〈映画評〉命を削って、映画を撮る 『映画大好きポンポさん』(2021.07.16)

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杉谷庄吾【人間プラモ】作のコミックスをアニメ映画化した本作は、7月2日より出町座で公開中だ。もとは2015年に深夜アニメ用に企画したものの不採用となったタイトルで、杉谷が個人的にマンガに仕立て、インターネットで無料公開したという。当作品は大きな反響を呼び、「マンガ大賞2018」で10位、「このマンガがすごい! 2018 オトコ編」で17位にランクインしている。

舞台は映画の聖地「ニャリウッド」。敏腕映画プロデューサーのジョエル・ダヴィドヴィッチ・ポンポネット、通称ポンポさんのもとで製作アシスタントを務めるジーンは、その才能を見出され、新作映画『MEISTER』の監督に抜擢される。大物俳優のマーティンと、新人女優のナタリーがキャストに加わり、「命がけ」の映画製作が始まる。

奇抜なタイトルとポップなキャラクターデザインを見ると、「命がけ」という言葉は不釣り合いに思えるかもしれない。だが本作のキャッチコピーのひとつは、「映画を撮るか、死ぬか、どっちかしかないんだ」である。ジーンの映画に対する姿勢を見れば、この言葉にも納得できるはずだ。

ジーンは学生時代、周囲に溶け込むことができず、映画だけを支えに生きてきた映画通だ。自分には映画しかない、この追い詰められた創作者としての思いが、彼を映画作りへと駆り立てる。自分の映画を生み出したいという彼の叫びは、『MEISTER』の主人公、失意のオーケストラ指揮者の音楽への叫びとして、世界へと伝えられることになる。

こうした理想の追求に現実の重みを突きつけ、本作のストーリーに深みを与えるのがポンポさんである。伝説的な映画プロデューサーの孫、生まれつきの映画製作の才能、彼女の背景が語られるのを聞けば、周囲を振り回すありがちな「天才」キャラクターだという印象を持つだろう。だが彼女の映画作りに対する考え方は、高みを追求しながらも現実的だ。ジーンが追加撮影をしたいと申し出た際の彼女の言葉は重い。「映画はひとりでは作れない。それがどれだけ大変なことか、わかってる?」多忙なスケジュールで動く俳優と撮影スタッフ、売り上げに期待をかけるスポンサーの存在を、彼女は決して忘れない。声優・小原好美の演技によって、幼い風貌ながらも現実を見つめるポンポさんのギャップが、鮮烈に引き立てられている。

映画製作の裏側と、それにかける製作者の熱い思いを描いた本作は、「映画を語る映画」として大きな説得力を持っている。本作を味わった後、自分が今まで観てきた映画を思い返してみてほしい。当たり前にあると思っていた作品は全て、作り手の身を削る努力によって生み出された、奇跡的な存在だと気づくはずだ。そうすればきっと、もっと映画が好きになる。(凡)

製作年:2021年
上映時間:90分
製作国:日本
監督:平尾隆之

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