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アイヌ遺骨 2団体が申し入れ 「今後について話し合いを」

2020.11.01

京大「政府の方針に従う」 話し合いは応じず

京大が保管するアイヌ遺骨に関して、アイヌ民族らが作る「先住民族アイヌの声実現!実行委員会」と「日本人類学会のアイヌ遺骨研究を考える会」は9月15日、保管状況の確認や慰霊、話し合いを求める申し入れ書を、新・旧総長と中務真人・理学研究科教授、岩崎奈緒子・総合博物館教授宛てに提出した。9月末までに回答を求めたが、京大は10月9日付で、「政府の方針に従い対応する」と回答した。

京大の調査に基づいて文科省が公表している資料によれば、京大総合博物館には、アイヌ民族の87体の遺骨やその副葬品が収蔵され
てきた。遺骨や副葬品は、京都帝国大学医学部の清野謙次教授(当時)が、1924年に樺太、1926年に釧路市で墓を掘り返すなどして収集した。清野氏は、集めた遺骨に基づいて人種学研究を行い、『日本原人の研究』(1924年)や「古代人骨の研究に基づく日本人種論」(1949年)といった著書・論文を執筆している。

大学が保管する遺骨を巡っては、政府の方針として、個人が特定される場合や地域から政府の認める形式で申請があった場合には返還を行い、それ以外の遺骨については北海道白老町の国立博物館(ウポポイ)の敷地内に設けられる慰霊施設へ2020年までに集約させることとなっていた。京大は2020年10月の段階で26体の遺骨をウポポイに移送したが、樺太や釧路で収集された遺骨・副葬品は保管を続けている。

今回の申入書で2団体は、京大がいまだにアイヌ民族遺骨の保管を続ける理由を問うとともに、▽アイヌ民族が遺骨の保管状況を直接確認して慰霊すること▽イチャルパ(慰霊)を共同で行うこと▽遺骨の今後の帰趨に関して話し合いを行うことを求めた。

申入書は、9月15日に事務本部棟のロビーで職員が対応する形で受け渡された。京大は「よく検討して答えたい」、「10月14日から新理事に総務部から報告を行い、アイヌ遺骨問題も報告を受けて理事が検討する」と説明して、13日まで回答をしなかった。しかし翌14日に、9日付の回答が送られてきたという。

一連の京大の対応について、2団体は、「先祖との人間としてのつながりを心底から感じながら、盗掘によって断ち切られてきたきずなの回復を求めているのに対して、京大は、臆面もなくアイヌ遺骨を「人骨標本」としてしっかりと保管していると回答している。非人間的だ」と不信感を表明した。今後、内閣府や文科省への追及なども行ない、京大が保管している樺太や釧路から収集された遺骨の返還を実現するように求めていくとともに、「京大の無責任な姿勢を正していく」という。

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