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新規タンパク質を発見 疾患の原因となるタンパク質を分解

2008.08.08

永田和宏教授(京都大学再生医科学研究所)らの研究グループが細胞内タンパク質の品質管理機構に関わる新規タンパク質を発見、その研究成果が7月25日発行の米科学誌「サイエンス」に掲載された。

生体内のタンパク質は、20種類のアミノ酸が多数結合してできる高分子化合物である。アミノ酸がどのように配列するかの情報は細胞核内のDNAに書き込まれているが、アミノ酸の配列情報だけでタンパク質の機能が決まる訳ではない。タンパク質は、アミノ酸の鎖が正しく折りたたまれることで初めて機能を獲得するのである。

今回発見された新規タンパク質ERdj5は、誤って折りたたまれた(ミスフォールドされた)タンパク質を小胞体内で解く機能を持ったタンパク質である。誤って折りたたまれることはすなわちタンパク質が予期せぬ機能を持つことである。アルツハイマー病やパーキンソン病は、このミスフォールドタンパク質が原因で起こるとされている。

ERdj5は、同じく永田教授の研究グループが2001年に発見したタンパク質EDEM、及び小胞体内の代表的な分子シャペロンBiPと結合し、複合体として働く。ミスフォールドタンパク質はEDEMによって認識される。次いでERdj5がタンパク質のジスルフィド結合を還元することでタンパク質を1本鎖の状態にする。1本鎖にすることで、小胞体の膜にあるチャネルを通してタンパク質を細胞質へ出すことが可能となる。BiPの補助により細胞質へ出されたタンパク質は、細胞質に含まれるタンパク質分解酵素によって分解される。

今回の研究について永田教授は、「疾患の治療にすぐ役立つわけではないが、分解の役者が明らかになったという点で意味がある。働きを担うタンパク質がわかったので、今後はそれを活性化する化合物を見つけるのが研究の方向性の1つだ」とコメントした。

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