ウィーンと京都のデザインが出会う 『上野リチ』展(2021.12.01)

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京都国立近代美術館は11月16日から1月16日の間、展覧会「上野リチ:ウィーンからきたデザイン・ファンタジー」を開催している。

上野リチはオーストリア出身で、京都との縁が深い芸術家である。1893年にウィーンで生まれたリチは、伝統的な模倣ではなく先進的なデザインを目指す教育で知られていたウィーン工芸学校で学んだのち、日本人の上野伊三郎と結婚して京都に移った。この展覧会ではリチの作品に加え、彼女に関連する芸術家の作品を国内外から招来して展示している。そのためリチという1人の芸術家にとどまらず、彼女の活動を契機として日本とオーストリアの芸術が出会い、新たな作風が作り出されていった様子を鑑賞することができる。

展示はリチの人生のフェーズごとに区切られており、工芸学校を卒業した直後に就職したウィーン工房での作品をはじめとして、ブースが進むごとに後代の作品になっていく。

伊三郎と結婚して京都に移った後の作品には、日本の草花を絵画に登場させたり伝統的な染物技術を用いたりと和の雰囲気が表れている。それでいて、くすみのない鮮やかな色遣いやいきいきとした自然の描写など、それ以前の作品にみられるリチらしさは失われていない。自らの作風を失うこともなければ、日本の芸術の良さを消してしまうこともなく、両者の良さを上手く取り入れることに成功している。

また「群馬県工芸所」という展示エリアでは、リチが国境を跨いで活躍したことを象徴する作品を展示している。日本に招かれたドイツの建築家・タウトの要請によって伊三郎が群馬県工芸所長に就任したのを機に、リチと伊三郎は京都から群馬県の高崎へ移った。その地で2人は、日本の竹などを用いたデザイン制作を行う。こうしてリチとタウトが共に群馬の高崎で活動を行った結果、日本を介してウィーンとベルリンのモダンデザインが交錯した。これは非常に貴重な事例だとされている。

展覧会の最後には、リチの教え子たちの作品が展示されている。本格的な工業デザインの教育が不十分だった戦後の日本において、リチは教育者として大いに活躍した。京都市立美術大学(現・京都市立芸術大学)で伊三郎と共に教鞭をとったリチは、他者の模倣ではなく新しい表現を求めて想像力を働かせることを重視した。その教え通り、展示されている生徒たちの作品はどれも独創的である。

デザイナーとしても教育者としても活躍した上野リチのデザインは、今もなお愛されて受け継がれている。彼女の魅力的なデザインを味わいに、東山へ足を運んでみてはいかがだろうか。観覧料は大人が1700円、大学生が1100円、高校生が600円、中学生以下は無料。京都大学を含む国立美術館キャンパスメンバーズのメンバー校の学生や教職員は、学生証・職員証の提示により団体料金で観覧できる。(滝)

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