文化

京大の医学教育の変遷を知る 総合博物館企画展「医師になる!」

2021.08.01

京大総合博物館は7月21日から、企画展「医師になる!—京都大学の医学教育—」を開催している。明治から昭和初期にかけて使われた医学教材や、現在の医学教育の様子が展示され、京大医学部医学科の教育を紹介している。

企画展は合計四部から成る。ゾーン1では、京都帝国大学に医学部が設置された1899年当時の医学部構内の再現をCGで見ることができるほか、初代の医学部教授8人をパネルで紹介し、京都帝大医学部開設の様子を知ることができる。

ゾーン2では、明治から昭和初期にかけての京大の医学教育を紹介する。医学部病理学教室の初代教授であった藤浪鑑氏は、ウイルスによる発がんの発見や日本住血吸虫の研究で知られる。藤浪氏が実際に使ったドイツ製顕微鏡やニワトリの肉腫標本、日本住血吸虫病の感染実験の様子が分かる掛図が並ぶ。掛図を見ると、向かって左側のウシは口元にマスクのようなものをしているのに対し、右側のウシは四肢に防水処置が施されている。感染実験では、左側のウシは日本住血吸虫病に感染し、右側のウシは感染しなかったことから、病気の感染経路が経口感染ではなく、住血吸虫が足の皮膚を食い破ることによる経皮感染であると分かったとされる。この掛図は、当時の医学生の教育に使用されていたという。

ゾーン3では、現在の京大の医学教育を紹介する。診療現場で必要となる技能を身につけるための人体を模したシミュレーターが展示されているほか、医学部4回生が臨床実習を行う様子が動画で流れている。京大の医学教育では、既存の医学を学び現場で働く臨床医だけでなく、新しい知見を生み出す医学研究者の育成を掲げており、学生の研究マインドを育てる医学部のカリキュラムも紹介している。ゾーン4には、医学部卒業生が学生時代を振り返り、京大の医学教育の印象を述べたパネル展示がある。

本企画展の実行委員である森下真理子氏は、「過去と現在の京大の医学教育において、引き継がれている点や刷新された点を見てほしい」と話している。

企画展は10月10日まで開催する。開館時間は三部制を取っており、入館には事前予約が必要だ。月曜日と火曜日は休館であり、入館料は一般400円、高校・大学生300円、小中学生200円、京大の学生は無料。(凜)

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【ウシを使った感染実験の様子が分かる教育掛図】

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