霊長類研 再編に学界から憂慮の声 撤回求める署名も(2021.11.16)

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京都大学が10月26日に公表した霊長類研究所を再編する方針に対して、研究力の低下などを憂慮する声が学術界から上がっている。公表に先立つ25日、霊長類学および関連分野の研究者有志の会が、ネット上で再編の撤回を求める署名活動を開始した。また、27日、日本人類学会と日本霊長類学会が要望書をそれぞれ京大に提出した。

霊長類研の再編計画は、松沢元特別教授らの不正経理に端を発する。京大は、研究所内の連携不足が不正を長期間見逃す一因となったと判断したうえで、所内の研究領域の一部が他部局に近いことなども理由に挙げて、一部の分野を廃止し、他の分野を新設するセンターに編入する計画を決定した。

「体制の解体、痛手」


公表に先行して行われた各紙の報道を受けて、25日、「霊長類学および関連分野の研究者有志の会」は、霊長類研の再編計画の撤回を求めるオンライン署名活動を開始した。11月13日には、賛同が約3万筆に達した。集めた署名は今月中に提出する予定だという。

「有志の会」は、霊長類研の創設にも関わった元所長の杉山幸丸・京大名誉教授が代表を務め、霊長類研の業績を高く評価する霊長類学者・人類学者が名を連ねる。

署名サイト上で「有志の会」は、再編計画を「霊長類研究体制とコンセプトの解体である」と批判した。人員の削減、脳科学・ゲノム科学中心の体制への改編を含むものであると主張したうえで、総合的研究の推進という設立時の趣意を無視したものであると断じた。霊長類学関連分野にとって大きな痛手になるものだとの危惧を示し、方針の見直しを訴えた。

また、霊長類研が文科省の認定する「共同利用・共同研究拠点」として広く使われてきたことに触れ、来年度からの使用申請の取り下げに言及した。京大は本紙の取材に、霊長類研としての申請を見合わせたことは認めたうえで、新センターについては「設置準備委員会で議論中」と答えた。

各学会から要望書


公表後の27日には、日本人類学会の有志233名が、京大に要望書を提出した。新体制において、「研究拠点機能が損なわれるならば、多大な損失になる」と訴え、「貴重な学術基盤が失われないようお願いする」と求めた。

同日、日本霊長類学会の副会⻑である森光由樹氏が、京大と利害関係のない理事を代表して要望書を提出した。再編案での統廃合は、学際的研究の中枢的役割の消失や、霊長類学関連分野での研究力低下につながり、「国全体の科学研究にとっても取り返しのつかない、多⼤な損失」になり得るとの懸念を示し、研究を長期的に支援するような新体制を再考するように京大に求めた。

要望書と署名活動について京大は本紙の取材に、「把握しているが、見解は答えを差し控える」と答えた。そのうえで、再編による弊害を想定しているか尋ねたところ、関連部局が緊密に連携する体制を整えたいと回答した。

教員への「緘口令」


本紙は霊長類研の各教員にメールで、所属部署が再編されることについて見解を求めたが、期日までに回答はなかった。再編をめぐる意思決定について、総長は会見で「学内で反対はなかった」と述べた。一方で、関係者によると、再編後の配置先が決まっていないなかで、霊長類研の教員に対して強い「緘口令」が敷かれており、個人的意見を外部に発することが事実上制限されているという。

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