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松沢特別教授ら 懲戒解雇 霊長類研 不正支出巡り

2020.12.01

京大は11月24日、霊長類研究所のチンパンジー飼育施設に関する不正支出を巡って、教職員6人に対する懲戒処分を行ったと発表した。松沢哲郎・高等研究院特別教授、友永雅己・霊長類研究所教授の2教員は、懲戒解雇の処分となった。

京大は、教職員就業規則に規定する懲戒事由に該当する行為が認められたとして、教職員6人に対する処分をした。松沢特別教授の懲戒解雇処分について、松沢特別教授の2億3千万円の不正支出を認定したことに加え、霊長類研の所長を務め、監督者としての責任があったことを理由とした。友永雅己・霊長類研究所教授も懲戒解雇の処分としたほか、平田聡・野生動物研究センター教授と森村成樹・同センター特定准教授は停職処分、2名の事務職員は戒告処分とした。

京大は、「全学をあげて再発防止に取り組むとともに、不適切な行為に対しては厳正に対処する」との声明を発表した。一方、松沢特別教授は自身のホームページで24日、声明を発表し、「一般競争入札の手続きが不適正」とされた不正認定額が、会計検査院が指摘した不正総額の86%を占める9億7千19万円であるが、これは損失額ではなく、チンパンジーの飼育施設は有効に機能していると主張した。また、サル類のケージを作製し納入できる業者は国内で限られており、チンパンジーの飼育施設のように既製品がないものについて、物品購入手続きを規定通りに進めるのは難しいと指摘した。その上で、事業に関わる知識を持ち、なおかつ経理業務に精通した人員を発注する側に整備する必要があったが、それが不十分なまま事業が進行した結果、不適正な会計経理を指摘されたと主張した。

11億円超の不正 会計検査院の調査で判明

会計検査院は11月10日、松沢特別教授ら4教員による研究費の不正支出が、約11億円にのぼると公表した。京大が6月に公表した不正支出額は約5億円であった。

会計検査院は、2011年度から2017年度までのチンパンジー飼育施設に関する契約百件を調査した。調査の結果、京大が6月に公表した約5億円の不正支出の他に、約6億円の不正支出があったという。会計検査院が新たに指摘したのは、▼教員が特定業者にのみ事業予算額を伝えた上でその業者を一般競争に参加させた、▼各業者から個別に取るべき見積書を特定業者に取らせていた、などの27件の不正支出である。不正支出は、総額で11億円2千8百23万円となった。ただし、業者から教員への還流行為は確認できず、教員の私的流用は認められなかった。

会計検査院が新たに指摘した約6億円分を公表していなかったことについて、京大は、本紙の取材に対し、大学の調査においてその存在は「契約手続き上の不適切な行為」として把握していたとした。その上で、当該の約6億円分の不正支出は「京都大学における競争的資金等の適正管理に関する規程」で定められている「競争的資金等の不正使用」に該当しておらず、規程に基づいて該当する約5億円分のみを公表していたと説明した。会計検査院が新たに指摘した不正支出は、「検査院が別の観点で判断したものである」との見解を示した。

霊長類研の不正支出を巡っては、2018年12月に情報提供が寄せられ、調査が開始された。大学の調査の結果、霊長類研が2011年度から2014年度までにチンパンジー飼育施設に関して結んだ契約で、約5億円の不正支出が見つかり、6月に京大が公表・謝罪していた。

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