新刊紹介 海外から来た『源氏物語』 ウェイリー版源氏物語(2008.10.01)

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本書はイギリスの東洋学者アーサー・ウェイリーによる『源氏物語』の英訳をさらにまた日本語に移しかえたものである。このウェイリーの英訳はかなり有名なものらしい。1925年に「桐壺」から「葵」までを収めた第1巻がイギリス、アメリカで出版されると、「文学において時として起こる奇跡のひとつ」などと様々な新聞、雑誌で大きく取り上げられた。同じ年に出版されたプルースト『失われた時を求めて』の英訳と並んで、小説好きの心をとらえたそうだ。つまりは『源氏物語』が西欧で知られるきっかけになった。

それを日本語に訳す。現代語訳なんていくらでもあるのに、わざわざどうして? と思うが、しかし読んでいくと話の筋がすらすらと頭に入っていくのに驚く。それまでもいくつか現代語訳を読んでみたことがあるが、気を抜かずに読んでいなければ話の焦点がぼやけてしまって、非常に苦労したのを覚えている。結局いつも途中で疲れてやめてしまうことになった。「須磨がえり」という言葉がある。『源氏物語』を読んでいって何とか須磨の巻まできたが、話がよくわからなくなって最初に戻ったり、読むのを断念する、という意味だ。『源氏』に手こずる人は多いようだ。

そんな風に考えていたから、『ウェイリー版』を読んでいると、中身は『源氏物語』そのものでありながら、『源氏物語』でないような気持ちだった。それくらいページがぱっぱっと心地よくめくれていく。

基本は原文に即しているのだが、原文と比べてみると、かなり自由に訳しているのがわかる。紫式部の文章スタイルから、離れるところは離れているのだ。ウェイリーはかつて「紫式部が自由に英語が操れたら言いたいと願っただろうことを言わせているのだ」と語ったという。そして、その表現が、現在の私たちにとってはとても馴染みやすいものになっている。

本書は、物好きな興味を満たすための逆輸入では決してない。『源氏物語』の長大な物語に浸るときの選択肢のひとつだ。『源氏』が苦手だという人にこそ、ぜひ手に取ってほしい。(ピン)

《本紙に写真掲載》

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