〈書評〉読み物であり参考書でもある 『転生したらスプレッドシートだった件』(2020.12.01)

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読んでまず連想したのは、アニメのキャラが教えてくれる勉強参考書だ。というのも、この本の内容の半分は、関数処理についての解説と、関数式の書き方、実際の使用例などが書かれているからだ。とはいえ、例題などはなく、ストーリーの会話として教えてくれるため、ガッツリ参考書というわけでもない。例えるなら、学研プラスが出版している、「○○のひみつ」シリーズぐらいの塩梅で、一章につき、一関数が解説されている。章の終わりには、技術解説というコラムページが存在し、実際のパソコンの図付きで、使い方をわかりやすく紹介している。一冊読み終わると、関数を使えるようになる、というわけではないが、この場面で使ったら効率が良くなる関数があったな、と思うぐらいはできるのが、本書の最大の特徴と言えるだろう。

Web広告会社の社畜だったタカハシは、死後、スプレッドシートの中の世界に転生する。そこは、現実世界と繋がっていて、現実世界の誰かがスプレッドシートで関数を使った時、その関数はスプレッドシートの世界で形を得てモンスターになる世界だった。スプレッドシートの世界では、worker(ワーカー)と呼ばれる職業の人々が、モンスターを倒せたとき、現実世界では関数を処理できたことになると言う。それ故にworkerは関数に強い人間しかなれず、転生者は必ずworkerとして働くことになる。タカハシは、指南役であるサイトウ、先輩イノウエと共に、関数との戦いに身を投じる。

最初に参考書のようだと例えはしたが、この通り、ストーリーが蔑ろにされていると言うわけではない。スプレッドシートの中で関数と戦うと言う設定は斬新な上に、タカハシとサイトウの会話には、映画の小ネタが散りばめられているし、それ以外にも、関数職人ならではのあるあるが要所要所に入っていて、飽きずに読むことができる。怪我した時に運ばれる病院や、仕事終わりに行く居酒屋が現実世界のものと同じだったり、モンスターを倒しに行くのに車で移動するなど、妙にリアルチックな世界観で話が展開されているのも、読む上で想像しやすく面白いポイントだ。さらに起承転結もしっかりしていて、最終章でスプレッドシートの世界の真実が明かされるのだが、インパクトのあるオチで、思わず感心してしまうこと間違いないだろう。

この本は読み物としても解説書としても良作な、一石二鳥の便利な本であるが、私たちが普段、エクセルやスプレッドシートを使って作業している時、裏側で彼らが頑張っていると想像すると、作業が少し楽しくなる。そんなことが、この本最大の魅力かもしれない。(穂)

書籍情報
著者:ミネムラコーヒー
イラスト:冬空実
出版社:技術評論社
出版年:2020年3月

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