女が辞めたのかどうかはっきりと認識しがたい。そして何よりも本人にとってもその認識が困難で、ひょろっと戻ってもいいのではないかという雑念を呼び起こす危険すら残してしまう。

サークルをやめようと思った場合、最初にするべきことは、サークル内で信頼に足る友人一人にその意思を告げることである。いない場合はまずはそのような人物を作るところから始めなければならない。告げられた友人は、当然考えなおすことを求めてくる (※3)。そこからやめようと思う理由、今後の予定、心残りなどを2時間ほど話した上で、友人の制止を振り切るのである。2時間という時間に関しては一部では短すぎるという声もあるが、通説ではやはり2時間が伝統的に良いとされている。こうして一度制止を振り切ることによって、その行為は純化され高次元なものとなる。

ここまでは、告げる相手の選択や2時間分の話の用意などが悩ましいのだが、ここを超えるとあとは至極簡単である。正式な辞意の表明を送りつければいいだけだからだ。すでに制止を受ける必要はないので、一方的に宣言をメールなり矢文なりで伝えるだけでいい。

注意することがあるとすれば、やめるという意思だけを書けばいいのであって、それ以外の理由などは書いてはいけないということだ。これによって失敗した例として有名なのが「七分事件」である。ある運動系サークルで薬学部の女子学生が辞意を表明した際、「サークル内の男子の半分以上が冬でも半そでで気持ち悪いから」と一言添えてしまったばっかりに、その理由に該当するメンバーたちから「これからは七分袖を着るから戻ってきてくれ」という執拗な呼び戻しを受けて、結果的にそのサークルに戻ってしまったという話である。

どのようなことにも、まさかということはあるので、油断はならないが、以上のことを忠実に守れば、正しくサークルをやめることは難しいものではない。

京都大学日々の暮らし方研究会・編

※1)1回生の4、5月に関しては集計に含めない。やめる以前に入ってすらいないからである。やめようと思ったことがある割合は調査せずともわかることである。
※2)この伝承を妨害しているのは、近年のサークルの人員確保に対する過剰な執着であり、ひどいところではボックスに「サークルやめますか?人生やめますか?」というポスターが貼られているという。
※3)制止をしてくれなかった場合は、迷いがあることを嘘でも告げ、制止を促さなくてはならない。