映画評 「おいしいコーヒーの真実」(2008.09.16)

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原題は「BlackGold」。黒いコーヒー豆が、カネになることをもじったタイトルだ。初期のキリスト教徒はその黒さに不快感を覚えコーヒーを飲まなかったそうだから、まさに錬金術のように感じるだろう。ポスターの方も洒落ていて、スターバックスに模した紙コップから「$」の湯気が立ち上っている。原題の切れ味が逐語訳では失われてしまって何とも悲しい。 

「ダーウィンの悪夢」「いのちのたべかた」に続く、グローバリゼーション批判の映画である。題名の「おいしい」に対比されているのが「真実」であるから、「まずい真実」つまり「不都合な真実」をこの映画は観客に提示しようとする。映画の視点は、エチオピアの農民のためによりフェアなトレードを進めるコーヒー豆流通業者タデッセ・メスケラ。彼を中心に据えて、コーヒー栽培農家、先進国のコーヒー焙煎業者やカフェ店員へと取材を進めていく。エチオピアの中でもエリートであるタデッセは、コーヒー流通にいてエチオピア農民に払われている賃金がいかに不公平であるかを訴える。不都合な真実を悲壮に語るタデッセに対し、農民の暮らしを見ない先進国のコーヒー業界関係者という対比が反復される。

教科書的な色彩が強く、上映中は字幕だけを追ってしまった感が残る。ただ、最終的なコーヒーの価格に対してエチオピア農民の手取りが少ないこと、そのために生活が苦しいこと、そしてそれを先進国の人たちはよくしらないこと、その構造がWTOの体制の下で存置されていること、等々流通の過程を追うことで非常にみえやすくなっている。「一杯のコーヒーから世界が見える」とのコピー、それが全てだ。

しかし、肝心のスターバックスらコーヒー業界の企業から取材を断られたからといって、どんな取材かもよく知らなそうな店長に聞くのはフェアではない。せめてちゃんと伝えて喧嘩でもして欲しかった。「スターバックスでもフェアトレードコーヒーを販売しています」くらいな返答があったろう(スタバのホームページによると日本では2002年から)。そのとき観客はフェアとアンフェアの二分法よりももっと複雑な現実に向かうことになる。

コーヒーの背後の南北問題に対する理解が低いなかでは、これで十分な問題設定ともいえるが、NGOのテキストとなってしまっているのが残念だった。(ち)

《本紙に写真掲載》

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