松本次期総長 記者会見抄録(2008.06.16)

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尾池総長に代わる次期総長が松本紘理事に決定した。就任まで4ヶ月あるが、6年間の舵取りに対する抱負を語った。質疑はやや抽象的な部分が多いものの、具体的な方向性もいくつか示唆された。京大はどこへゆく。

次期総長への意気込み


―次期総長への意気込みを教えてください。

6年間という長丁場なのでしっかりとした方向性を定め、学内外の意見を聞きながら大学運営をしていく必要があると思います。学問は真実をめぐる人間関係だというのが私の信念の一つです。学問をやる以上、人の顔、人間関係というのはいかに自然科学、社会科学といえども、頭の片隅に残っていなければならないと思います。

―日本国内・世界的に求められる京大の役割はどのようなものだと思っておりますか。

基本は学術です。社会のイノベーションに役立つことが昨今強く期待されておりますが、基本的には大学は学問そのものをする場所です。また、学問とは常に研究成果を上げるということでなく、自分自身を研鑽し学ぶことでもあります。その意味では人の育成、学部教育の充実が大変重要であると思います。先端の科学技術を支援していくことも大学の仕事だと思いますが、「京都大学の先生はこう考えている」ということを発信できる大学になってほしいと思っています。

―「総長」を意識され始めたのはいつでしたか。

総長を意識したことはこの選挙までありませんでした。ただ、私自身としては以前から次の総長が誰になっても、今までの研究担当理事・財務担当理事としてやってきた役割や、法人化しなくてはならない仕事といったものを支えるつもりで様々な情報をまとめてきました。

―ホームページに「戦略」がアップされていましたが、これは選挙を意識したマニフェストのようなものでしょうか。

選挙事務局から京大への構想を1500字で述べよと言われたので、私がお役に立てること、考えてきたことを箇条書きにしただけです。マニフェストという割には少し貧弱かもしれませんが、京大の方向性、それも大動脈のような一つのものだけでなく、研究力の向上、高度教育と学生の支援、多様かつ多彩な人材育成、インフラ整備、社会貢献の5つの項目について考えることを書いています。

これからの京都大学


―京大が置かれている環境は年々厳しくなっています。経済的にも人材的にも厳しい状況下で人材をどういう形で集めようとお考えですか。また、先生は理系出身ですが、京大は文系・人文社会系のアピールが弱くなっているという指摘がある中で、京大の文系の伝統を今後いかに社会にアピールしていくつもりですか。
 
東京一極集中は学問に限った話でなく、政治的・経済的にもいえることです。京都が一つの反対軸となると思います。今日、山田京都府知事とお話しした中で「京大を大阪から京都に持ってきたことが京都の発展につながっている」と話していました。京大が1200年の歴史をもつ街にあることは大変大きな意味があると思います。科学技術の先端はインターネットを用いて世界中を一瞬のうちに凌駕していますが、京大には優秀な人材がたくさんおりますので強みになるかと思います。

京大は人文科学が大変強い。しかし、人文社会科学や基礎的学術研究への財政的支援がだんだん厳しくなっています。それを総合大学としてどう取り組んでいくか。ポイントの一つは財政の問題、もう一つは人材の問題です。優秀な人材が大学に残りたくても残れない問題への対策は、若手研究者のポストを大学が作らなくてはならないということです。経済的問題により研究者が大学に残りたくても残れない状況には、ドクターコースを出て5年間にできれば100人位、助教や准教授相当の研究員として活躍できる仕組みを作らなくてはいけない。財政的には少し厳しいですが、京都大学はそれが可能だと思います。

もう一つは、競争的資金を取れない学術分野を学内で支援する必要があります。2年前から私の担当として、全学で協力して学問を支える仕組みを作っています。これを強化して、先端研究の資金の一部を間接経費として回し、基礎研究や人文社会科学の方面にもっとお金を分配していけえればいい。

―最先端の研究iPS細胞に関しては、総長に就かれることで今後動きは変わるのでしょうか。

京都大学には素晴らしい研究をしているグループがたくさんあります。いい成果を出せば大学本部が放っておかず、ちゃんと支援をもらえるということを、「次の山中伸弥」となるべき研究者に示していきたいと思っています。

―今後の執行部体制・人事に関してどのようにお考えですか。

大学の執行部は法人化により枠が決まっていますが、これから大学執行部に関与する先生の数を増やす必要があります。つまり、教員と職員をつなぐ中間職を作るということです。これは、将来の執行部の管理者の養成という意味があり、マネジメント力に富んだ人を増やさなくてはなりません。

同様に、部局長から執行部・役員懇談会に入る前段階として、経験を積む場所・ポストは必要でしょう。自分の部局からでは、外部からの大学の評価がなかなか見えないので、1年ないしは1年半補佐という形で経験をしてもらいたい。また大学には、先生方のフレッシュな考え方を執行部として持てる長所もありますので、生かしていきたいと思っています。

―京大は世界的にもユニークな研究・学風といわれています。京大らしさをいかに養っていきますか。

今までの大学では、専門家が専門家を育ててきました。これは継承すべき点ですが、ある分野に限られ、自分の才能の卵を生かしきれない点も指摘されてきました。現在、学問分野・講座の壁を取り払い、教室単位・研究室単位で議論し、外部からも参加できるような仕組みを作る機運が高まっております。

京大では、この学問分野にこの人ありと言わせる人を全学で100人程度選んで自由にその人に研究・判断させることが必要です。もしその人が研究室の外や外国で視野を広げてきたいというのなら私はそれを許してもいいのではないか。また、毎年20人、5年内に100人単位で、いい人材を世界中から獲得する仕組みは必要です。

―京大の抱える欠点とはどのようなものだとお考えですか。

長所の裏の短所という意味での短所はあるかもしれません。たとえば自由の学風については色々な議論がありますが、ぜひ堅持するべきだと思います。自由放任ではなく、本当は自分の心の中の束縛から自由になることだと考えています。ただ、京大に限らず若い学生さんの気風が変わってきています。教える側は、現在の学生とは自分が学生だったころとは違うという意識を持つ必要があります。

―京大の学生、京大を目指す学生にメッセージをお願いします。

最近はいじめが多いですが、本心を自分に向けて自分を貫いてほしいと思います。

(本部棟特別会議室、5月23日)

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