文化

〈映画評〉騙し騙され愛し愛され 『フォーカス』

2021.04.16

詐欺師をテーマにした作品と言えば、フジテレビの月9で放送されたドラマ「コンフィデンスマンJP」やネットフリックスなどで配信されたアニメ「グレートプリテンダー」が記憶に新しい。こうした作品の醍醐味は、何といっても視聴者をも欺く手口の鮮やかさにあるが、そんな騙し合いの中にほんの少し、甘酸っぱい恋愛模様を織り込んだのがこの「フォーカス」という作品である。

ウィル・スミス演じる天才詐欺師ニッキーのもとに、マーゴット・ロビー演じる女詐欺師ジェスが弟子入りするところから、物語は始まる。冒頭、視点を巧みに操って、ニッキーがジェスの所持品をひょいひょいと盗み出すシーンでは、視聴者の注意も上手くそらすような演出が施されていて面白い。その後二人は相思相愛の関係になるが、ニッキーは仕事に支障が出ると考えジェスの前から姿を消してしまう。だが数年後、ニッキーは詐欺計画を進めていたモーターレース会場で、偶然にもジェスに再会する。彼女はニッキーをも手玉にとる見事な詐欺師に成長していた。

二人が再会する中盤以降、騙し合いはより複雑なものへと変化していく。ジェスの持ち物を盗み出す可愛らしい騙し合いから始まった物語は、いつの間にか、登場人物の性格やストーリーそのものを二転三転させる、壮大な騙し合いを展開していくのだ。強気と見せかけてやっぱりニッキーのことを忘れられないジェス。ジェスを一度は捨てたことをずっと後悔して、弱気な一面を見せるニッキー。否、もちろんこれらは二人の演技でしかない。偽・恋愛模様に翻弄されるばかりで、好きなのか、好きじゃないのか、ニッキーとジェスの本心はなかなか見えてこないのがじれったい。あっちへこっちへと視点を動かされるハイテンポな騙し合いと、予測不能な恋愛の行方に、心躍らされること間違いなしの作品だ。(藤)



作品情報
制作年:2015年
制作国:アメリカ
上映時間:105分
監督:グレン・フィカーラ、ジョン・レクア

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