Shootingstars 鳥人間コンテストに懸けた夏(2008.08.01)

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自作した人力飛行機の飛行時間や距離を競う大会、鳥人間コンテスト。毎年7月下旬に開催され、今年で第32回目を迎える。本コンテストに出場し、好記録を出すべく活動している学生サークル、京大バードマンチーム・Shootingstars。昨年3位の実力を誇る彼らの夏に密着した。(博)




メンバーは3回生1名、2回生7名、1回生3名の計11名。そのほとんどが理系学部の学生であり、中でも2回生は7人中5人が工学部・物理工学科に所属している。 毎年10月に工房開きをし、機体の制作を開始。翌年3月には作業を完了し、4月~6月の3ヶ月間を利用して計4回の試験飛行を行う。試験飛行は例年、岡山県笠岡で行われ、機体の性能チェックとパイロットの飛行訓練を兼ねる。

今年度の機体の製作にかかった費用は約110万円。昨年度の賞金とOBからのカンパで賄いきれない額を現役メンバーで負担している。大学からの補助もなく、企業から広告を取ることも禁じられているため、苦しい資金繰りが続いている。

Shootingstarsが出場するのは、「人力プロペラ機ディスタンス部門」の飛行距離競技。高さ10メートルの特設プラットフォームから飛び立ち、着水地点までの距離を競う。今年で16回目の出場。同種目に出場するチーム中最多を誇る。

7月26日 大会第1日目


JR京都駅から新快速列車に揺られること約50分。会場のある彦根駅に到着した。最寄り駅といっても会場の松原水泳場(琵琶湖東岸)まではかなりの距離がある。彦根城を左に臨みながら、堀沿いを西に歩くこと45分。午後3時、ようやく会場にたどり着いた。

機体駐留域に指定された砂浜の一角には、大学名の記されたテントと機体がところ狭しと並べられていた。しばらくテントの海を彷徨った後、新たに立ち上げられつつあるテントに京大の2文字を発見。ようやくShootingstarsのもとを訪ねることができた。

テントの傍ら、既に機体はほぼ組み上がっていた。聞けば10時に京都を発ち、正午過ぎには会場入り。午後1時にはほぼ完成させたという。保護シートの被せられたShootingstarsの機体は少し異彩を放っていた。京大の場合、大会の時期と試験の時期が重なるため、機体の製作は大会の1ヶ月前に完了される。その間、機体の損傷を防ぐためにシートが被せられていたそうだ。

主翼の右端と左端、コクピットの部分にそれぞれ一人ずつ、計3人が常時機体を支えていた。風にあおられ転倒し、主翼が折れてしまっては元も子もない。交替で椅子に座り、主翼と地面の水平を維持する。容赦なく照りつける日差しの中、じっと機体を支える部員たちの顔には玉のような汗がびっしりと噴き出していた。

揃いのポロシャツを着た大会本部の人間たちが断続的にチームの機体を検査しにやって来る。チェックリストを持った1人に話を聞くと、「飛ぶことよりも、落ちた時の安全性を考えてやっている」とのこと。着水後、パイロットや回収係はずっと水中に居るため、皮膚がふやけてしまっている。そのため、機体に少しでも尖った部分があれば脱出時や作業時にけがをしかねない。それゆえ、できる限りねじの頭を埋め、角を隠すように指導がなされていた。とりわけ尾翼やコクピット内部の不備が多いらしく、大抵どのチームも2度3度と再検査を受けることになる。一発合格はごく稀なことらしい。

安全確認が済むと、今度は機体にカメラを積み込む技術班がやって来た。40代と思しきベテランの男性に、若い男女のアシスタントが1人ずつ。やはり、水色のポロシャツを着ていた。カメラはフライト中のパイロットの様子をとらえるためのもので、全ての機体に積載される訳ではないらしい。「同じ画が続くと視聴者も飽きてしまうでしょう」と語るベテランは、カメラを積む基準について、(1)高記録が出そうな機体(2)テレビ的に面白い、変わった機体を優先するのだという。

ハンドル部分に使い捨ての小型カメラを設置し、コクピット後方に据えられた家庭用ビデオカメラにコードで接続。映像はこちらに記録される。紙オムツとビニール袋で幾重にも「防水措置」が施された家庭用ビデオカメラは、このデジタルの時代にあって随分とアナログな印象。てっきり水中カメラか何かで撮影しているものだと思っていた私は驚きを隠せなかった。「だから、コクピット内部の映像になると、画面がいきなり狭く、汚くなるでしょう」とベテラン。アシスタントの女性も「このデジタルの時代に格好悪いですよね」とうなずいた。

すっかり日も暮れてしまった午後7時過ぎ、難航したカメラの積み込み作業もようやく終了した。徹夜で機体を支える訳にもいかないため、組み上げた機体を一時解体する作業に移る。全ての工程を終えたのは午後8時を過ぎた頃だった。競技は翌日の早朝6時から始まる。近くの宿に泊まるパイロット以外は皆、その場で野宿をするとのこと。1日の汗を流すべく、部員たちは車に乗り込み、近くの銭湯に向かって行った。

7月27日 大会第2日目


鳥人間たちの朝は早い。早朝5時30分に会場入りすると、Shootingstarsの機体は既に組み上がっていた。午前1時から機体を再度組み立て始め、完成以降は休まず水平を維持。パイロットも5時には会場入りし、健康診断を受けていた。

人力飛行機の飛び立つプラットフォーム、そこに続く桟橋と機体駐留域との間にはかなりの距離がある。6時を過ぎたあたり、明るみ始めた東の空を背に、フライト順の早いチームから機体を移動させ始めた。人力飛行機とはいえ、主翼の幅は10数メートルにも及ぶ。左右合わせた翼幅は30メートル近く。機体を傷付けないよう細心の注意を払いつつ、ゆっくりと浜辺を進む姿は傍目にも重労働だ。

予定開始時刻を大幅に過ぎた6時50分、ようやくトップバッターの東北大学チームが飛び立って行った。Shootingstarsは5番目のフライト。7時には桟橋に到着し、プラットフォームに向けて橋を進み始めた。しかし、強風のため前のチームがなかなか出発できず、しばらく桟橋の上で足踏みを食らう。結局、Shootingstarsのフライトは午前9時になってのことだった。

プラットフォームを飛び立つや否や、風にあおられた機体は大きく右に流される。しかし、機体は墜落することなくそのまま右方向にぐんぐんと進んで行った。機体の姿は、すぐに見えなくなってしまった。時間にして15分位だろうか。アナウンスが流れる。Shootingstarsの記録は2015メートル。昨年度の1905・25メートルを超える、歴代2位の記録が出た。

機体の損傷は着水時ではなく回収時に起こる。ボートに岸まで引っ張られる過程で大きく壊れてしまうことがあり、中でも一番の痛手はカーボン製の軸が折れてしまうことだ。メインフレームの軸は1本約30万円もする。1年で折れてしまうものもあれば10年近く使い続けられるものあり、折れてしまうかどうかは全くの運任せ。昨年は運悪く、軸の半分が駄目になってしまったそうだが今年は全て無事。被害は尾翼とプロペラの消失のみに留まった。メンバーたちは、引き揚げられた機体の解体・回収作業に取り掛かった。

代表兼パイロット 筧武志さん(工・3)の話


―桟橋の上で1時間以上待たされました。フライトを目前に控え、緊張しませんでしたか?

テレビ局の人からインタビューを受けていたので、緊張するよりもむしろハイテンションになっていました。台に上るまでインタビューがあるなんて話は全然聞いてなかったので、うはうはでしたね。機体を支えている他のメンバーはさすがに待ちくたびれていましたが。

ただ、アップのために何度もプラットフォームと自転車の間を行き来したのは大変でした。フライト前には自転車を漕いで足を温めておく必要があるのですが、出番を待つ内に何度も冷えてきてしまったので。

―フライト中はやはりペダルを漕ぎ、機体を操縦するのに必死なのでしょうか?周囲の景色を楽しむような余裕はありましたか?

離陸直後に大きく風に流され、態勢を立て直すのにまず苦労しました。フライト中は風に乗って進んでいるという感覚はほとんどなく、ひたすら重いペダルを漕いでいるという印象。あまり慣れていない機体の操縦にも手を焼かされました。

ただ、「足」の方は体が覚えていたので問題なかったです。安定したフライトのためにはペダルを一定のペースで漕ぐ必要があるのですが、漕ぐ練習は1日1時間、感覚を切らさないようほぼ毎日行っていたので。

風景を見る余裕は、多少はありましたね。琵琶湖は意外と緑色なんだなあという印象を受けました。

―今大会の総括をお願いします。

今年の記録・順位については満足しています。離陸直後にぼちゃんと墜落しなくて本当に良かった。

今の機体は実績ある設計に基づいているので、安定して2キロ前後の記録は出せます。しかしそれ以上、2桁キロを飛ぶことはできないでしょう。記録を2桁の大台に乗せるためには、必要ワット数(≒ペダルの重さ)を少なくとも今の2/3にしなければなりません。私の代は自分1人しか部員が居なかったのですが、下の代には7人もメンバーが居る。ここを転換期に、後輩たちには大きく飛躍してもらいたいですね。

来年に向けて 2回生メンバーのコメント


次期パイロット・小松さん(農)

来年の目標は北小松まで飛ぶことです。距離にして30キロほどでしょうか。滋賀の自宅から自転車で通学するなど、暇があれば自転車を漕いでいます。減量は特にする必要もないので、とにかく持久力を付ける練習あるのみです。

構造担当・津村さん(工)

パイロットの体系に合わせたフレーム作りがこれからの仕事です。小松が普段乗っている自転車に合わせて設計し、カーボン軸をやすりで削る。軸はとても硬いので、骨の折れる作業が続きそうです。

プロペラ担当・高橋さん(工)

今のプロペラは製作工程が煩雑なので、軽くて作り易い設計を目指しています。手作業による制作なので、いかに図面通り材料を切り出すかが勝負ですね。

駆動担当・林さん(工)

足の回転を伝える際のロスをいかに少なくするかが駆動担当の仕事です。自転車のギアと違い、飛行機のギアは力が入ったり入らなかったりするのですが、今年は良いものができました。来年はギアボックスを導入することで、一層ロスを少なくしていきたいです。


《本紙に写真掲載》

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