【検証 京大のコロナ対応 ―第3弾―】長引く制約に新たな課題も 2020年11月〜2021年7月(2021.08.01)

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国内での本格流行の開始から1年半、新型コロナウイルス感染症の影響は今も色濃い。大学でも対応の模索が続き、対面授業の全面的な再開、対面新歓の制限緩和、ワクチン接種の開始など、新たな局面に入りつつある。一方、制約の続く側面が課題として浮き彫りになっている。検証企画の第3弾となる今回は、2020年11月からの約半年間の動向を振り返る。本企画が、緊急時の対応を記録するとともに、収束の見通せない今後に向け、望ましいあり方を考える足掛かりとなることを願う。(編集部)

2020年11月までの学内の対応を整理した第1弾(2020年11月16日号)はこちら
課外活動の実情を取材した第2弾(2020年12月1日号)はこちら

▼学内外の動向(2020年11月〜2021年7月)
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目次


    活動制限 − 緩和と強化繰り返す 学内接種後の対応「検討中」
    授業 − 対面本格化と再停止 人出が極端に増減
    課外活動 − 不均衡の解消遠く 新歓は制限緩和
    学生の反応 − 充実度 学年間に差 新様式に前向きな声も
    他大学 − 緩和の道すじ様々 学内接種にもばらつき

活動制限 − 緩和と強化繰り返す 学内接種後の対応「検討中」


強化→緩和→強化→緩和


未知の感染症の流行に直面し、京大では昨年1月31日に危機対策本部が発足した。3月から対策会議が本格化し、学内の活動制限を始めた。職員の勤務や授業などについて対応レベルを定めている。これまで京大は、「政府や京都府の方針、感染状況を総合的に判断」し、制限強化と緩和を繰り返してきた。

10月1日からレベル1に引き下げ、約3カ月にわたって据え置いたが、年末年始に国内で感染者数が増加し、1月12日にレベル2(−)に引き上げた。14日からは京都府が2度目の緊急事態宣言の対象となり、2月も学内の活動制限を継続した。月末の入試を大きな混乱なく終え、宣言解除をふまえて3月1日から制限レベルを1に引き下げた。22・23日には、感染症対応の一環として入試の追試験を実施した。

4月12日に京都府にまん延防止等重点措置が適用されたが、この時点では学内の制限レベルは1のままだった。16日に京都府が各大学に入構制限などを求め、京大は19日にレベル2(−)へ引き上げた。25日には、政府が京都府を含む4都府県に3度目の緊急事態宣言を出した。宣言は約2カ月後に解除され、京大は6月21日に制限レベルを1に引き下げた。

昨春は卒業式や入学式を中止したが、今年は保護者の入場を不可としたうえで開催した。さらに、「新入生及び保護者の方からの要望に応え」て、2回生が対象の入学式を1年越しで開催した。

大学関係者 クラスターなし


京大は学内で感染者が出た場合の対応について、「大学の運営に影響を及ぼすものがあれば公表する」との方針をとっている。昨年11月から今年7月までに感染が発表された学生の合計は次の通り。20年11月0人/12月2人/21年1月9人/2月0人/3月0人/4月23人/5月11人/6月4人/7月9人

ワクチン接種開始


感染拡大や重症者の増加を抑える一手として、ワクチン接種が5月末頃から国内で本格化するなか、京大は6月15日、附属病院で学内接種を実施すると発表した。7月3日からの週末に、▽医療関係者▽教職員▽所定の条件を満たす留学予定者の順に希望者への接種を進め、7月24日からは通常予約の学生への接種を開始した。府内の大学からも学生を受け付けている。(=今号1面)

学内接種は、厚労省の職域接種の制度を利用したもので、文科省によると8月2日時点で162大学が実施している(次頁参照)。

7月中旬以降、関西での感染者数が増加傾向にあり、京都府では8月8日に過去最多となる333人の感染が判明した。8月2日からは、大阪府に緊急事態宣言が出され、京都府や兵庫県にまん延防止等重点措置が適用されている。

集団接種が進めば、学内の活動制限の緩和が望めるかーー今後の対応について京大は、本紙の取材に「検討中」と回答している。

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授業 − 対面本格化と再停止 人出が極端に増減


昨年度後期は制限レベル1の期間が3カ月ほど続いたが、授業はオンラインが中心だった。10月6日に対面授業の実施要件を緩和し、教室の収容率を50%程度に抑えれば実施可能としたものの、解禁されたのは実習など一部にとどまった。主に1回生が受ける全学共通科目では、対面授業の割合が1割に満たない時期が続いた。一方、主に学部2回生以上が対象となる専門科目では、対面参加の希望者がおらずオンライン形式を継続する授業も見られた。

こうしたなか、京大は2月12日、新年度の授業を原則対面で実施すると発表した。3月30日には感染対策マニュアルを改定し、授業教室の収容率の目安を「概ね3分の2程度」に緩和した。

新年度の対応を巡っては、文部科学省が3月の通知などで「十分な感染対策を講じた上での面接授業の実施に努めて」と各大学に求めていた。

4月から京大は大半の科目を対面で開講し、構内に賑わいが戻った。しかし、感染状況の悪化に伴い2週間でオンライン中心の体制に逆戻りした。その後2カ月間、活動制限を続け、6月24日からは原則対面で実施している。対面受講が困難と認められた学生については、授業の同時配信や録画の共有で対応しているという。

また、感染対策の一環として、18年ぶりに時間割を変更して昼休みを延長し、食堂の混雑緩和を図った。京大生協によると、2月に副学長から協議の申し出があったという。人数制限などの感染対策に伴い昼食をとれない学生が出るとの懸念を共有し、時間延長に至った。その効果について生協は本紙の取材に、時間差で利用する様子が見られると説明し、「昼食難民を出さずに対応できた」と回答した。食堂利用者の感染は報告されていないという。

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【平日昼休みの吉田食堂付近(左から4月14日、5月10日、6月25日)】

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課外活動 − 不均衡の解消遠く 新歓は制限緩和


京大「今しばらく我慢して」


課外活動について京大当局は、昨年7月から事実上の許可制をとり、京都府の方針をふまえて各団体に感染対策ガイドラインの作成や活動計画の提出を求めている。また、一貫して▽京大生のみ▽公認団体のみ▽無観客などの条件を課しつつ、感染状況に応じて特に屋内活動への制限を調整してきた。

10月からの約3カ月間は、学内の一部施設を含む屋内での活動を認めたが、感染状況をふまえて1月12日以降は屋外のみに制限した。2月末で緊急事態宣言が解除されると、再び屋内活動を認めた。

4月からは、対面を伴う新歓活動を条件付きで解禁した。同時に、勧誘機会の確保を目的として「ビラ紅萠祭」の実施を発表した。自粛要請以降、オンラインでの新歓しか認められていなかった課外活動団体にとって絶好の機会となった。当日は、主催の応援団によると約70の団体がビラを配り、約1500人が会場を訪れたという。

一方、対面新歓の実施にあたって大学は、引き続き参加を公認団体のみとしたほか、「ビラ紅萠祭」以外でのビラ配布を認めないと通知した。例年は授業教室の机に無数の新歓ビラが置かれたり、健康診断の実施日に多くの課外活動団体が新入生を勧誘したりする様子が見られるが、今年も大半の団体がそれらを自重し、非公認団体は公にビラを配る機会を持てなかった。

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【吉田南グラウンドでのビラ紅萠祭=4月6日】

非公認団体は、もともと大学の認可を受けておらず自粛要請の強制力が働きにくいものの、大学が公認団体しか認めない方針を繰り返し明示することで、表立った動きを取りにくくなっている。加えて、従来は京大生であれば誰でも課外活動に使うことができた体育館やグラウンドなどの学内施設の利用が公認団体に限定されており、団体に所属しない学生も含めた不均衡が続いている。京大は非公認団体への対応について、本紙の取材に「感染状況をみながら検討している」と回答し、施設利用の制限緩和については8月6日時点で「現時点では予定していない」と説明した。

また、公認団体でも、他大生が参加できないために活動を見合わせる例もある。学外者の活動参加について、他大学では許可する事例も見られる(次頁参照)が、京大は本紙の取材に「大学間での学生の移動は感染の拡大の可能性を高めるため、予定していない」と回答した。

こうした状況をふまえ、非公認を含む12の課外活動団体が3月末以降、3回に渡って大学に要望書を提出した。他大生の参加や有観客の活動、非公認団体の活動、教室での置きビラなどを許可するよう要求した。大学はメールで回答し、「今しばらく我慢して」と理解を求めたうえで、「個々の活動について、内容や実情に応じた対応をしているので、相談していただければ」と説明した。

共用室再開も使用率伸びず


4月19日から大学は、学内の活動制限レベルの引き上げに伴って再び屋内活動を制限した。3度目の緊急事態宣言が解除された6月21日には、屋内活動を解禁し、西部課外活動棟内の共用室の使用を昨年3月末以降初めて認めた。

西部課外活動棟を巡っては、62団体からなる協議組織「西団連」が、利用再開に向けて昨年6月頃から大学と協議し、感染対策ガイドラインを作成した。9月時点で文面をまとめたが、大学が部屋の予約方法の再考や消防法を念頭に置いた棟内の清掃を求めたほか、年明けからの緊急事態宣言もあり利用再開が見通せない状況が続いた。4月と5月の交渉で詳細を詰め、ガイドライン承認に至った。昨年10月に利用再開した吉田南集会所から遅れること9カ月、大学の認める活動場所一覧に西部課外活動棟が加えられた。引き続き部室や防音室は利用停止となっており、大学はこれらの再開について本紙の取材に「予定していない」と回答している。

1年3カ月ぶりの利用再開となった西部共用室だが、体育館事務室の管理する予約表によると、7月の利用率は約3%にとどまった。2019年には、6月に約62%、試験期間を含む7月でも平均して約35%のコマが埋まっていた。利用再開後も使用しない理由を関係団体にアンケートで尋ねたところ、夜間の使用時間が20時半までに制限されている点に言及する団体が多かった。従来は22時まで使うことができた。当面は、夜間利用の制限や定員減などの感染対策を伴う運用が続く。

また、従来は吉田南4号館が授業後の課外活動で使われていたが、昨春以降は利用を停止しており、再開について大学は「現時点では感染拡大防止の観点から予定していない」と回答している。

▼大学が出す「課外活動の自粛要請の限定的緩和について」の変遷
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学生の反応 − 充実度 学年間に差 新様式に前向きな声も


制約のある生活を強いられるなか、学生はどう受け止め、どう対応しているのか。全国大学生活協同組合連合会が実施した今年7月の大学生向けアンケートや昨年11月の「学生生活実態調査」のほか、文部科学省による今年3月の調査から読み解く。

調査情報
■第56回学生生活実態調査
【実施者】全国大学生活協同組合連合会/【期間】2020年10〜11月(1963年より毎年秋に実施)/【対象】地域・大学の規模などの構成比を考慮して指定した30の国公立・私立大学の学部学生/【回収数】1万1028件

■届けよう!コロナ禍の大学生活アンケート
【実施者】全国大学生活協同組合連合会/【期間】2021年7月5日〜19日/【対象】大学生、大学院生/【回収数】7832件
※匿名性による偏りあり

■新型コロナウイルス感染症の影響による学生等の学生生活に関する調査
【実施者】文部科学省/【期間】2021年3月5日〜27日/【対象】無作為に抽出した学生/【回収数】1744件

オンライン満足57%


オンライン授業については、文科省によると「満足」または「ある程度満足」と答えた学生が約57%で、「あまり満足していない」と「満足していない」を合わせた約21%を大きく上回った。この問いでは学年ごとの回答傾向に大きな差は出ず、一定の学生がオンライン授業の利点を感じていることが伺える。良い点を選択する設問では、「自分のペースで学修できる」、「自分の選んだ場所で受けられる」に回答が集まった。悪い点としては、▽友人と受けられず寂しい▽課題が多い▽質問など相互のやりとりが少ない▽対面より理解しにくいなどが選択された。

2回生と他学年に差


学生生活について、文科省の調査では、約29%の学生が友人関係に悩みを抱えていると回答した。ただし、学年別では1回生(現2回生)の約51%が悩んでいると回答しており、全体より割合が高い。入学直後から休講や全面オンライン授業に直面した影響が見られる。

また、昨年11月の「学生生活実態調査」では、学生生活の充実度を尋ねており、全体で約74%が充実していると回答した。前年より14・6ポイント下がっており、1983年以降の最低値だという。この問いでも1回生(現2回生)は他学年との差が大きく、充実しているという回答は前年比で約30ポイント減となる約63%だった。全国大学生協連が先月に実施した調査では、回答の収集方法が異なるため数値の比較はできないが、学年別で新1回生の充実度が最も高く、2回生からは「昨年よりは充実している」との回答が多く見られたとまとめている。

経済面にも影響


経済面では、「学生生活実態調査」によると、9月までの半年間のアルバイト収入について、「変わらない」が約43%、「減少した」が約43%だった。京大は今年5月27日、経済的に困窮する学生に向け、返済不要の奨学金を創設すると発表した。研究者育成を目的とし、10年間で1200人以上を支援すると表明している。

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他大学 − 緩和の道すじ様々 学内接種にもばらつき


前期授業 6割が全面対面


昨年度の後期授業の開始に先立って文科省が実施した調査では、「全面対面」と回答した大学は約19%だったが、今春の調査では、4月からの授業について約65%の大学が「全面対面」または「ほとんど対面」と答えた。「半々」と「7割対面」を加えると約97%に達した。開講後、感染状況の変化をふまえて再びオンライン中心に戻す大学も多かったものの、一定期間、対面の機会が確保された。

一方、「3割対面」と回答した東京大学は、公式サイトで「学期を通じて自宅でのオンライン受講に終始する学生が生じないよう対応を講じる」と表明したうえで、「各授業形態の良さを生かしながら実施」との方針をとっている。東大生にアンケートをとり、オンライン授業について効果を評価する声と改善の要望が寄せられたことをふまえての判断だという。

今後も感染状況に応じた方針の検討が続くなか、5月には、125の私立大学からなる「日本私立大学団体連合会」が文科省に要望書を提出した。緊急事態宣言などにもとづいて行政から大学に要請が出る際に、地方自治体と文科省の授業に対する見解に齟齬があると指摘。大学側の混乱を避けるべく統一した指示を出すよう訴えた。併せて、感染対策のための公的支援を拡充するよう求めた。

課外活動 対面要件に差


課外活動では、書類の提出にもとづく事実上の許可制をとる点は各大学で概ね共通しているが、感染状況をふまえて制限を緩和するなかで、対面活動の実施条件や手続きに違いが出ている。

神戸大学や北海道大学では、学内施設の利用を希望する非公認団体に対し、申請書の提出を求めて活動の許可を出している。埼玉大学や東京大学では、条件付きで学外者の活動参加も認めている。

部室の利用については、停止する大学が多いが、同時入室4人まで(関西大学)など条件付きで認める例もある。京大は、「人数や活動内容によって認める場合がある」と説明している。

学内接種 遅れる大学も


活動制限の緩和を見据え、大学でのワクチン接種が進められている。6月末時点で288大学が拠点接種を国に申請し、そのうち162大学が順次実施している。

申請用の案内文の中で文科省は、「国内の接種の加速化を図る観点から、対象を拡大していく必要がある」と通知し、各大学の構成員に加えて▽他大学の教職員・学生▽近隣の幼稚園、小・中・高等学校等の職員▽近隣住民のいずれかへの接種拡大に対応するよう求めた。これをふまえ、開始にこぎつけた大学は、構成員と並行して広く接種を進めている。また政府は申請の要件として、最低千人を接種対象とするよう定めており、比較的小規模の大学では、地域住民を含めてこれを満たす見通しを立てた。

一方、厚生労働省が6月25日に「ワクチンの出荷可能な量を超えることが見込まれる」として職域接種の新規受付を停止した。すでに申請していた大学でも、接種日程の後ろ倒しを余儀なくされる例が一定数見られた。

今後の見通しについて萩生田光一・文部科学大臣は8月3日の会見で「後期の授業が始まる頃までには、希望する学生さんには接種できるよう調整したい」と述べた。

なお、留学予定者については、学位取得に必須の渡航であることなどを条件に先行接種を手配し、50大学が受け入れに対応した。

各大学の授業課外活動ワクチン接種の状況は図表の通り。

ワクチン接種


▼府内の学内接種実施大学一覧
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授業


▼授業形態の推移
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※文科省実施の「大学等における後期等の授業の実施状況に関する調査」と「令和3年度前期の大学等における授業の実施方針等について」をもとに作成

課外活動


▼活動許可 対応の比較
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