〈映画評〉愛の力で悪魔に立ち向かう 『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』(2021.10.16)

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本作は、ホラー映画の金字塔である死霊館シリーズ7作目で、物語の時系列上でも最も新しい話である。死霊館シリーズといえば、シリーズのうちの数作品に登場するアナベル人形で有名であり、ホラー映画ファンに限らず目にしたことのある人が多いのではないか。

本シリーズの主人公であるアメリカの心霊研究家・ウォーレン夫妻は実在する人物で、死霊館シリーズの多くが実話に基づいて制作されている。今作も例に漏れず、1981年のアメリカで実際に起きた事件をもとに作られている。

悪魔に操られた青年・アーニーが殺人事件を起こし起訴される。ウォーレン夫妻らが心霊研究家としての能力を活かし、アーニーが悪魔に操られていたという証拠を追い求めるとともに、依然として悪魔の手中にあって自身の命も危ないアーニーを救おうと奮闘する話である。この話のテーマの一つに、「夫婦、恋人の愛」がある。儀式によって悪魔を召喚してこの事件の元凶となった女性とウォーレン夫妻とで闘うことになるのだが、彼らが強力な敵に立ち向かっていけるのは、ただ単に信心深いからではない。シリーズを通して何度も何度も悪魔と対峙し、命の危機に晒されても彼らが勝ち続けてきたのは、ひとえに彼らの愛のおかげである。今作ではお互いを助けるために悪魔と戦うウォーレン夫妻を、彼らが出会った際の回想を交えながら描いている。

またウォーレン夫妻の話と並行して、アーニーとその恋人であるデビーとの絆も描かれている。悪魔に操られていたとはいえ、殺人を犯すアーニー。その様子を目の当たりにしてもなおデビーはアーニーを信じ続ける。アーニーを悪魔の支配から救うために、デビーが必死に訴えかけるクライマックスシーンは圧巻である。

また、悪魔を召喚した女性は孤独な様子に描かれており、強い絆で結ばれたウォーレン夫妻たちと対照的である。幼い頃に母を亡くした彼女は、神父で多忙な父親とは関係が上手くいっておらず、頼れるのは家族愛ではなく専ら悪魔の力であった。この二者の対比により、ウォーレン夫妻やアーニー達の持つ強さがいっそう強調されている。

このように、ウォーレン夫妻の絆とアーニー達の絆を並行して描き、その対照に孤独な女性を置くことで、愛の力によって悪魔サイドに立ち向かう様が際立ち、ホラーのジャンルに属しながらも単に怖いだけではない、この映画の持つ深いテーマが浮き彫りになっている。それは、妻であるロレイン・ウォーレンが夫に対して発した「敵は愛を弱さだと思っている。でも違うでしょう?」という一言に集約されている。恋人が危険に晒される幻覚を見せて殺人に仕向けるなど、悪魔は愛を弱みと考えてそれに付け込もうとしている。しかし、ウォーレン夫妻とアーニー達にとって愛は弱みではなく強みなのである。

ところでキリスト教的世界観の強い海外のホラー映画では、幽霊よりも格段に強力で危険な存在として悪魔が描かれることが多い。教会が出動したとしても解決に至るとは限らないのが死霊館シリーズの世界である。それほど強力な悪魔と対峙しても、相手を思い、自分が危険な目に遭うことを厭わない夫妻の姿は観ている者の胸を打ち、実話を元にしたストーリーと迫力のある音響で恐怖を作り出しながらも、最後は心温まる映画になっている。これは今作に限らず、死霊館シリーズは一貫して家族や夫婦の絆によって悪魔を打ち破る様子を描いてきた。ホラーと一口に言っても、サイコホラー、スプラッタホラーなど様々な種類があって、後味の悪い作品を目指して制作された映画も他のジャンルに比べて多い。しかし死霊館シリーズはどれも後味の良いストーリー展開で残虐な表現も少なく、安心して観られるホラー映画となっている。これこそこのシリーズが人気を博してやまない理由の一つであろう。

また、主な登場人物が同じだけで扱う事件の種類も時系列も異なるため、今までのシリーズを観ていない人でも問題なく楽しめる作品となっている。今作を観た後に前作を鑑賞するのも良い。

この映画は現在公開中。京都府内では、MOVIX京都、T・ジョイ京都、TOHOシネマズ二条など全5館の映画館で上映している。(滝)

作品情報
製作年:2021
製作国:アメリカ
原題:The Conjuring: The
Devil Made Me Do It
上映時間:112分
監督:マイケル・チャベス

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