文化

望遠鏡で捉えた名月をライブ配信 第90回花山天体観望会 「名月と名曲」

2021.10.01

9月20日、第90回花山天体観望会「名月と名曲」が開催された。新型コロナウイルス感染拡大防止のためオンライン開催となり、京大大学院理学研究科附属花山天文台の望遠鏡を用いて、月や木星の映像がユーチューブでライブ配信された。

観望会の開催日は「中秋の名月」の1日前であり、参加者達は、満月に近い状態の月の周りに雲がかかって幻想的な雰囲気となった映像を、花山天文台の周りから聞こえる虫の声とともに楽しんだ。月の表面には、クレーターがあまりなく「月の海」と呼ばれる黒い部分と、クレーターが沢山あって標高が高く、「月の陸」と呼ばれる白い部分があるという。クレーターが形成されたときに物質が飛び散った跡である光条も望遠鏡による映像で観察でき、光条が見られるクレーターは比較的新しいものであると解説された。また、木星とカリスト、イオ、エウロパ、ガニメデの4つのガリレオ衛星の映像も見ることができた。木星の表面には、ガニメデの影である黒い点が観察されたほか、大赤斑と呼ばれる渦も見ることができた。

望遠鏡による映像の中継の合間に、松尾太郎・名古屋大学理学研究科准教授が「宇宙における生命探査」と題して、ミニ講演を行った。人々は地球外生命について昔から関心を寄せてきたが、1950年以降、月や火星に地球外生命が存在しないことが明らかとなり、太陽系内から太陽系外へと注目が移っていった。しかし近年では、太陽系内の木星の衛星であるエウロパに生命が存在する可能性が指摘されている。ハッブル宇宙望遠鏡によって、エウロパから水蒸気のようなものが噴き出している様子が見つかったという。エウロパに水蒸気があるのかについては決着がついておらず、今後明らかにしたいと松尾氏は述べた。

他にも、京大のサークル「叡風会」による箏や尺八、三味線を用いた邦楽の演奏などのプログラムが行われた。

花山天体観望会はNPO花山星空ネットワークと花山天文台が主催しており、2006年以降毎年数回の観望会が開催されてきた。今回の観望会はユーチューブでアーカイブが公開されており、花山星空ネットワークのホームページから閲覧できる。10月23日には第91回花山天体観望会「土星」を実施予定で、開催形態は9月29日時点では未定であるという。(凜)