企画

コロナ禍ならではの旅 ドライブ紀行−奈良編−

2021.04.01

運転免許を取得したらドライブに行こう。その参考になればと願い、京大新聞では毎年、編集員が車で出かけて紀行文を掲載している。今年は感染症の影響で実施が危ぶまれたが、行き先に屋外や感染対策をとっている屋内施設を選び、奈良への小旅行が実現した。異例の情勢下でのドライブ。以下では、参加した編集員が道中の様子を綴る。
なお、大学の出す課外活動の自粛要請では、活動は原則1日3時間までと定めているが、個別の活動内容をふまえて大学が延長を認める場合があり、今回のドライブも届け出て承認を得て実施した。(編集部)

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運転で場慣ら

今回のドライブ紀行は、検温と自己紹介から始まった。京大新聞は長らくオンラインでの作業を強いられているので、新参編集員の兎にとって、他の編集員らとの初顔合わせだったのだ。そんな緊張はよそに、ジャンケンで私が運転の先陣を切ることに決まった。ぽかぽかと長閑な春日和。車はさながら温室で、感染症対策として開けた車窓からは心地よい風が吹き込んでいる。一行は京大を午前10時頃に出発し、東大路を下った。

車内の会話は、京都は路駐や自転車が多くて運転しづらいことから始まった。これはイギリス人が天気の話をするくらい、京都人には差し障りない世間話だ。気心知れたとは言いがたい編集員たちである。20分ほど走行したのち、鴨川西ICから高速道路に入った。そういえば助手席の村が、ずっとナビや通行料金などの支払いをしてくれている。名もなき事務作業を、気づいたら淡々と済ませている先輩である。そういえばお土産屋でも、編集部用にきちんと購入していた。(兎)

独特なライトに照らされて ①金魚ミュージアム

出発から1時間ほど経過して木津ICを降りる。奈良市内へ入ると道も広く緑も多く、街並みに余裕のようなものが感じられる。心なしか空も広い。さて、一つ目の目的地は「金魚ミュージアム」。ショッピングモール「ミ・ナーラ」内のアート作品展示場だ。苦手な駐車も無事切り抜けて、胸を撫で下ろしながら会場へ向かう。そこには、写真家やアクアリウムデザイナー、フラワーアーティストといった芸術家らが、金魚をモチーフに、写真映えする美しい空間を作り上げていた。ミラーボールが回るディスコ風の部屋から、日本庭園の様相を呈する大型水槽まで、雰囲気の異なる展示を楽しめる。

ここで取材用カメラを手にしていたのは田だった。撮りすぎたと呟きながらも、作品に近づき一心にファインダーを覗き込んでいる。無邪気で愛されるべき後輩である。また、車内に引き続き穂が気さくに話しかけてくれて会話が弾んだ。たくさん質問するのに不快になるような踏み込み方でないし、悪口や愚痴などの話題には触れない。人当たり抜群である。兎は緊張しながらおずおずと走り出したが、奈良についた頃にはすっかり楽しくなっていた。(兎)

気が気でならない山道 ②奈良奥山ドライブウェイ

運転を交代し、ドライブらしいところへ。目指したのは奈良市北東の「奈良奥山ドライブウェイ」だ。山頂で鹿に会えるとのことで楽しみにしていたが、上る前のなんでもない道端に数匹いて、目的を一つ果たした。

奈良に来た実感が湧いたところでドライブウェイの入口をくぐると、山岳教習を思い出すぐねぐね道が待っていた。思わず身構えた。こういうとき後続車がいるとしんどいが、幸い前にも後ろにも車はなく、対向車が時折来る程度だったため、のんびり走った。10分ほどで駐車場へ着いた。さらに奥へ進むこともできるが、ここで車を停めた。(村)

ここなら全て見渡せる ③若草山

山の麓にはちらほら桜の花が見られたが、のぼってくると、まだ少し寒々しい感じの残る春先の山景色だった。駐車場では、駐車スペースのど真ん中に居座るお茶目な鹿が観光客を出迎えている。駐車場からそう歩かず展望台に到着した。ここにもたくさんの鹿がいて、観光客の撮影にカメラ目線をサービスしている。天気に恵まれたこともあり、展望台からは奈良の街並みが一望できた。美景と鹿を1枚の写真に収めることができるので、自動車で奈良に行く際には是非おすすめしたいスポットだ。急な山肌をなんなく下っていく鹿たちは、街中でみせる暢気そうな印象とは異なった顔を見せていた。自分たちがどこにいるのか不明だが、ともかく、これ以上のぼっても景色は変わらなそうだと判断し、下山することになった。(田)

ったことを思い出して

一通り山頂の景色を堪能したのち、下山する。帰りは穂が運転した。登っているときに想定はしていたが、山道はグネグネしている上、傾斜も鋭い。教習所ではエンジンブレーキを使用してフットブレーキは極力使わないようにする、と教わったので、エンジンブレーキをDからLに変えようとするが、社用車にはLがない。あるのはD+とD−だけである。どちらに変えるのか悩んで注意散漫な運転をするより、フットブレーキのみを使い注意深く運転しようと思い運転した。下山後、東大寺を見るべく近くの駐車場に駐車する。路地の奥にある駐車場なのだが、縦に広いが横幅が車2台分しかなく、突っ込んで入れるしかないのに、旋回するスペースがない。なんとか駐車する事が出来たが、タイヤがパーキングメーターと連動している機械の上を通ってしまった。壊れてはなかったようだし、問題はないとギリギリいえるだろう。(穂)

せっかく来たなら大仏も ④東大寺

境内には梅の花が咲いていた。私は4年前の春に修学旅行で東大寺を訪れたのだが、境内の様子は当時とずいぶん変わっていた。大仏殿の正面に、線香をあげる場所があったように思うのだが、感染症流行の影響なのか、見当たらなかった。平時には境内を埋め尽くす修学旅行の集団も、ほとんどいない。鹿せんべいの屋台も姿を消していて、鹿たちは心なしか元気がなさそうに見えた。大仏殿の中も人はまばらで、ゆっくり見て回ることができたが、大仏の手の大きさについてわあわあ言い合っているうちに、結局大仏に手を合わせずに建物を出た。大仏殿のある柱には、大仏の鼻の穴と同じ大きさの穴が空いており、そこをくぐると無病息災などの御利益があるという。残念ながら感染症対策のため穴は塞がれていて通れなかった。(田)

無難なラスト

東大寺を過ぎると、ちょうどいい時間になったので、京都に向けて帰る。最後に、五重塔だけは見ようということになって、五重塔を見られる帰り道を選択した。近くまで寄ったとき、他の編集員はしっかり見ることが出来たようだが、自分は運転していたので、見ることはかなわなかった。そのまま高速に乗り、帰路につく、眠気を飛ばすために音楽を流したが、いつの間にかBluetoothが切断されていた。この車、私用で使うときもよく切れるのだが、どうもポンコツらしい。再接続も面倒なのでそのまま帰宅する。みんな疲れているのか帰りの車内は静かだった。特に危なげなく、18時前には京都に到着した。これにて、今年のドライブ紀行は全行程終了した。(穂)

ドライブしたくなったなら

事故なく帰ることができ、ほっとしている。はじめまして同然の編集員らとも仲良くなれた。安心した胸の内がドライブ紀行に滲み出ているかもしれない。さて、ドライブしたくなった新入生は、まず教習所へ通おう。免許取得後には、先輩の力を借りることを強くお勧めする。車を融通してくれるかもしれないし、運転中にも助言をもらえる。私自身、学生寮のシェアカーと先輩寮生のおかげで、なんとか運転できるようになった。運転の上手下手は慣れと直結している。免許取り立ての同級生より、日常的に運転している先輩を助手席に乗せよう。半年ほど前のこと、初心者同士で無謀にも山道を攻めた結果、事故を起こした同級生がいる。交通事故は、運転者本人に限らず多くの人を傷つける可能性があるし、友人や家族にも心配をかける。新入生の皆さん、どうか教習所では真面目に勉強し、免許取得後も調子に乗らず、地道に経験を積んでほしい。先輩の力を借りながら安全運転を身につけよう。(兎)

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