【検証 京大のコロナ対応】予期せぬ難局に手探り(2020.11.16)

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新型コロナウイルス感染症の拡大により、人々の生活は様変わりし、大学の役割・あり方も問われている。オンライン授業の拡大、対面授業の段階的再開、学生の生活支援、課外活動の自粛要請——。ここでは、様々な切り口から、主に京大の約半年間の対応を振り返る。本企画が、緊急時の対応を記録するとともに、先の読めない今後に向け、望ましいあり方を考える足掛かりとなることを願う。(編集部)

※紙面に表や写真、資料を掲載しています

論点① 対策体制の構築 徐々に危機感広まる

危機対策本部の設置

昨年末以降、中国から広まったとされる新型コロナウイルス感染症は、1月28日に日本政府によって指定感染症に定められ、国内でも徐々に危機感が高まった。

京大では、1月15日から諸部局が情報収集と対応の検討を開始した。31日には対応方針の第1版を発表し、学生の中国への渡航を原則不可と定めた。2月以降、世界的な感染拡大に伴って方針を更新し、3月27日付の第7版では全世界への渡航自粛を求めた。

重篤な感染症の発生に際しての対策体制については、学内の危機管理規程に記載があり、構成員への影響の度合いに応じてレベル0〜4の区分で対策本部の構成を定めている。これに基づき、1月31日に潮見佳男副学長(当時)を本部長とする危機対策本部が設置された。以降、メールでの審議や各方面への調査を経て、3月3日に第1回対策会議が開かれた。対応基準をレベル4に引き上げて以降は、総長を本部長とする体制に切り替えている。

各種イベントの中止

危機対策本部では、各部局が学生、国際、施設などの担当班に分かれて課題を抽出した。3月以降、対策会議が本格化し、対応の検討が進められた。(それぞれの課題への対応は「論点②」以降を参照)

2月下旬に政府がイベント実施の見直しを呼びかけたことを受け、対策本部は3月から4月初旬の学内行事を一覧化し、それぞれの開催規模と感染リスクを格付けし、実施の可否を判断した。検討の結果、多くの行事で中止または延期、形式の変更に至り、影響は各所に広がった。

一方、行事によっては、対策をとって対面で実施したものもあった。卒業式予定日には、式典が中止となったものの学位の授与は行われ、受け取りに訪れた多くの卒業生が時計台付近に集まった。結果的には、春先に京大関連での大規模な感染者の発生は見られなかった。

学内の活動制限

また、学内の活動制限として、職員の勤務や授業などについてレベル1〜5で対応を定めた。4月17日には、京都府からのいわゆる「休業要請」を踏まえてレベル3に引き上げた。学内会議のオンライン化や職員の在宅勤務などを推進し、新規の研究活動を禁止したほか、授業や課外活動に後述の制限を設けた。以降、京大は「政府や京都府の方針、感染状況を総合的に判断」し、制限を更新した。

論点② 授業形態の模索 教育の質と感染予防

「例年通り」一転、休講へ

対策本部は授業の実施形態を課題に挙げて検討を重ねた。3月23日の本部会議では授業実施にあたっての注意事項をまとめ、26日、予定通り4月8日から開講すると発表した。しかし、28日以降に京都産業大学の学生や関係者の間で相次いで感染が確認されたことなどを受け、「緊迫した状況が生じている」と判断。方針を転換し、4月1日、原則すべての授業を5月6日まで休講すると発表し、インターネット環境の整備を学生に呼びかけた。

前期はオンライン中心

5月7日、原則オンラインで実施できる科目のみとの方針のもと、本格的に授業が開始された。実験や演習の実施時期を夏季休暇や後期にずらすなど、各学部・研究科が対応をとった。

感染状況の先行きが読めない中、全学共通科目では、前期すべての授業で対面形式をとらないことを4月16日時点で確定して発表した。「学期中に変更すると混乱が生じる」と判断したという。

一方、専門科目では6月15日、危機対策本部が授業実施マニュアルを策定し、一部科目に限って6月22日から段階的に対面形式を認めた。対面授業の再開を巡っては、京都府が5月27日に大学向けガイドラインを発表しており、これに沿って各大学が順次対応した(次頁「論点4」参照)。

休講期間分の補填に関しては、3月24日付で文部科学省が各大学に通知を発表し、授業の実施週数について、「弾力的に取り扱って差し支えない」との認識を示した。京大でも多くの科目が実施回数を減らし、終了時期は当初の日程通りとしたうえで、課題などで埋め合わせを図った。一部の科目では終了を2週間ほど後ろ倒ししたという。また、前期の集中講義では、マニュアルに沿って対面で実施されるものもあった。

対面解禁に慎重

後期の授業については、8月31日、対面とオンラインを併用すると発表し、対面授業の実施にあたっては前期途中から採用した制限を継続するとの方針を示した。10月6日には、対面の授業の実施要件を緩和し、教室の収容率を50%程度に抑えることなどを満たせば実施可能とした。

しかし、実際に解禁されたのは実験や少人数のゼミなど一部にとどまっており、主に1回生が受ける全学共通科目では、11月2日時点で対面授業の割合が1割に満たない。履修状況によっては、授業で講義室に入ったことがない1回生も一定数いる。

一方、主に学部2回生以上が対象となる専門科目の一部では、対面参加の希望者がおらずオンライン形式を継続する授業があるほか、対面形式に移行した授業でも出席率が低い例もある。これには、資料共有の利便性といったオンライン形式の利点、対面参加に伴う感染リスクや労力、前期の形式への慣れなど、様々な要素が絡んでいる。こうした事情をふまえつつ、教員や他の学生との対話の機会を確保することも課題となる。 

各学生の希望や事情は様々で、授業マニュアルでは対面形式をとるにあたって中継などで遠隔参加も可能とするよう定めている。今後も、感染状況などをふまえ、最適な形態の模索が続く。

論点③ 課外活動の制約 自主性と大学の責任

「授業以上に慎重に」

2月27日、大学は川添信介・学生担当理事(当時)名義で声明を発表し、当分の間、合宿や遠征、試合への参加などの活動の自粛を求めた。この段階では、具体的に活動を制限しておらず、注意喚起にとどめていたが、感染者数が増加しつつあった3月31日、大学は文書を発表し、当面の間、課外活動を全面的に自粛するよう強く要請し、対面での新歓活動についても絶対に控えるよう求めた。また、部室を含め学内施設の課外活動での利用を停止すると発表した。

6月下旬以降、対面での授業が一部で再開されたが、課外活動について、川添理事は「授業以上の慎重さが求められる」(6月25日)とし、引き続き活動を認めない方針を示した。

7月9日、大学は課外活動の自粛要請を限定的に緩和することを発表し、7月10日以降、屋外における活動について、届け出て承認を得た団体に限り実施を認めた。しかし、7月21日、課外活動に参加していた学生の感染が確認され、大学は、再度すべての課外活動を停止させた。7月24日には、同学生と接触のあった学生4名の感染も判明し、集団感染(クラスター)が発生したと発表した。

約1カ月後の8月19日、大学は、同月26日以降の屋外における課外活動の実施を再度条件付きで認めた。9月9日には、学外の屋内施設における活動も緩和の対象となった。10月1日以降は一部の学内施設における屋内活動も可能になっている。

「自粛」の要請

活動の制限が緩和されたものの、依然として大学の発表したマニュアルに沿ったガイドラインを作成し、活動計画を提出して許可を受けて活動する必要があるなど、感染拡大前の体制に戻っているわけではない。大学のマニュアルでは、下宿等における友人同士のアルコールを伴う飲食も禁止し、これを遵守する旨の念書の提出を求めるなど、活動以外での生活への影響も生じる。

学内施設の利用制限は解除されつつあるものの、部室については「all or nothingにせざるを得ない」(9月24日)という川添理事の言葉通り、現在に至るまで原則利用停止となっている。また、対面での新歓活動も禁止されており、各団体は、オンラインでしか新歓を行なえない状況となっている。さらに、現状、京大生以外との合同活動は認められていない。体温の記録や活動報告などにより、京大生と同様に対策可能という声もあるが、「(他大学の学生を)京大の基準に巻き込んでいいか難しい(9月24日)」と川添理事は発言しており、複数の大学の学生が参加する団体は、活動を再開できない状況が続いている。また、大学の自粛要請に違反した場合は、活動停止の処分を受ける可能性もあり、「自粛」の要請ではあるが、一定の拘束力を伴った措置となっている。

なお、大学は、活動制限の緩和の対象は全学公認団体のみであり、非公認団体については引き続き自粛を要請するとしている。

論点④ 他大学の状況

感染拡大の影響で、各大学が対面授業の実施を見直し、課外活動の停止を通知した。緊急事態宣言の解除以降、各種制限の緩和を巡って、大学によって対応が分かれている。また、学生の生活に大きな制約が生じる中、所属する全学生が影響を受ける面への補填と、著しく経済状況が悪化している学生への重点的な支援がともに急務となり、複数の大学が独自の給付金を創設した。

府内の大学の授業状況

京都府内において、6月中旬時点で対面授業を開始していた大学は、京都教育大など少数に留まっていた。しかし、6月下旬には大谷大が、演習の教室での授業を再開したほか、夏休み前まではオンライン形式のみを採用していた大学も、秋以降は併用する形で、対面授業を再開している。京都府立大は11月より、対面とオンラインどちらの方式で受講するか、学生が自由に選択できるよう対応する。また立命館大は、開講される科目の約半数において、一部の授業回が対面で行われるという。

課外活動の再開

課外活動の再開に際してはおおむね共通した対応が行われ、再開を希望する団体は、感染防止対策のマニュアルや活動計画書の提出を求められる。しかしその時期には違いがあり、同志社大は8月中旬、京都工芸繊維大は9月上旬、京都産業大は10月上旬に再開を認めた。

府外の大学の対応

府外の大学も、対面授業を再開し始めている。北海道大では、夏季休暇終了後の2週間をすべてオンラインで実施し、10月12日より一部の科目で対面授業を始めた。夏まではオンライン授業を主体としていた大阪大も、秋からは全ての学年で対面授業の実施が可能となった。また、東北大は7月10日より、4段階に分けて課外活動の制限緩和を実施。11月2日から4段階目の緩和措置をとり、人数制限を設けながら、団体での活動が認められた。九州大は、6月25日から個人での練習を許可するなど、課外活動の再開に踏み切っていたものの、学生の感染を受け8月5日に一切の活動を停止した。その後10月19日より再び課外活動が許可され、条件付きで学外者も含む活動も認められた。

経済支援策の実施

さらに、学生に対して独自の経済支援を行う大学もある。同志社大は独自の奨学金に特別枠を設置したほか、立命館大や京都産業大は学生に一律の給付金を設定した。北海道大は複数の条件を満たす学生を対象に、後期の授業料減免を追加で受け付けるという。また、信州大は11月4日、収入が減少した学生に3万円を給付すると発表している。東京大や広島大、九州大もすでに同様の趣旨で給付金を実施している。主な大学の対応は左表の通り。

論点⑤ 学生生活の維持 問われる大学のあり方

学生への経済支援

オンライン授業を実施するにあたって、学生のインターネット環境が課題となった。対策本部が状況を調査したところ、一定数の学生がオンライン講義を視聴できないことが明らかとなった。これをふまえ、モバイルルータを確保して申請を受け付け、1500人強に無償で貸与した。

経済状況が悪化した学生への支援も課題となっている。5月中旬に政府が臨時の給付金を創設したほか、京大は独自に給付を実施した。

京大独自の給付金では、感染拡大の影響により生計維持者の収入が激減した者、あるいは多額の仕送りを受けておらずアルバイト収入が激減した者に12万円を給付した。なお、聴講生などのいわゆる「非正規生」は対象外となった。

国からの給付金としては、アルバイト収入で学費を賄っている学生を対象に最大20万円が支給された。原則として自宅外で生活する学生を対象としているため、今般の状況を受けて下宿から自宅通いに切り替えた学生などが対象外となった。また、文科省は、留学生に対してのみ出席率や成績などの基準を設けた。しかし、京大は、留学生も成績や出席率にかかわらず申請を受け付けた。京大独自の給付金と同様に、留学生・日本人問わず「非正規生」は対象外となった。

このほか京大は、授業料の納付期限を延期し、減免枠を拡大した。一方で、一部の学生からは授業料の減額や一律の給付金を求める声があがった。

留学生への対応

出入国者に関する対応は、本部設置当初から中心課題の一つとなった。入国者には2週間の自宅待機を求めることとし、経過措置中で授業に出席できない学生に対しては、補講やレポートで対応した。また、交換留学については、各部局長に対し、期間中に帰国した学生の成績評価の機会を確保するよう求めるなど、留学生の学修に配慮した。留学の取りやめや時期の変更も見られた。

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