〈映画評〉ロックが頂点だった時代を劇場で 『オアシス:ネブワース1996』(2021.10.16)

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90年代初頭、イギリスの音楽シーンでは、アメリカ生まれのグランジ・ロックの興隆もあり、イギリスらしいロック音楽の勢いは下火になっていた。そんな中、ビートルズなどのイギリスを代表するロック音楽から影響を受けたバンドが台頭をはじめ、それをきっかけにイギリスの音楽界は活気を取り戻していく。その動きはやがて「ブリットポップ」と呼ばれる一大ムーブメントとなり、ロック音楽の人気が社会現象の域にまで達することになる。そんなブリットポップを代表するバンドが、本作の主役である「オアシス」である。

オアシスはボーカルのリアム・ギャラガー、ギターのノエル・ギャラガーらギャラガー兄弟を中心としたバンドで、ブリットポップ期に名曲を量産し、デビューから数年で一躍スターの仲間入りを果たした。2009年に解散してしまうが、日本でも楽曲がテレビCMに用いられるなど、今なお人気が高いことが窺える。本作は、そんな彼らの最高傑作と評される2枚目のアルバム『モーニング・グローリー』がリリースされた直後の96年、まさにバンドが全盛期を迎えていた時代に開かれた英ネブワースパークでの野外ライブの模様を収めたドキュメンタリーである。

90年代半ばといえば、オアシスの全盛期であるとともにブリットポップもその流行の絶頂期であった。そのため、ネブワースでのライブは2日間の日程で計25万人以上の動員を記録し、当時の動員記録を塗り替えるほど盛況であった。まさにバンドとしても、そしてブリットポップ・ムーブメントとしても記念碑的なライブといえるこのネブワースでの公演を、ノエルを含めた元メンバーなど関係者のインタビュー音声や舞台裏の未公開映像を交えながら描き出す。

当時のライブはもちろん、オアシスを実際に観たことが無い身としては、20年前ものライブ映像をスクリーン越しに追体験できるというのは非常におもしろい。もちろん、現地にいるのと同じような音圧を感じることはできないが、普段はイヤホンを通して聴いている音楽を身体で感じることができるのは映画ならではといったところ。ただ、ライブ本編の映像については、両日程の映像をミックスしているため、時系列順に2日間を顧みるという作品の流れと相反する編集となっており、どうしても違和感が残ってしまう点が惜しい。

もし本作がライブ本編と未公開映像、そして関係者へのインタビューだけで構成されていれば、ライブを収録した映像作品に近い単なる記録映画となっていただろう。しかし、本作には記録だけではなくドラマがある。というのも、実は関係者のコメント以上に、当時ライブへと参加したオーディエンスへのインタビュー音声と再現映像が本作の大部分に挿入されている。最前列でバンドを目の当たりにした人、偶然チケットを入手できた人、ラジオでの生中継を録音しようとした人などの様々なエピソードからは、ライブに参加している観客一人一人に背景があることを思い知らされる。個人的には、ライブが終了した後に燃え尽きた状態で日常へと戻っていく人のエピソードが生々しく、自身の経験とも重なったため印象に残っている。これら観客側の描写は本作の特徴といえるが、純粋にライブを追体験したい人からしてみれば無用の長物だろう。ただ、2時間程度でこの歴史的なライブを背景も交えて描けているというのは、この特徴こそが効果的に、そして映画的に機能していたからと言えるのではないだろうか。(湊)

作品情報
製作年:2021
製作国:イギリス
原題:Oasis Knebworth 1996
上映時間:111分
監督:ジェイク・スコット

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