湯川秀樹を築きあげた本たち 湯川秀樹と読書―ノーベル賞物理学者の原点―(2021.08.01)

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京大北部構内にある基礎物理学研究所の湯川記念館資料室で、7月19日から「湯川秀樹と読書—ノーベル賞物理学者の原点—」の常設展示が始まった。この展示は主に湯川の自伝である『旅人』の内容に基づいている。京都帝国大学の物理学者であり、1949年に日本人として初めてノーベル賞を受賞した湯川秀樹がどのような本に出会い、どのように影響を受けたかを、彼の言葉を通じて解説している。

「私は子供ながらに、何故か孤独と親しんで行ったようだ」と湯川は述べる。湯川がすがるのは専ら本であり、幼い頃から読書家だった。彼をよく知る小学校時代の同級生は、その読書家ぶりから「文学の方面に進まれるのではないかと、思っておりました」と語ったという。

そんな彼が物語の世界から一歩飛び出して開けた世界に出たのは、祖父に教えられながら漢文の素読を始めた5、6歳の頃であった。

「その日から私は子供らしい夢の世界をすてて、むずかしい漢字のならんだ古色蒼然たる書物の中に残っている、二千数百年前の古典の世界へ入ってゆくことになった」と彼は述べる。

彼の物理学人生を方向づけたのは、孔子や孟子の漢籍よりむしろ、老子や荘子の思想だった。老荘思想は、万物の根源を想定する。それは突き詰めれば宿命論に他ならず、この点で自然の摂理に全てが帰着する自然科学に通ずる。そうして湯川は自然科学に、とりわけ基礎的な部分を扱う物理学に進むことになった。

この展示では、湯川に影響を与えた書籍のほかに、湯川が日本の内外を問わず研究の合間に詠んだ和歌も紹介している。多忙で趣味に興じるのもままならなかった彼ができる息抜きは、短歌を作ることくらいであった。「短歌には、自然的環境からの制約を顧慮する必要がない」と述べているように、俳句と違って、季語を使わなければならないという制約のない短歌は、湯川にとって都合が良かった。

このように、湯川秀樹という物理学者を築きあげたのは古今東西の書物たちであった。彼の書斎には芥川龍之介や夏目漱石、紫式部、コペルニクス……といった様々な本が並べられており、この展示ではそれを実際に見ることが出来る。観覧料は無料。新型コロナウイルス感染拡大防止のために現在は入場が制限されており、予約が必要である。予約は公式サイトから受け付けている。(滝)

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【新たに作られた常設展示】

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