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地裁 検証見送り結審へ 琉球遺骨訴訟 第10回弁論

2021.09.16

京大が保有する琉球民族の遺骨の返還を求める訴訟の第10回弁論が8月27日、京都地裁で開かれた。原告は遺骨の保管状況の検証を求めており、今回の弁論に向けて裁判所が被告・京大に保管ケース内の撮影を要求したが、京大は応じなかった。原告代理人によると、裁判所は事実上の検証見送りを告げて結審の準備に入った。証人尋問を経て来年3月頃に判決が出る見通しだという。

口頭弁論後、原告側の弁護士は集まった市民に「裁判所は残念な道筋をつけている」と報告した。前回の弁論で京大が遺骨の保管ケースの写真を提出したことを受け、裁判官は京大にケース内の撮影を求めた。原告側は原告代理人の立ち会いを条件に遺骨の撮影に同意したが、今回の弁論を前に京大は撮影しない旨を表明した。京大の反応を受けて原告側の弁護士は、「裁判所が検証に動くと思った」という。しかし、弁論後の協議で裁判長は、証人尋問をふまえて最終判断するとしつつ、原告の求める総合博物館での検証を見送る方針を示した。原告が遺骨の保管方法に不信感を示していることについて、本紙が京大に見解を尋ねたところ、「係争中の案件につき回答を控える」と返答した。

今回の弁論では、原告代理人の弁護士が陳述した。祭祀承継者は一人であるべきとの京大の主張に対し、琉球の葬送方法が集合墓の性格をとる旨を説明して反論した。そのうえで、国連による先住民族の権利宣言などを根拠に、原告は返還を受ける権利を持つと主張した。陳述後には約10分の動画を上映した。動画では琉球大学名誉教授の波平恒男氏が百按司墓の立地や歴史的背景を解説したほか、沖縄県在住の作家・目取真俊氏が京大の一連の対応について「遺骨をモノとしか見ていない」と批判した。

訴訟は、今帰仁村の百按司墓から1929年に金関丈夫・京都帝大助教授が持ち出した遺骨について、原告が返還と損害賠償を求めて2018年12月に提起した。京大は26体の遺骨を保有していることを2017年に認めており、墓に埋葬されていた王家・第一尚氏の子孫や松島泰勝・龍谷大教授ら原告5名が、その違法性を訴えてきた。

次回弁論は10月29日11時から京都地裁で開かれ、原告の松島氏と亀谷正子氏が証人尋問に臨む。原告側の弁護士によると、来年1月20日頃の弁論で結審し、その約2カ月後に判決が言い渡される見通しだという。

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